きちんと人に見てもらえるホームページは集客以上の価値がある【aivee 吉祥寺店 代表 辰野匠さん&店長 西川友規さん】#1
内装から店内のBGM、空気感まで、ハワイのような居心地のよさを追求する「aivee 吉祥寺店」。SNS集客が主流になってきている中、こちらのサロンは発信スタイルが少しユニークで、自店ホームページを丁寧につくり込んでいることが特徴的です。今回は代表の辰野匠さん&店長の西川友規さんにその狙いをお聞きしました。
前編では、ホームページに力を入れようと思った理由や、アクセスを増やすためのコラム記事について教えていただきました。
教えてくれたのは・・・
「aivee 吉祥寺店」代表 辰野匠さん(右)、店長 西川友規さん(左)
吉祥寺に構えて10年になるハワイアンサロン。三鷹にも姉妹店あり。特に、ショートカット・デザインカラー・髪質改善に定評があり、スタッフの肩肘張らない接客スタイルも人気の理由。各スタッフがSNSでの発信に力を入れる一方、自社ホームページ内のコラムやヘアカタログにも発信の場を設け、サロン全体でスタッフの情報発信スキルを高めている。
スタッフもお客様も自然体で過ごせるサロン
――aiveeは吉祥寺にオープンしてもうすぐ10年になるそうですね。BGMのハワイアンミュージックが素敵ですが、どのようなコンセプトなのでしょうか?
辰野さん:リゾートっぽい雰囲気を考えていて、今お店で流れているハワイアンミュージックを起点にしてつくったサロンなんです。ハワイアンミュージックを嫌いな人はあまりいないと思いますし、他の音楽に比べて耳に残りすぎないので、そういう心地よさに着目したんです。
西川さん:ハワイアンサロンってあまり見かけないですよね。
――こちらのスタッフさんはどんな雰囲気ですか?
西川さん:明るい子が多いですね。というより、ハワイアンな雰囲気にあてられて、働いているうちに明るい性格になったというべきか(笑)。接客スタイルもお客様と自然体でお喋りするという空気感を大切にしています。「アットホームなサロンです」とよく他のサロンでも言いますが、うちは特にわかりやすくアットホームなサロンだと思いますよ。
辰野さん:スタイリッシュな雰囲気やかしこまった接客は、うちに来るお客様はあまり求めていないと思います。
――こちらの吉祥寺店の他に、三鷹店もありますね。
辰野さん:三鷹店は近隣の方々だけでなく、アニメーションなどのクリエイター職の方々の来店も多いんです。吉祥寺エリアはこの10年でだいぶ発展し、昔より美容室同士の競争が激化してきましたね(笑)。とはいえ、どちらの店舗も安定して大変多くのご新規のお客様にご来店いただいています。
ホームページは集客ツールというよりサロンの財産
――スタッフさんは全員、個人のSNSアカウントからも発信しているのでしょうか?
辰野さん:そうですね。西川が中心になってスタッフたちにSNSの発信テクをレクチャーしています。
西川さん:SNS周りに関してもスタッフを放置したりはしません。「一人でやみくもにやる」というスタイルだとどうしても自己満足になってしまうので、相性の良いツールや、目的、ターゲット層などは僕らが一緒になって考えるようにしています。Tik Tokとかになると、逆に僕らの年代では若手についていけないんですけどね(笑)。
――SNS集客が主流になりつつある今、ホームページにも力を入れようと思った理由とは?
西川さん:うちはまだ大手広告サイトからの予約が大半ですが、美容業界全体で見るとやはり大手広告サイトからの集客は難しくなってきています。なので、うちもそこだけに頼らず、他ツールと組み合わせたやり方を確保しておいた方が将来的に安心だと思ったんです。
ほとんどのサロンがホームページを持っていますが、現状、あまり見られていないですよね。サロン側も放置しているパターンが多い気がします。僕らは、きちんと「見られる」ホームページをつくろうと思ったんです。そこから流入を増やしていけたらなと。そこで、店舗情報やスタッフ一覧だけでなく、コラムやヘアカタログのコンテンツも充実させることにしました。求人からの流入も多いと思い、求人ページもサイト内に設けました。
――SNSの台頭により、ホームページの存在感が失われているお店は多いですよね。aiveeではホームページを見て来店されるお客様はいますか?
辰野さん:来店アンケートを取っているわけではないのでわかりませんが、実際はホームページを集客ツールにするのはかなり大変ですし、僕らもそれを100%期待しているわけではありません。
例えば、大阪在住の人がうちのホームページを見たからといって、吉祥寺までは来られません。「イルミナカラーが得意」でサロンを探すにしても、ネット上では全世界のうちの1になるので、母数が多すぎます。「ホームページを見て月に100人来店」というのは現実的に難しい。そう考えると、やはり大手広告サイトで「吉祥寺・三鷹」でエリア検索をし、200〜300店舗の中から探してもらった方がまだ現実的です。または、ターゲットや得意スタイルを絞り込んで発信できるSNSの方が集客ツールとしては使い勝手が良いです。
ただ、サロンの財産にはなると思ったんです。
――ホームページがサロンの財産に?
辰野さん:コラム記事はスタッフが持ち回りで書いているのですが、今後ホームページをリニューアルしたとしても、コラムはきちんと残るようになっているんです。
スタッフの誰にも辞めてもらいたくはないけれど、もし将来スタッフがここを離れることになっても、自分が書いた記事が美容師としての財産になってくれれば良いなと思って。
キーワードを絞り込み、なるべく小さい母数の中で上位を狙う
――コラム記事は各スタッフさんが持ち回りで書いているとのことですが、どんなことを意識していますか?
西川さん:まずはGoogle検索で上位にくるようなキーワードを調べます。ざっくりと「ショートヘア」だけでは母数が大きすぎるので、「ショート 長め」「刈り上げショート」に絞り込み、その中で上位を狙う。毎回、キーワードを戦略的に定め、その内容に特化した記事を書くようにしています。
辰野さん:なので、ホームページからコラムに飛ぶというより、コラムが検索でヒットし、そこからホームページに飛んでもらうという感じですね。コラムをはじめたそもそもの狙いはそこなんです。
西川さん:過去記事のPV数を見ると、はじめた頃より3〜4倍に増えていますし、全体を見ても毎月数万人の流入があります。SNSに比べると拡散力は劣りますが、安定したPV数を確保できているので、きちんと人に見てもらえているという実感はありますね。
SNSで検索する人が増えたとはいえ、特に上の年齢層にはまだまだWEBで調べる人もいますからね。
――ちなみに、大手広告サイトの中にもブログ機能がありますが、自社のホームページで記事を書くメリットとは?
西川さん:自由度が全然違います。大手広告サイトのブログは規制が結構あるんです。写真は3枚だけとか、文字数も上限が決まっているので、書ける内容が限られてしまうんです。
その点、自社ホームページなら文字数も写真枚数もフォントも自由に決められるので、自分たちのこだわりや想いなどを表現しやすいんです。
「見られる」ホームページづくりのコツ
1.コラムやヘアカタログなどのコンテンツを充実させる
2.検索上位のキーワードを定期的にリサーチする
3.まずはコラムの閲覧数を増やす
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ホームページは集客ツールとしては向かないけれど、お店の資産になる。そこにはブランディングという意味合いだけでなく、どうやら「スタッフ教育」も含まれているようです。後編では、コラム記事を通してスタッフの情報発信スキルを高めるという教育方針をお聞きします。
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