顧客ニーズをつかんだドライヤーが売切続出!その驚異的なプロデュース能力とは 美容師・寺村優太さん

VR技術を使った教育カリキュラムの構築や、圧倒的な売上を記録するなど、美容業界に数々の旋風を起こしてきた美容師の寺村優太さん。

前編では寺村さんが考える、これから売れる美容師の打ち出し方についてずばり伺いました。寺村さんの口から飛び出したのは「今だったら美髪アドバイザーは名乗らない」という衝撃的な言葉。美容業界の動向とは切っても切れないインスタグラムの歴史をひもときながら教えてくれたのは、流行のあとに生まれる需要をどうすくいあげるかという視点でした。

後編では寺村さんが商品開発から携わり、発売月に数万台が完売。追加生産しても予約でほぼ完売してしまうという、爆発的なヒットを記録したドライヤー制作の裏側について伺います。きっかけは、「お風呂に入るのは面倒くさい」という女性たちの声だったといいます。寺村さんのプロデュース能力がさく裂した制作秘話にご注目ください!

お話を伺ったのは…
寺村優太さん

美容師。iii(スリー)代表

群馬県出身。山野美容専門学校卒業。

「自分史上最高の美髪に」をキャッチコピーに、ヘアケア専門の美容師として活動。著書「前からも後ろからもキレイがあふれる 美髪のルール(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」は発行部数3万部を突破。2020年「iii(スリー)」を立ち上げ、VR技術を活用した教育プログラムの構築を行い、全国の美容専門学校に続々と導入されている。現在は商品プロデュースやコンサルティングにも力を入れている。

「お風呂に入るのが面倒くさい」の声からドライヤーを開発。空前の大ヒットに!

寺村さんが開発に携わった「 KINUJO Hair Dryer」。その使いやすさ、安全性、どんなライフシーンにも溶け込むデザインが高く評価され、2021年度グッドデザイン賞も受賞した

──開発アドバイスとプロモーション協力したドライヤーが大ヒットしたそうですが、どんな特徴のあるドライヤーなんでしょうか?

美容家電メーカーKINUJOさんと組み開発したのが、大風量なのに軽量化されたドライヤーです。これが爆発的にヒットを記録しまして。発売月に数万台が完売、追加生産しても予約でほぼ完売してしまうという状態です。開発のきっかけになったのは、女性たちの「お風呂に入るのが面倒くさい」という声をいろんなところで聞いたことだったんです。なんでお風呂に入るのが面倒かっていうと、出たあとに髪を乾かさないといけないから。最近のドライヤーは高性能になりつつあるんですけど、その結果重くなってしまい、女性が長時間もつには疲れてしまうんですね。結果、髪が生乾きの状態の人が多いと気付きました。

髪が生乾きだと当然傷みますし、セットが決まらないことも多いので、この悩みを解決する大風量なのに軽量化されたドライヤーの構想を思いつきました。このように行動と思考を見える化して、それを正しい動きにデザインしなおすというのが僕の得意としているところです。

──なるほど。KINUJOさんとはそれが初めてのお仕事だったんですか?

いいえ。KINUJOさんとはPRで携わらせていただいていて。その実績が認められて、次は商品開発から携わってほしいと依頼をうけ、その第一弾がドライヤーだったんです。もともとKINUJOさんとのご縁は企業案件ではなく、僕が家電量販店で見つけて、品質の高さで注目していたからです。ヘアアイロンを使ってSNSに投稿したりお客さまにおすすめしていたら、お礼の連絡をいただいて、それがきっかけでPRのお手伝いをさせていだくようになりました。このように自分の目でその良さを確かめたものでないと、PRはなかなかうまくいかないですね。

ヘアアレンジの上手な美容師に商品を使ってもらうための驚きの施策

2017年に発売された、寺村さんの自著「前からも後ろからもキレイがあふれる 美髪のルール」。髪全般のことではなく、ケアの内容にしぼったことで3万部を超えるヒットを記録

──PRで携わられていたとのことですが、具体的にはどのようなことをされていたのでしょうか?

KINUJOさんとフォロワー数の多い美容師さんたちの間に入って、インフルエンサーマーケティングをサポートしはじめたんです。そこで思いついたのがKINUJOさんのコテやアイロンを使って、美容師さんたちにセルフヘアアレンジ動画を撮影してもらい、編集をしていない状態の動画を買い取るという施策でした。

──セルフヘアアレンジをした動画を買い取る…。それでKINUJOさんのサイトに掲
載するということですか?

