美容院で男性のカットのみは違法だった?|美容師と理容師の違いとは

理容室はもちろん、美容院でカットしてもらっている男性がいることは、全く違和感のない光景ですよね。しかし、実はほんの数年前までは、美容院で男性がカットのみの施術をしてもらうことは法律で禁止されていました。

現在は法律が緩和され、男性が美容院でカットのみの施術を受けることは違法ではなくなりました。この記事では法律で規制されていた経緯や、美容師と理容師の違いについてもあわせて紹介します。

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美容院で男性のカットのみは違法だったの?


美容院で、男性がカットのみを行うことは、2015年までは禁止されていました。その一方で、パーマやカラーと一緒にカットをすることは規制されていませんでした。なぜ違法だったのか、詳しく見てみましょう。

なぜ違法だったの?|1978年の厚生省の通知

なぜ男性のカットのみが違法だったかというと、かねてより美容師と理容師の施術の範囲についてさまざまな議論があったことから、1978年(昭和53年)に厚生労働省から美容師と理容師の施術内容を区別するための通知がなされたためです。

通知の内容を簡単にまとめると、

1.美容師はパーマなどの施術に伴った美容行為の一環として男性に対しカットを行うことは可能であるが、カットだけを行ってはならない。女性については制限しない
2.理容師は男性に対しパーマを行うことは可能であるが、女性に対しては行ってはならない
3.カラーは美容師・理容師以外は行ってはならない

というものでした。このように、美容師は男性に対してパーマなどと合わせたカットは認められるものの、カットのみを行うことは許可されていませんでした。

通知が出された背景とは|美容師法と理容師法

上記のような通知が出された背景として、美容師法による美容師の定義と、理容師法による理容師の定義の違いが大きく関係しています。美容師と理容師、それぞれの定義を見てみましょう。

美容師の定義とは

昭和32年に制定された美容師法によると、美容とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定義されています。

美容院では、パーマやヘアセット、化粧を行うものとされており、通知が出されるまでは男性女性の区別ははっきりと明記されていませんでした。

美容師の定義は下記のように資格が必要です。
『美容師は「美容を業とする者」をいい、美容師法に基づき厚生労働大臣の免許を得なければならない。
美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない。』
厚生労働省 美容師法概要より

理容師の定義とは

昭和22年に制定された理容師法によると、理容とは「頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること」と定義されています。

理容室ではカット、顔そりを行うものとされており、こちらも美容師法と同様に、通知が出されるまでは男性女性の区別は明記されていませんでした。

理容師の定義は下記のように美容師と同様、資格が必要です。
『理容師は「理容を業とする者」をいい、理容師法に基づき厚生労働大臣の免許を得なければならない。理容師の免許を持たないものは理容を業として行うことはできない。』
厚生労働省 理容師法概要より

理容師による女性のパーマもNGだった

1978年(昭和53年)の通知によって、それぞれの施術範囲が明記されました。

美容師法では
『美容師がコールドパーマネントウェーブ等の行為に伴う美容行為の一環としてカッティングを行うことは美容の範囲に含まれる。
また、女性に対するカッティングはコールドパーマネントウェーブ等の行為との関連を問わず、美容行為の範囲に含まれる。』
厚生労働省 美容師法概要より

理容師法では
『刈り込み等の行為に伴う理容行為の一環として男子に対し仕上げを目的とするコールドパーマネントウェーブを行うことは理容の範囲に含まれる。』
厚生労働省 理容師法概要より

それにより、美容院では男性のカットのみはNGだったように、理容師による女性へのパーマもNGとなったのです。結果として男性は理容室、女性は美容院を利用するという区別がなされていました。

現在はカットもパーマもOKに|2015年厚生労働省の通知

戦後間もない時期に出された男女間で受けられる施術が異なる通知の内容は、現代社会にはそぐわないものとして、2015年に新たな通知が出されました。

新たな通知により、次のように施術の制限が緩和されました。
・理容師がパーマネントウエーブを行うことは差し支えないこと
・美容師がカッティングを行うことは差し支えないこと

これにより、性別を制限した文言はなくなり、美容院で男性がカットのみをしてもらうことも、理容室で女性がパーマをかけてもらうことも認められました。

美容師と理容師の違いとは?|業務・目指す方法を紹介


美容師、理容師それぞれの施術行為に性別の制限がなくなった今、業務にはどういった違いがあるのでしょうか?美容師と理容師の違いや、目指す方法について紹介します。

美容師の業務とは?

美容師の業務は、カットやカラー・パーマをはじめ、ヘアセットやまつエク・着物の着付けなど多岐にわたります。しかし、顔そりやひげそりを行うことはできません。

美容師には、スタイリストとアシスタントの2種類の階級があります。
・スタイリスト:プロの美容師。どの施術も1人で行うことができる。
・アシスタント:見習いの美容師。1人での施術は行えず、スタイリストのサポートや掃除、受付などの雑務をこなしながら、スタイリストデビューのために練習を重ねる。

美容師の仕事について詳しく紹介している記事があるので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
美容師はどんな仕事をするの? やりがい・魅力とは? お給料から目指せる方法まで徹底解説!

