【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.4/加速するデジタル化、その一方で人間的な教えをどう伝えていくかもテーマ/MINX銀座店 菅野久幸さん #2

コロナ禍での働き方は、「時短で高パフォーマンス」がキーワード。そんなwithコロナ時代を生き抜くための、美容室の次なる戦略とは?

後編では、MINX銀座店のトップを務める菅野久幸さんの1日のタイムスケジュールを取材。これまでとの変化や見直し、改善した点、今後の動向などについてお聞きしました。

お話しを伺ったのは…

MINX銀座店 ディレクター・取締役 菅野久幸さん

1978年山形県生まれ。大分美容専門学校通信課卒。MINXには1999年入社。原宿店店長や銀座店代表を歴任した後、取締役に就任。社内の教育・マネジメントも担当する。国内外の美容業界の発展のために尽力し、経営セミナーの講師としても活躍。中国では「菅野経営塾」というブランドを持つほどの人気に。

トップを務める銀座店は、月間売上6000万を超え国内のサロンで最高売上を達成。美容ミシュラン「KAMI CHARISMA2020・21」2年連続受賞サロン。

菅野さんの1日の流れ/平日は5枠で10〜12人。滞在時間で人数をチェックして混み合わないよう調整

——1日のサロンワークの流れを教えてください。

平日は朝11時オープンで、8:30頃には出社しています。9時〜10時半くらいまでは、ほぼ毎日打ち合わせがあり、あとはリモート会議。10時半〜11時は、アシスタントと朝礼、今日のお客様の確認、あとはLINEでいろいろと情報が入ってきたりもするのでそれの対応やメールの返信など。スタッフ人数の調整(自宅待機にする等)は店長に任せていて、何か相談があれば話をしています。

1日のお客様は、平均して10〜12人というところでしょうか。詰め込んで予約を取らないようになりました。以前だったら連続で10人15人と入れていましたけど、今は連続で4、5人入ったら1枠切って、お客様が重ならないように。

お客様もせっかくこんな状況でも来てくださったのに、担当がバタバタしていたら何だかがっかりしますよね。そうならないようにも余裕を持ったスケジュールにしています。

1日だいたい5枠。予約数ではなく、滞在時間で調整するようにしていて、同じ時間帯に5名以上かぶらないように気をつけています。最近ではもう遅い時間からご予約されるお客様も減りましたよね。なので、前半からうまく調整して、後半の最後までお客様が安心して過ごせるようにしています。

今後の展望/オンラインを活用した戦略、教育は必須に。変わりゆくお客様の心理とニーズに合わせたサービスの提供を目指したい

——このコロナ禍で新しく始めたことはありますか?

アシスタントの練習時間が減ってしまって、緊急事態宣言中はモデルさんを呼んでカットするのも中止している状況です。そういった部分を補うために、教育プログラムは動画で見られるようにしています。以前から準備はあったのですが、改めてこのコロナ禍でしっかり作って強化したという感じですね。

シャンプーの仕方からカット、カラーなどMINXの技術マニュアル、注意点がすべて学べる内容。店舗でのレッスンも行っていますが、復習したり自分の苦手な部分を見直したりできるように。動画はアプリを使ってデータ共有しており、スマホやタブレットから見られるようになっています。

なので、電車の中や自宅での自由な時間を使ってみんな活用していますよ。

教育カリキュラムの動画一例。
岡村氏によるカットテクニックや、
マニュアル化された手袋シャンプー、
カラー技術の「ゼロテク」など、
MINXならではの充実した内容に。

昨年夏から、会員制のオンラインサロンもスタートしました。コロナ前は、外部セミナーの依頼がたくさんあり、その中の約6割が海外。僕も2020年こそ1回しか行けませんでしたけど、一昨年は中国に1ヶ月半に1回くらいは行ったりして、年間でも海外にたくさん足を運んでいました。

1回行くと1週間くらいはセミナーを開催して。それが今行けなくなって、海外はゼロの状態。それまでせっかく海外での認知度も上がってきていたのに、全くのゼロになってしまってはもったいない。そういった経緯からオンラインサロンを始めています。

なので今は国内で展開していますが、日本でしっかり準備して、それを全部翻訳して中国や韓国、台湾の美容師さんにも学べる機会を。そういう展開まで見込んでいます。海外は今年の春くらいには始動させたい。

オンラインサロンの講師メンバーは20人くらいいて、元々が外部セミナーを担当している人間。編集作業もうちのスタッフ内で行っています。MINXスタッフなら全てのコンテンツが見られる環境にしており、自分のスキルアップのために見たり、レッスンの時に活用したりも。

オンラインで学べる「MINXオンラインアカデミー」。
技術系はもちろん、菅野さんが教える美容室経営や、
スタッフ教育のコンテンツなども人気。

——店販の動きに変化はあったのでしょうか?

