施術中に子どもが泣いてしまったら授乳もメニュー変更もOK。アロマセラピスト藤代千紘さん♯2
シェアサロンを中心に、ママセラピストとして活動する藤代千紘さん。前編では、育児をしながらどうやってサロン開業にこぎつけたのかをお聞きしました。シェアサロンで初期投資を抑えるなどの工夫もありますが、お子さん2人の育児をしながらサロン開業できたいちばんの理由は、「流れが来たと思ったときに思い切って乗ったこと」が大きいそうです。
この後編では、実際にシェアサロンを使ってみて思うこと、また育児とサロン運営を両立するコツを伺いました。土日の家事・育児はご主人にほぼお任せして、長年続けているバレエでリフレッシュしていることが両立の鍵のようです。
お話を伺ったのは…
アロマトリートメントサロンEn bas主宰
藤代千紘さん
子育て中にアロマトリートメントを学び、アロマセラピスト資格取得。それまで勤めていた証券会社を退職し、現在はシェアサロンを中心にアロマセラピストとして活動中。日々忙しい生活を送るママをターゲットに、1日2名・女性限定・完全予約制のサロン運営を行う。長男(7才)・長女(4才)2児のママ。バレエ歴19年の現役大人バレリーナでもある。En-bas.net/
1日2組限定にして、自分に余白をつくる
――シェアサロンのメリットはどんなところですか?
生活感にあふれた日々を過ごしているママたちに、サロンで違う雰囲気が味わえると喜んでいいただけることは、シェアサロンの大きなメリットだと思います。
シェアサロンだと直前の予約はとりづらいので、営業日の2日前を予約受付の〆切にしています。ギリギリの予約を受けることはできませんが、逆にサロンの営業スケジュールを早めに把握できるので、自分や家族の予定の調整もしやすくなって助かっている面もありますね。
――1日2名限定にされているのですよね?
はい。基本的に、営業時間は子どもたちが学校や幼稚園に行っている間のみにしているので午前・午後各1名様です。 証券会社時代、分刻みのスケジュールで慌ただしく動いていたこともあり、自分のペースを重視してサロン運営するように心がけています。それが自分の余裕や余白につながって、トリートメント中は100%お客様に向き合う時間になっていると思います。
――シェアサロンで不便だなと感じることはありませんか?
自分の世界観を作るのは、ちょっと難しいですね。それから、お客様1名につきシェアサロンを借りる時間は2時間。 トリートメントに1時間、お客様のお着替えとトリートメント前後の会話で30分は必要なので、準備と片付けの時間はもう髪を振り乱してすごいことになっています(笑) 。
施術中に子どもが泣いたら授乳しても、メニュー変更してもいい
――改めて、ターゲットはママなのですよね?
そうですね。ボランティアでママ向けのハンドマッサージをしたときにとても喜ばれて、そのときに「ママたちの体をこの手で癒したい」と思ったんです。自分も育児疲れで心身のバランスを崩した経験もありますし、ママが自分自身に戻れる時間を持つことがいかに難しいかを実感しているので。ママの身体は、子どもを抱きしめ、癒すもの。親子の幸せな時間のお手伝いをしたくて、ママたちにターゲットを絞っています。
――ママならではのお悩みに応えることはありますか?
産後トラブルを訴える方も多いです。皆さん、トラブルがあってもすぐにケアする余裕がなくて我慢していたり、だいぶ後から鏡に映る自分の姿を見てはたと気づかれる方も。例えば、肌の乾燥や抜け毛、お胸の形が気になったり。そんなときは、肌の乾燥にはフランキンセンス、抜け毛にはローズマリーなどアロマでできるケアをご提案しています。
――胸の形もトリートメントで?
そうですね。肩甲骨の状態が悪いとバストが歪むので肩甲骨をケアしたり、デコルテをケアすることでハリを出すこともできます。 何かお手伝いできることはないかなと、いつも考えながら施術しています。
――ターゲットをママさんに絞るということは、自分と同じ環境にいる人たちだから理解しやすいですよね。 将来サロンを持ちたいとおっしゃっていましたが、どんなサロンにしたいですか?