買い取らせて頂いた動画は編集してKINUJOさんのホームページやSNSに使用させて頂きました。でもそれだけで終わらせないのが寺村流です。実際には、企業案件で商品をもらってもなかなか使うことができない美容師に、まず使ってもらうにはどうしたらいいのかということを考えた施策なんです。

基本的にインフルエンサーの人たちというのは、企業案件がきたら商品をおすすめしていくと思うんですけど、美容師というのはなかなかそれが難しいんです。美容師に送られてくるものは、ヘアアイロンだったりコテだったり、熱を使うものが多いので、簡単に試してみることができないんですね。自分が試してみればいいんでしょうけど、そういうフォロワーの多い人気美容師ってもうすでにかなり収入が安定しているので、1万か2万もらうために忙しい時間を使って商品を試してみようとは思わない。

なので企業案件がきたとき多くの美容師は「試してみて良ければおすすめする形でもいいですか?」って聞いて商品を受け取るけど、結局は開けられもせずに放置されていることがほとんどです。有名店の美容室の裏には使われていないギフティングの商品が山積みの状態なんですよ。その現状を知っているからこそ、動画を作ってもらってそれを買い取る施策を思いつきました。女性美容師は毎日自分の髪をヘアアレンジをするので、それを動画に撮って送るだけの案件なら引き受けてもらいやすいんです。

インスタ上でコンテストを開催し、さらに認知度アップ!

寺村さんのプロデュース能力や発信力に多くの企業から声がかかるそうだが、手を組むのは自分が本当にいいと思う商品やサービスだけと決めているそう

──ただ美容師さんに使ってもらうだけで、宣伝になるんでしょうか?

動画をお願いしている美容師さんには3スタイル使ってもらうようにお願いしていて、最低でも3回商品を使ってもらえるわけで、これがみそなんです。商品としては自信があるので、3回の間に必ず「あ、この商品いいな」と思ってもらえるだろうと読みました。実際、気に入ってくれた美容師さんがサロンで使っているコテをKINUJOさんのものに変えたり、自分のヘアアレンジ動画で商品を使ってくれたりしたんです。そうやって有名な美容師さんが使い始めれば、その美容師をベンチマークしている全国の美容師さんにも、KINUJOさんが徐々に広がっていくというわけです。

──るほど。そうすると一般の方にも広がっていくのですか?

ヘアアイロンのときはもうひとつ施策を走らせていて、「巻き髪オーディション」というのをインスタ上で開催したんです。巻き髪が得意な有名美容師6名に審査員になってもらい、日本全国の美容師さんに巻き髪の写真をハッシュタグとともにインスタに投稿してもらいました。これが1000件ほど投稿がありまして。一般の方がKINUJOさんの商品が気になったときにもインスタを検索すると、一気にたくさんの投稿と、かわいいスタイルが出てくるんですよね。美容師さんが使ってるんだ、いい商品なんだと伝わり、購買意欲もかきたてられるはずです。美容師向けのPRと、インスタの施策を2つ同時にやったことによって、こちらもすごく売れましたね。

──すごいですね!今後も、プロデュース業に力を入れていくんでしょうか。

そうですね。今は自分の認知度をアップしていくより、プロデューサーとしてどれくらい成果を残せるかという部分には重きをおいて挑戦しています。今後も商品開発やプロデュースで、いい商品を広げていきたいですね。
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ヒットを生み出した3つの施策

寺村さんに過去に行ってきた、ヒットを生み出す施策について伺うと、以下の3つでした。

1. シャンプー後に髪を乾かすのが面倒な女性たちに、大風量で軽量化されたドライヤーを開発した

2. 企業案件を受けられない美容師に、動画の買い取りを提案し、商品を使ってもらうことに成功した

3. インスタグラムでコンテストを行い、商品の認知度をアップさせた

何を聞いても説得力のある答えを返してくれた寺村さん。圧倒的な知識量と行動力、さらに広い視野を持って、美容業界を切り開いていく姿が印象的でした。美容師としてもっと活躍したい人、商品開発に携わってみたい人は参考にしてみてはいかがでしょうか。

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