「もう一度ゼロから美容師をやるなら美髪アドバイザーは名乗らない」寺村優太さんが考えるこれから売れる美容師ブランディングとは

美髪アドバイザーとして驚異的な売上を記録し、商品プロデュースや、VRを使った教育カリキュラム構築など、美容業界に数々のイノベーションを起こしてきた美容師の寺村優太さん。

前編では寺村さんが考える、これから売れる美容師の打ち出し方についてずばり伺いました。寺村さんの口から飛び出したのは「今だったら美髪アドバイザーは名乗らない」という衝撃的な言葉。美容業界の動向とは切っても切れないインスタグラムの歴史をひもときながら教えてくれたのは、流行のあとに生まれる需要をどうすくいあげるかという視点でした。

お話を伺ったのは…
寺村優太さん

美容師。iii(スリー)代表

群馬県出身。山野美容専門学校卒業。

「自分史上最高の美髪に」をキャッチコピーに、ヘアケア専門の美容師として活動。著書「前からも後ろからもキレイがあふれる 美髪のルール(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」は発行部数3万部を突破。2020年「iii(スリー)」を立ち上げ、VR技術を活用した教育プログラムの構築を行い、全国の美容専門学校に続々と導入されている。現在は商品プロデュースやコンサルティングにも力を入れている。

次世代の売れる美容師に必要なのは、「きれいに髪を伸ばせる」打ち出し

常に時代の流れを読み、美容業界の需要をくみとってきたという寺村さん

──美容師向けのコンサルもされていると伺いましたが、これから売れたいと考えている美容師にはどんなブランディングがいいと思われますか?

僕が今イチから美容師として集客するなら美髪アドバイザーは絶対名乗らないです。「一度はショートにしたけど、今度こそきれいに伸ばしたい人」に向けた提案やサロンを打ち出しますね。

──それはなぜですか?

その理由を知るためには、インスタの動向を知る必要があると思うので、これまでの歴史を説明させてください。

まずインスタの一次ブームが起きたのが今から8年ほど前ですが、この頃に高校生だった層がインスタをよく使っているので、この層の趣味嗜好が重要なんです。高校では黒髪しかできない人がほとんどですが、卒業したあとは多くの人が髪を染めます。そんなときにどんな髪色にしようかとインスタを見ると、ちょっと茶色とか、ほんのりした色合いというのはまず高校生からはじかれてしまいます。どれだけ派手でインパクトがあるか、という視点で高校生は髪色やデザインを選んでいるんです。だからデザインカラーやブリーチカラーがバズったわけです。

でもその流行によって、そんなにブリーチがうまくない全国の美容師もブリーチやグラデーションカラーをやるようになり、その結果、髪が傷む人が続出しました。それで次に、ヘアアレンジブームが起きました。色を落ち着かせようとしても、傷んだ毛先というのはなかなか元に戻らない。髪の毛が傷みまくってるから、髪を下せない。だからヘアアレンジでなんとかしようという流れが起きたわけです。インスタでセルフヘアアレンジ動画をアップする美容師さんのフォロワーが、この頃一気に増えましたよね。

──なるほど…。そのように説明していただくと、確かに一本の流れが見えてきますね。

そうなんです。その次にきたのはショートブーム。ヘアアレンジをしていても結局は傷んでいる毛先はなおらないわけで、ばっさり切ろうということになった。じゃあこのあとどんな流れがくるのか?ショートにした人たちにどんな需要が生まれるかを予想するわけです

現在の 流行によって、将来どんな悩み=「需要」が生まれるかを先読みする

美容業界に存在する、潜在的な需要について事細かに説明してくれた寺村さん

──それが「今度こそきれいに髪を伸ばしたい人」、だと。

そうです。ショートというのは維持するのに手間と費用がすごくかかるんです。きれいに保とうとすると、1ヶ月半に1回は美容室に行かないといけない。コストがかかるという点も、所得があがっているなら問題ないのですが、日本人の平均所得は減っています。むしろ年齢を重ねていくほど、子どもができたりして自分の美容にはそんなにお金を使えないという人も増えてくるのが現状です。最初はいいと思ったショートでも、維持をするのが辛いと感じている人も少なくないはず。

そんな人たちに「僕が担当したら今度こそきれいに伸ばせますよ」という打ち出しをするんです。1年半で半年に1回、合計3回切りに来てくれれば、無駄な時間もお金もかからずきれいなロングに戻せますよ、と。

──なるほど!それは刺さりそうですね。

それもいきなり、きれいなロングに戻せますと言うだけでは説得力がないので、自分が担当してロングに戻った人を、カットの度に撮影しておいて、ビフォーアフターを見せながら「1年半、たった3回のカットでここまで戻せましたよ」という打ち出しをするんです。これでお客さまはすごく集まると思います。

売れる美容師に必要なのは、需要に対して供給が足りていない部分の見極め

国際ビューティ&フード大学校でのVRを使った授業の様子。早いスピードでの技術習得が可能になる

──すごいですね…!今の流行から需要を見極めていくということですね。

はい。僕の強みがどこにあるかというと、需要に対して供給ができていないところの見極めができることなんです。だからスタイリストになってから売上があがらなくて困った時期というのは一度もありません。フリーランスになった瞬間にもうお客さまが来すぎちゃって、予約がとれなくなって、3カ月後まで予約がぱんぱんという状態だったので。

──VRを使った教育カリキュラムの開発も、スタートは需要を見極めての開発だったそうですね。

そうです。教育に使う時間がなく教育ができないサロンや、SNSで集客はできても技術力がついていないスタイリストが多い現状を見て、そこに需要があると考えました。

今年度までは各学校で行うVRの授業は選択授業としての展開だったのですが、来年度からは3学園、5校の美容専門学校の生徒1,700人に通常授業として使われることになります。VRを使った授業を活用することで、短時間で国家試験対策の授業ができるようになり、あいた時間でサロンに入ってからしか習得できない技術の練習もできるようになります。そうすればどのサロンに入っても即戦力になれます。美容専門学校の差別化につながるというわけです。
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寺村さん流、売れる美容師の打ち出しを見極める方法

寺村さんが考える、「売れる美容師」の打ち出しを見極める方法を伺うとポイントは以下の3つでした。

1. インスタをメインで利用している層の趣味嗜好を把握

2. 流行に乗った層が今後どんな悩みを抱えるかを見極める

3. 需要に対して供給が不足している部分を見つけ、打ち出す

後編では寺村さんが商品開発から携わり、発売月に3万台が完売、追加生産しても予約でほぼ完売してしまうという、爆発的なヒットを記録したドライヤー制作の裏側について伺います。きっかけは、「お風呂に入るのは面倒くさい」という女性たちの声だったといいます。寺村さんのプロデュース能力がさく裂した制作秘話にご注目ください!

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