やっぱりママ向けというのは変わらないと思います。妊娠中の方も、小さなお子様連れの方も来られるように、マットとおもちゃを常備して。
――ママたちがサロンを訪れるハードルが下がりますよね。まず子どもをどうしようと思いますもんね。
そうですね。施術中に子どもが泣いてしまったら授乳してもいいし、メニューを変更して頂いてもいいと思っています。これから子供たちもどんどん大きくなるので、そのときに合ったスタイルで自分のペースを大切にしながら、柔軟にサロンの形を変えていきたいと思っています。
――ママである藤代さんならではのスタイルですね。ところで、集客方法はどのようにされていますか?
お客様や子育て仲間からの紹介など、口コミがほとんどです。そのため、地元に密着して、小さなご縁やつながりを大切にして、長く続けていきたいと思っています。
開業したての頃、子育て施設にチラシを置かせてもらったこともあります。そこでハンドマッサージのイベントをやらせてもらいました。全身トリートメントでは極力お声がけを控えていますが、ハンドマッサージではお客様との会話を楽しんでいます。まずはそこで私の人となりを知ってもらって、「次は全身試してみたい」と言ってくださる方も多いですね。
――ハンドマッサージのイベントが全身トリートメントのお客様に繋がるのですね。
そうですね。それから、わたしが長年続けているバレエ教室にチラシを置かせてもらったこともあり、バレエやダンスをされているお客様も多いです。
あとは、営業日にはブログ記事をひとつ書くようにしいています。多忙なお客様が時間のあるときに読んで、ヒントになるような楽しい情報を伝えられたらという気持ちで。そこから興味をもってくださる方もいらっしゃいます。
土日の家事・育児は夫にまかせてバレエでリフレッシュ
――ご主人は家事や育児にとても協力的だそうですが、最初からそうだったのですか?
幼稚園に子供を2人預けながら証券会社で時短勤務というマイノリティな選択をしたタイミングで、「このスケジュールでは、私が息をつける時間がない。どうすればいいのか」ということを夫と徹底的に話し合いました。その結果、夫は「平日はなかなか手伝う時間がないけれど、その代わり土日は思いっきり羽根を伸ばしたらいいよ」と言ってくれて、そこから我が家のスタイルができ上がりました。
――ご主人はどんな家事・育児を?
夫はコロナ禍になってからほぼ在宅勤務ですが、平日は会議が多いので、平日の家事・育児はわたしが主に担当します。土曜日はバレエのレッスンがあるので完全に主人に任せていますね。 基本的に、土日は料理も掃除も何でも夫がしてくれるので、わたしは楽させてもらっています。 平日も、わたしの仕事によっては夫が娘の送り迎えなどを担当してくれることもあります。
――最後に、今後ママセラピストを目指す方に伝えたいことはありますか?
セラピストを目指す方には、お客様に寄り添いたいという気持ちの強い方が多いと思います。でも、まずは自分自身を大事にしてほしいと言いたいです。わたしも土日や夜帯に施術のリクエストをいただくことがあるのですが、いまの自分向けのリクエストではないなと思ったらお断りするようにしています。わたしの第一優先は、やっぱり母親であることなので。
――その軸がぶれてしまうと仕事も育児も中途半端になってしまうということでしょうか?
そうですね。わたしは、子どもの成長を見守りながら長くセラピストの仕事を続けていきたいと思っています。そこを無理してリクエストに応えることは、お客様のためにも私のためにもならないと思うんですよね。自分にも対応できる方向を提案してみたり、ときにはお断りする潔さも必要ではないかなと思います。
藤代さんが育児とサロン運営を両立するためのコツは
藤代さんが育児とサロン運営を両立するためのコツは以下の3つです。
1.1日2名限定にすることで自分に余白を作る。
2.ターゲットをママに絞る。
3.ご主人に家事・育児の協力を得る。
子育てをきっかけにアロマセラピーと出会い、セラピストとしてサロン開業を決意、証券会社を退職した藤代さん。子育て施設やバレエ教室にチラシを置いてもらって、小さなイベントから顧客につなげるなど、地道な活動をコツコツと重ねて、サロン運営を軌道にのせました。「第一優先は母親であること」というブレない軸が、健全なサロン運営につながっているのだと感じました。
取材・文/永瀬紀子