失敗を共有することで強くなる! お互いにサポートし合うことも重要なポイント 訪問美容 グリーン美容室 代表 和田寛之さん #2
「ゆくゆくは独立をしたい!」と考えている人に、さまざまな「独立の形」をご紹介している本企画。
前編に続いて、訪問美容師の独立をサポートしている「訪問美容 グリーン美容室」代表の和田寛之さんにお話を伺います。訪問美容に求められていることをご紹介した前編に続いて、後編では訪問美容師に向いている人または向いていない人について、詳しくお話しいただきました。
お話を伺ったのは…
訪問美容グリーン美容室
代表 和田寛之さん
大手サロンに勤務した後、25歳で「グリーン美容室」を譲り受けて起業する。27歳より本格的に訪問美容を始める。現在は12名の美容師・理容師、介護スタッフ2名と業務委託契約を結んでいる。美容師免許のほか介護資格、救命救急資格を持つ。
初期費用がかからないから始めるのは簡単。
ただし続けていくのが難しい!
—–訪問美容師を目指す人は増えていますか?
独立してこの仕事を始めたい…という方は増えています。とは言え、サロンで必要とされるスキルとは全く違いますので、サポートしてくれる人が必要ですね。
美容師は「一匹狼」気質が多いと思います。営業するのは苦手だし、かといってお客様を待っているだけでは仕事は増えません。1人で続けるのは本当に難しい。ネットワークを広げながら、教えたり学んだりしてスキルを身につけないと続けられません。
訪問美容師を目指すのは、独立を考えている個人だけではありません。美容室を経営なさっている方も、訪問美容に興味を持つ方が増えていますね。
—–和田さんの元に相談が寄せられているんですか?
サロンの経営が思わしくないから、訪問美容を始めようか…と考えている経営者から相談を受けることがあります。サロンの施術と訪問美容はまったく違いますから、そう簡単ではありません。それにこの仕事は効率が悪い時もありますし、そうそう利益が出るものではありません(笑)。訪問美容の道を考えるより、もう一度、ご自身のサロンを盛り上げる方法を考えた方がずっといいですよ…とアドバイスするときもあります。
サロンの経営をなさりながら訪問美容も…とお考えなら、定休日を利用して訪問美容を始めることをおすすめします。訪問をする比率が増えるとサロンにいられる日が減りますから。サロンと訪問の比率が変化するときがいちばん大変です。
—–利益はそんなに出ないのですか?
例えば、サロンにアシスタントや他のスタッフがいれば、一度に何人ものお客様をシャンプーしたりカットしたり、カラーリングやパーマもできますよね。でも、僕たち訪問美容師は常にお客様と1対1。何人ものお客様を同時に…ということはできません。それに1日に何人ものお客様のご自宅へお邪魔するときは、お宅からお宅までの移動に時間がかかります。効率よく立ち回ることは、私の課題でもあります(笑)
お客様のことを最優先に考えられることそして志があること。この2つが独立成功のカギ
—–訪問美容師にはどんな人が向いていますか?
お客様のことを最優先で考えられる方です。サロンでは私たち美容師が主導権を持ちますが、訪問美容ではお客様に主導権があります。お客様の様子を見ながら施術を続けるかどうか判断しなければなりません。観察力がとても大事ですね。
—–技術の面で必要なことはありますか?
訪問美容とサロンワークはまったく別物ですが、美容師としての基本的な知識と技術がなければ難しい仕事です。僕たちは勉強会を行っているとは言え、基本カットを教える時間はありません。お客様が寝たままの姿勢でカットする方法や道具の選び方など、基本的な技術と知識がなければ理解できないと思います。
グリーン美容室では、サロンでの技術者経験3年を目安にしています。未経験者、カット練習中の美容師さんには「ますはサロンで3年間、経験を積んできてください」とお願いしています。
—–グリーン美容室では、どんなことを教わりますか?
ここで教えられるのは、「障がいをある方への接遇方法」、「介護用具の知識」、「訪問美容における介護知識」、「訪問美容における疾患の知識」です。ここで教えることはあくまでも知識なので、まだまだ足りません。訪問美容では、取り返しがつかないほど一大事ではないけれどヒヤッとしたり、ハッとすることが多々あります。この「ヒヤリハット」をスタッフ同士で共有して、大きな事故を起こさないようにしています。
—–この仕事は続けるのが難しい…とおっしゃっていましたが、長く続けるコツはありますか?
仲間を作ることですね。助け合えますし、情報の交換もできます。あとは、何があってもあきらめないことですね。訪問美容は志がないと、続けるのは難しいと思います。僕は必ず、「なぜ訪問美容師を目指すのか」を尋ねます。目指す理由がきちんとあれば、挫折しても必ず続けられます。
—–これからの展望を教えてください。
これからますます訪問美容師のニーズが高まるでしょう。大手の美容室も参入しています。そうすると価格破壊が起きてしまうんですよね。価格が下がってしまうと、フリーの訪問美容師たちはやっていけません。ちゃんとした技術力に見合った価格を守ることが僕たちの仕事だと思っています。
訪問美容師になるために必要な3つのポイント
1. 最低でもサロンで3年間の経験を積み、美容師としての知識と技術を習得すること
2. 訪問美容のネットワークを広げて仲間を作ること
3. 訪問美容師をなぜ目指すのか、明確な理由があること
訪問美容師のネットワークを大切にし、27年もの経験で得た貴重な知識や技術を惜しみなく披露する和田さん。その懐の深さと実直さが、介護施設や病院の信頼を勝ち得ているのでしょう。長く訪問美容師を続けるには、この無私な姿勢が必要なのかもしれません。