芸能界で33年。ヘアメイク岸順子さんが大切にしてきたのは、コミュニケ-ションをとり、女優が気持ちよく仕事ができるヘアメイクをすること

芸能界という競争の激しい世界で、33年間第一線で活躍し続けてきたヘアメイクの岸順子さん。前編では、50歳を超えた頃から少しずつ仕事の状況が変化し、このままではいけないと始めたYouTubeで、登録者数が8万人を越えるという大きな快挙をとげたことをお聞きしました。快進撃の裏には、同世代の女性2人の存在と、関わる人間が嘘をつかないというルールがありました。

後編では、33年間のキャリアを支えてきた、心構えについてお聞きします。見えてきたのは、自分が作りたいメイクを押し通すのではなく、相手の意見を取り入れながら最高のものを作ろうとする姿勢でした。

今回お話を伺ったのは、岸順子さん。

岸順子さん

主に芸能界で一流の女優達の専属ヘアメイクとして活動して33年目。54歳のときに始めたYouTubeチャンネル「ヘアメイク職人化け子の駆け込み寺」が評判となり、チャンネル開設から半年で登録者数8万人を超える。
YouTube:ヘアメイク職人化け子の駆け込み寺
Instagram:@bakeko_kishi

女優とのコミュニケ-ションから生まれる最上級に輝くヘアメイク

インスタグラムに投稿された、岸さん自身のビフォーアフター。
同一人物とは思えない仕上がりに、確かな技術力が見える

————33年間、芸能界のヘアメイクとして活躍できた理由を、ご自身はどのように分析していますか?

活躍できているかどうかは別として、長くやってこれた理由の1つとして、自分がやりたいことを追求するのではなく、見てくれる人のことを必ず意識してきたからかなと思います。芸能界での私の仕事は対女優との仕事なわけですけど、それを見てくれる視聴者が必ずいるわけですよね。ドラマや映画、雑誌などその作品に関わる1人として私が担当する女優の、作品の中での役割を視聴者目線で考えるようにしています。

それはYouTubeでも同じことが言えると思うんです。だから自分がやりたいことだけをやっていてはだめで、見てくれる人が何に困っていて何を求めているのか、必ずそれを意識するようにしています。

————最初からそれはできていましたか?

いえ。20代の頃、段々指名が入るようになった頃は、自分がこうしたい、これが絶対いいんだっていう思いが強かったんです。そこで女優さんから「なんか違う」とか「それじゃないメイクで」って言われると、落ち込んでしまって。今考えると女優さんはただディスカッションをしたかっただけなんだと思いますが、当時は自分の技術を否定された気になって、受け止めることができなくて。この頃が一番、葛藤していた時期でしたね。

————ではどうやって、できるようになったんでしょうか?

当時はまだ若かったし、ふてくされながら(笑)、言われたようにやっていました。でもある日、女優の言う通りにメイクをして、画面に映って芝居をする姿を見たら、「すごく良い!」と思ったんです。役と本人が一体化している感覚があって、衝撃を受けました。あ、そうか。女優はこれを求めていたんだってことに気付いたんです。

この経験から、女優が役として納得できる姿でカメラの前に立つことが作品全体のクオリティを左右するということを感じたんです。一流の女優は自分の役割をはっきりと理解してるんです。

だから女優に指名されるということは、「この子とならイメージを再現するようなコミュニケーションがとれる」という信頼をされることなのだと思ったんです。それからは、女優が求めているイメージを再現するための積極的なディスカッションができるようになったと思います。

ヘアメイクを整えるだけでなく、女優が素の自分を出せる安心感を

ヘアメイクの仕事は、相手の肌に触れながら、
とても近い場所で行う仕事。
安心感を持ってもらえることも大切だと、岸さん

————女優さんにヘアメイクをするうえで、気を付けていることは?

女優が安心して、素の自分を出せる環境を作ることですかね。映画やドラマだと撮影期間も長いから、疲れるしストレスも大きい。どんなに綺麗にヘアメイクしても何か不満があったり、不安な気持ちがあったりすると必ず映った時に影響するんです。だから、楽屋での居心地の良さとか、笑顔でいれるための環境って本当に大事だと思っています。とにかく一番の理解者であり味方であるという立ち位置で仕事に臨んでいます。

居心地の良さって人それぞれ価値観で変わるから、そういう意味ではかなりコミュニケーション能力は鍛えられたと思います。

————なるほど。ヘアメイクとして長く活躍していくには、技術力も必要ですよね。技術を伸ばすためにどのように努力をしてきましたか?

もちろん、必要ですね。私は本当にヘアメイクの探求が好きなので、自分では努力だとは思っていないんですけど、若い頃は何かうまくいかないことがあると、なんでこうなってしまったんだろう? とよく考え、できなければできるようになるまで、根気よく練習していました。その結果うまくいくと、疲れなんて吹き飛ぶくらいすごくうれしくて。だから辛いとは思っていませんでしたが、探求心のままに進んでいったら、いつのまにか周りが認めてくれていたという感じだと思います。

目標は自分本来の美しさが目覚める、大人のレジャーランドを作ること

メイクは人と比べるものではなく、もっと楽しいもの、と岸さん。
40代50代女性にもぜひメイクを楽しんでほしいと考えているそう

————今は、YouTubeだけでなく、オリジナルのファンデーションブラシなども手掛け、ますます活躍の場が広がっていますね。

ファンデーションブラシは、私が気に入って使っていたものが廃盤になってしまって、なかなかいいものがすすめられなくなったので、じゃあ自分で作ってみようかなと。一本一本職人さんが手作りするので、なかなか量産できず、すぐ売り切れてしまうのですが、みなさんが喜んでくださるので、作ってよかったと思っています。

————最後に今後の目標は教えてください。

大人が純粋にもっと楽しめる、大人のレジャーランドを作りたいなと思っています。知り合いにはたくさん美のプロフェッショナルがいますので、そんな人たちを講師陣に招き、メイクだけでなく、食べるもの、着るもの、生活空間、運動などについて学んでいただけたらと考えているんです。そうやって自分が心地よく、豊かさを感じて生活していると、それが自分本来の美しさにつながっていくと思うので。合宿なんかもできたらいいなと。

子どもを育てている方はとくにそうだと思うんですけど、日々の生活が忙しくて、自分が心地よく思うものを選ぶ機会がほとんどないと思うんですね。そうすると、何が自分にとって心地よいのかってことすらも、わからなくなってしまってるんです。だから楽しく学んで、そして遊べる、結果的に美しくなるような場が作れたらいいなと思っています。

ヘアメイクとして長くキャリアを継続させるポイント

岸さんが考える、ヘアメイクとして長くキャリアを継続させるポイントをお聞きすると、以下の3つでした。

1. ヘアメイクとして参加した作品の視聴者を意識する

2. 自分の考えを押し通すのではなく、相手を知る為のコミュニケーションを怠らず相手が自分を好きになれるようなヘアメイクをする

3. ヘアメイクをする相手が、安心して自分の素を出せる居心地の良い環境を作る

そのカラッとした笑顔と、ありのままの自分をさらけ出してくれる姿勢がとっても魅力的な岸さん。メイクを純粋に好きな気持ちや、その可能性を探求していく姿勢が、第一線で活躍するエネルギーなのだと感じられました。ヘアメイクとして活躍し続けたい方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

▽前編はこちら▽
「化け子」ブランディングでYouTube登録者数8万人超え! 仕掛人は3人のアラフィフ女性たち>>

求人数3万件!リジョブで求人を探してみる
この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの美容師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