高齢者に美容を広めることで生きる活力を与える、美容×介護という新しい仕事の魅力 ケアビューティスト・山縣りささん

人生100年時代といわれる現代で、需要が高まっている介護美容という職業をご存知ですか?高齢者に向けたネイルやエステ、メイクを専門とするケアビューティストのことで、主に介護施設等で活躍をされています。ネイリストとしての経験を持つ山縣りささんも副業として介護美容の仕事をするひとり。平日は企業で栄養士として働きながら副業として介護美容の仕事を行なっています。

前編では介護美容とはどのようなお仕事なのか、またその道に進むことになったきっかけ、仕事を獲得するための方法についてお話を伺います。美容と介護を掛け合わせた新しい仕事は、たくさんの笑顔に出会える魅力的なものなんだそうです。

今回お話を伺ったのは…

山縣りささん

ケアビューティスト
短大時代に栄養士の資格を取得。さらにその後4年制の大学に編入し、食事やファッションなどのマーケティングを学ぶ。大学卒業後は大手ネイルサロンに就職するが、ネイリストとしての道は歩まずに研修期間中に退職。セレクトショップでの勤務や飲食業、沖縄でのマリンスタッフなどさまざまな経験を積んだ後に川崎にある福祉事業の会社に就職。保育園の専属栄養士として勤務する。2021年4月からは仕事の合間に介護美容のスクールに通い、副業として介護施設で高齢者の美容を担当。その他イベントへの参加など積極的に活動を行なっている。

Instagram:lisa_carebeauty

美容を通じて高齢者に元気を与えるのがケアビューティストの仕事

山縣さんが使用するネイル道具。お湯でオフできて匂いがしない爪に優しい商材を使用している。

──はじめに、介護美容とはどのようなお仕事なのか教えてください。

美容の技術で高齢者の方に自分らしさを知ってもらい、生きる力を与えるお仕事です。主に介護施設や老人ホーム、高齢者の自宅にお伺いして、施術を行います。私は「介護美容研究所」というスクールに通い、ネイル、メイク、エステの3つの技術を習得しました。レッスンは現役のメイクアップアーティストやネイルサロンのオーナーなどが担当。さらに介護士などの専門家によって、認知症や体制の保持など高齢者の介護に必要な基礎知識を教わることができるので、未経験でもスキルを身につけられるんです。

──一般的な美容との違いは?

施術自体は高度な技術を使わず、基礎的なことを行います。たとえばエステではオイルを使って軽くハンドやフットのマッサージを行なう、ネイルは刺激の少ない商材を使ってワンカラーを塗るなどです。若い方に向けた美容は流行や、その方に馴染むものを追求しますが、私たちの目的は、仕上がりを気にしながらも美容を通じて楽しみや元気になる力を与えること。そのためお好きな色を選んでいただいたり、たくさんお話をしたり、過程を大切にしています。それから体調や体力の面も考慮しなければならないので、姿勢やスピードも注意して、無理のないリラックスした時間を提供することも大切です。

地元を中心に営業を行い、介護美容の魅力を広めていきたい

施設を訪れてネイルのケアをする山縣さん。

──山縣さんが介護美容の道に進まれたきっかけとは?

きっかけはたまたまスクールの広告を見たことでした。それまで介護美容という仕事があるということを知らなかったのですが、その広告を見たときに、幼いころ私も祖母に喜んでほしくてマニキュアを塗ってあげたことを思い出したんです。誰かの活力になる魅力的な職業だと思いました。さらに現在働いている福祉施設が保育以外に介護の領域にも拡大することがちょうど決まった時期で。昔の思い出と、現職の事業との関連、過去にネイルサロンでの経験も少しあったこともあり、始めるならこのタイミングだと思い、介護美容の道に進むことを決めました。

──それでは現在は副業という形で介護美容をされているのですか?

そうですね。平日は保育園の栄養士として会社に勤務し、休日はスクールに通いながら施設への訪問やイベントへの参加をしています。

──お仕事はどのようにして獲得されるのですか?

現在はボランティアとしてスクールが手配した施設に伺うことが多いのですが、スクールの卒業生は直接介護施設や老人ホームなどに営業に行く方が多いです。まずは介護美容の魅力を知っていただき、レクリエーションの時間などにエステやネイルの日を設けませんか?とご案内します。まだまだ取り入れている施設は少ないので、その効果や魅力を知っていただければ受け入れてくださるところは多いと思います。

私は生まれも育ちも現在の職場も川崎なので、これからは地元に貢献するという意味で、川崎の施設を中心に営業をしようと考えています。介護美容を通じて地域活性化ができたらうれしいです。さらに施設で知り合ったケアマネージャーさんとの繋がりもできたのでその方と一緒に仕事の幅を広げられないか検討しています。

高齢者の人生を豊かにする介護美容の力

仕上がりを一緒に見て喜ぶ瞬間が何よりうれしいとのこと。

──介護美容の魅力とは?

高齢者の方はネイルやメイク、エステが初めてという方も多く、少し施術しただけでもすごく喜んでくださいます。仕上がりを見たときの笑顔にいつも私のほうが元気をもらうんです。最初は緊張している方が多いのですが肌と肌が直接触れるので徐々にリラックスして、最後には表情がかなり明るくなります。

また施設内にもいい影響を与えられていると思います。たとえば施術後はきれいになった姿を誰かに見てほしくて積極的に他の利用者さんに話しかけに行く方が多いです。それを見た方も興味を持って会話が弾み、ポジティブなコミュニケーションが生まれています。「きれいにしてもらえることで、今までただ通うことが目的だったデイサービスが楽しみになった」というお声を聞いたときは、本当にやっていてよかったと思いました。

自分で色を選ぶ楽しみだったり、美しくなった自分の姿を誰かに見てもらう喜びだったり、介護美容は人生を豊かにするエネルギーになっていると改めて感じさせられますね。
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介護美容という仕事の魅力

介護美容の業界に入って1年弱ほどの山縣さんですがすでに大きなやりがいを感じられているようです。介護美容の仕事の魅力をまとめると以下の3つでした。

1.美容を通じて高齢者に楽しみや生きる活力を与えられる

2.笑顔を見ることでケアビューティスト自身も幸せややりがいを感じることができる

3.利用者同士のコミュニケーションが生まれるなど施設内にもいい効果が生まれる

美容×介護というまだあまり知られていない新しい職業ですが多くの方を笑顔にするすばらしい仕事だということを教えていただきました。その魅力が広がることで今後、さらに需要が増えていくのではないでしょうか。

後編では、山縣さんの働き方に対する考え方に迫ります。本業で栄養士をしながら副業として介護美容の仕事を続ける理由や、それぞれの仕事への影響についてお話ししてくださいました。

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