1回目の緊急事態宣言後、2週間ほどお店を休んでいた間に、お客様からの商品の問合せがかなりたくさんありまして。当初オンラインでは販売していなかったんですね。なので、ウェブの予約システムに付いているEC機能(使わず眠っていた)をすぐに契約して、お客様にオンラインで購入いただける形を急遽作りました。1ヶ月限定でしたが、売り上げは全店で600万近くに。

流通は自分たちで行うしかなかったので、1件1件梱包して宛先を書き、それはもう大変でしたが(!)困っているお客様がたくさんいらっしゃる中で、それをフォローできたのはよかったです。

その後6月からは、メーカーさんなどのオフィシャルのECが立ち上がったのでそちらへ移行しました。今そのEC登録が全部で2500名くらいいて、銀座店だけでも1ヶ月に150万円ほどの売り上げがコンスタントにあります。

新しいチャレンジとしては、スキンケアをプッシュしたこと。今まではヘアケア商品メインで、スキンケアというのは正直そこまで動きはなかったんです。ただ、今は自宅でのスキンケア需要が高まっていますよね。

なのでサロンでおすすめしているスキンケアも使ってもらおうよ、と。お客様の意識の変化に対して、僕たちがどれくらいまで挑戦できるんだろうということで、最初は100万円を目標に取り組みました。買っていただくにはやはり仕掛けが必要。まずは、動画を作りました。

スタッフたちがおすすめするアイテムの使っているシーンを見せたり、ポイントをレクチャーする。銀座店は全セット面にタブレットを設置しているので、そこで動画を流してお客様に気軽に見てもらう。お客様は動画を見て、「これ何ですか?」となって話やすくなるし、タブレットの近くにはおすすめのポップを貼ることでさらに購入のきっかけに。動線作りですよね。

この動画を流してから、かなり売り上げにつながっていると思います。

エントランス近くの棚には、ヘアケア商品を始め、
スキンケアやファンデーションなどのアイテムも並ぶ。

サロンがおすすめするスキンケアを、
女性スタッフが実際に使ってみて感想やポイントを伝える動画。
各席のタブレットで流している。

——まだまだ不安な状況が続きそうですが、今後の課題は?

こういった時代の流れで、アシスタントの学ぶ環境が減ってしまうことが懸念されます。今までよりも、教育する時間、練習する時間、コミュニケーションをとる時間さえも短くなっている。環境の質を下げない、時間とカリキュラムの工夫が必要になってくると思います。

技術面などは教える手段がまだあるとしても、マインドが教えられない。そういう時間が取れない。これまでは直接話したり指導したりが普通にできましたけど、デジタル化していくと、そういう中にマインド的な情報は入っていないんですよね。思いが学べなくなる。人間的な部分ですよね。

今は仕方のない状況ではありますが、そこに対しては密度より頻度という考え方で。ご飯を食べながら後輩たちと仕事の話がもうできないので、ちょっとした作業の合間にまめに声をかけるとか、オンタイムで修正していく。「さっきのお客さん●●●と言っていたけど、こういう背景があるよね」とか。

営業時間内で、ちょっとずつコミュニケーションをとっていく。それがどれだけできるか。これからは、日常の教えがとても重要になってくると思います。積み重ねですよね。毎日の習慣として教えていくしかない。

対お客様という視点だと、お客様のニーズの変化にどれだけ敏感に察知していけるか。今はコロナ禍で、状況は常に変わっていますよね。

お客様が口に出さない欲求みたいなものもいろいろあって、しかもそれは日々変化していく。感染症対策についてもそう。そういうことをいかに察知して、きめ細やかに対応し、落とし込んでいくか。そのスピード感が重要なんじゃないかと思います。

お客様との何気ない会話から出てきたワードを大切に。どう捉え、みんなで共有できるかどうか。そのあたりも鍵になってくるのではないでしょうか。

コロナ時代、効率的に働く3つのコツ

1. 加速するデジタル化をうまく取り入れていく

2. 人間的な部分の教育の仕方をアップデートする

3. 時代の流れとお客様の心理の変化を常にキャッチする

有名店だからと言って、決して楽ではない。大人数のスタッフを抱えているからこその苦労や心配も多いのだろう、というのが今回の感想のひとつ。そんな中、サービス面や教育、海外へ向けての展開など、この一年足らずで多くのことに挑戦し、形にしてきた事実に驚いた。

その挑戦というのは、大勢のスタッフ(若手の一人一人まで!)から成り立っていて、これこそがチームワークの強み。そこに惹かれてお客様が足を運ぶ。良い循環。MINXは、長年人気店であるとともに、気概のある若手が働いてみたい美容室としてもさらに注目を集めていくのではないでしょうか。

▽前編はこちら▽
【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.4/街もお客様の心理も変わっていく、そこにどう挑戦していくか/MINX銀座店 菅野久幸さん #1>>

取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:mika

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Salon Data

MINX銀座店(ミンクス ギンザテン)

住所:東京都中央区銀座2-5-4 ファサード銀座2F/7F
TEL:03-5159-3838
菅野さんのInstagram:@minx_kanno

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