美容師を目指すにはどうすればいいの?

美容師を目指すには、国家資格の取得が必要です。国家試験を受けるためには、美容学校などの美容師養成施設で教育課程を修了していなければなりません。

まずは養成施設に入学し、必要な知識や技術のことを学びます。教育課程は2〜3年です。全ての教育課程修了後、国家試験を受験し合格すれば、晴れて美容師になることができます。

美容師になるためのステップや年収、活躍の場を詳しく紹介している記事があるので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
美容師になるためにはどんな流れがあるの?平均年収や活躍の場などについてまとめて解説

理容師の業務とは?

理容師の業務は、大きく2つに分けられます。カットやパーマなど髪の毛を扱うものと、顔そりやひげそりなど顔にアプローチするものです。

美容師が行うことのできない顔そりやひげそりは可能ですが、ヘアセットやメイク、まつエクの施術などはできません。また、施術範囲の緩和により、男女問わずパーマをかけることができるようになりました。

理容師の仕事について詳しく紹介している記事があるので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
理容師の仕事内容って?美容師との違いやダブルライセンスなどについて詳しく解説

理容師を目指すにはどうすればいいの?

理容師を目指すには、美容師と同様に国家資格の受験が必要です。美容師、理容師それぞれ免許は別ですので、理容師の国家試験を受験します。国家試験を受けるためには、理美容専門学校などの養成施設の教育課程を修了していなければなりません。

まずは理容師養成施設に入学し、必要な知識や技術を身につけます。教育課程は美容師と同様に2〜3年です。全ての教育課程修了後、国家試験を受験し合格すれば、理容師になることができます。

理容師を目指す方法について詳しく紹介している記事があるので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
理容師免許ってどうやってとるの?資格を取るまでの流れとおすすめの専門学校についてまとめて紹介

ダブルライセンスの取得もおすすめ!

美容師と理容師両方の免許を持っていることを、ダブルライセンスと呼びます。スタッフ全員がダブルライセンスを持っていることで、1つの店舗で理容・美容の両方を行うことができますし、活躍の場も広がるのでおすすめです。

美容院と理容室を併設するには、スタッフ全員がダブルライセンスを持っていることが条件として法律で定められています。

そのため、1つの店舗で美容院と理容室両方を行うことは少しハードルが高いのですが、独立して開業する場合などは、自分自身がダブルライセンスであればどちらも行うことが可能ですよね。

平成30年度の法改正が行われ、美容師・理容師どちらかの免許を持っていることで重複科目の受験が免除され、履修時間も短縮されました。これによりダブルライセンスの取得も以前に比べてハードルが下がりました。

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これからはどうなる? 職域の未来とは


美容師と理容師の仕事は、性別による制限が撤廃されたことにより、可能な施術が重なる部分も増えました。また、スタッフ全員がダブルライセンスである場合に限り、1つの店舗で両方の施術が可能になりました。

しかし、美容師と理容師のダブルライセンス取得は、履修時間や費用を考えると簡単であるとは言えません。ですから、スタッフ全員がダブルライセンスを持っているという条件は、容易にかなえられるものではありません。

今後そういった課題や人材不足などの社会背景をもとに、それぞれの職域が広がったり合わさったりすることが望まれています。詳しくはダブルライセンスを持つ方へのインタビュー記事がありますのでぜひ読んでみてくださいね。
増える理美容W免許取得者。その背景に何がある? 星川佳輝さん #1

職域のNGは縮小! 今後はさらに理美容の壁が薄くなっていく


以前は、美容師は男性のカットのみの施術は認められておらず、理容師は女性にパーマをかけることが認められていませんでした。しかし今では、こういった性別による棲み分けがなくなり、美容師も理容師も性別を問わずにカット・パーマができるようになり、職域は広がりました。

現在の美容師と理容師の大きな違いは
・美容師は顔そりやひげそりは認められていない
・理容師はヘアセットやメイク、まつエクの施術は認められていない
ということです。

今後、さらに隔たりがなくなり職域が広がることで、ますます活躍できる場が広がることが予測されます。分かりやすく例をあげると、ブライダルの分野で女性のメイクやヘアセットだけでなく、男性のひげそりや顔そりなどもできる、といった可能性も生まれるでしょう。

多様化する社会を考えて、理美容業界もサービスが拡大されることが望まれます。

引用元
厚生労働省:美容師法概要
厚生労働省:理容師法概要
厚生労働省:理容師法及び美容師法の運用について(昭和53年12月5日)
厚生労働省:理容師法及び美容師法の運用について(平成27年7月17日)

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