ビジューネイルに特化!自分の「売り」を見つけて、流行に振り回されないネイリストに 小林あいりさん
埼玉県狭山市で、10年続くネイルサロン「Aiuto」を経営する小林あいりさん。
前編では、長年顧客から愛されるサロンづくりの秘訣を伺いました。流行にとらわれないビジューネイルやシンプルネイルに特化したところ、思いに共感した顧客が来店するようになりサロンワークが楽しくなったほか、資材の無駄削減なども叶ったそうです。また、新規顧客来店時には信頼関係を構築し、次回予約をとることを徹底。それにより既存顧客の割合が97%となり、安定した経営をされているということです。
今回、お話を伺ったのは…
小林あいりさん
ネイルサロン「Aiuto」オーナー。百貨店での化粧品販売を経て、ネイリストに転身。ネイリスト歴は16年、うちオーナー歴は10年。サロンには10年以上担当をしている顧客が訪れるなど、長年愛されるサロンづくりを実現している。自らを「自信をもって施術ができるネイリストになる為のサポーター」と称し、2021年よりサロンワークに特化した講座の主宰も務める。「技術×マインドセット×接客力」という3つの柱があってこそ、ネイリストが自信を持って施術できるようになると提唱している。
流行に振り回されない、自分の「売り」を見つける!
――小林さんのInstagramページで「自分の売りを見つけて人生を楽しむ」というフレーズをお見かけしました。小林さん自身、ネイリストとして「売り」の必要性を感じておられたのでしょうか?
私がネイリストになった16年前は、手書きやビジュー、スカルプやジェルなど、ネイリストたるもの「施術はなんでもできて当たり前」という時代でした。ネイリストが自分の得意な施術である「売り」を持たねばならなくなったのは、体感でここ8年ほどだと感じています。8年ほどの間にInstagramなどのSNSが興隆し、ネイルサロンもSNSを運用するようになりました。それにともない、ネイルの写真がネット上にあふれるように。そんななかでお客さまがサロン選びの際に迷わないよう、1つの技術を押し出して訴求するようになったのが、「売り」を持たねばという風潮を作ったきっかけのように感じています。
私自身、当時はとくに「売り」を作らずにどんなネイルでも施術をしていたので、1つの技術に特化していくことは非常に怖く感じました。しかし、「自分の理想のお客さま」と出会うためには必要なことだと思い、「売り」を作ることを決断。私がネイリストを始めてから、流行り廃りなく常に一定の数の顧客からの支持があると感じた、シンプルネイルとビジューネイルに特化していくことを決めたのです。
――「売り」を作られたことでの変化はありましたか。
まず、自分自身がシンプルネイルやビジューネイルのスタイルが好きということもあり、施術していて「楽しい」と感じるようになりました。また、基本的には私の「売り」に共感したお客さましか来店しないので、新規のお客さまが来ても「今日はどんな施術をするんだろう?どんなアートをお願いされるのかな?」という不安感がなくなりました。心理的な安全を得られたことで、施術のパフォーマンスも向上したと感じています。
また、流行に左右されないデザインを売りにしたお陰で、資材のムダが出ないというメリットもありました。以前は流行の資材を入荷していましたが、半年後には流行が去り、資材が無駄になってしまうということも多々ありました。「売り」を絞ったところ、流行に左右されることがないので、資材を無駄にすることもなくなりましたね。これは経営目線でも嬉しいポイントでした。
次回予約の徹底と物品販売で安定したサロン経営を叶える
――サロンを長く続けるにあたって、大前提として利益を創出し続けていく必要があると思います。売上を上げるために、意識的になさっていることはありますか。
サロンを始めた当初から、リピーター創出を意識してきました。具体的には、新規のお客さまにも次回予約をとっていただくことを徹底しています。次回予約を重ねてもらうことで、新規顧客が定着し、いまのサロンの顧客の約97%は既存顧客なんですよ!2020年にコロナが流行し、お店を2ヶ月ほど閉めなければならなかったタイミングもありましたが、既存顧客が多い当店は、ほぼすべてのお客さまが再開後お店に戻ってきてくれました。これは、既存顧客を大事にして、信頼関係が結べていた結果だと思います。
お客さまが予約をしてくださるのを待っている状態は、気持ち的にも経営的にも不安定になります。そんななか、先々の予約を取ってくださるお客様が一定数いらっしゃると、心に余裕を持ってサロンワークに打ち込めます。
――なるほど。安心してよいパフォーマンスをするためにも既存顧客を大事にしていく必要があるのですね。その他に実践されていることはありますか?
日々の売上アップのために、ネイルの関連アイテムの販売を行っています。私のサロンでは、自分が使用して気に入ったハンドクリームやオイルなどのアイテムを販売しています。自分が好きなものであればセールストークをするのも苦ではないので、あくまで自分が気に入ったものを取りそろえるのがポイントです。
もちろん技術を磨いて施術の単価を上げていくことも大事ですが、単価はどこまででも上げていけるものではありません。また日々の鍛錬で技術が上がったとしても、それを価格に反映させるための説明や告知には大きな労力がかかります。そこで、説明や告知なしで単価アップできる方法の一つとして、アイテムの販売などを上手に利用するべきだと思っています。
顧客との強固な信頼づくりが、長年愛されるサロン運営につながる
――小林さんの運営されるサロン「Aiuto」は、10年目の節目を迎えられました。愛されるサロンづくりのために心がけていらっしゃることはありますか。
「目の前の利益にとらわれず、お客さまからの信頼を積み上げていく」というスタイルは、信念を持って一貫してきました。化粧品販売員時代に、この考えをコツコツ実践したことで顧客のファン化が進んだ実感があり、今でも忘れずに心がけています。たしかに売上を上げることは大切ですが、それらに追われて、顧客の信頼を損ねてしまっては元も子もないと考えています。
――「信頼」が強固なファンづくりにつながっているのですね。
また、「お客さまを飽きさせない」ということは常に意識しています。もちろん、「売り」になっている施術は、コロコロ変えないことが大事です。施術の技術をより磨くことであったり、サロン内の席の配置をより心地よいと思うものに変えていくことであったり…。「売り」となる部分以外のところでも、日々サロンをアップデートできるよう心がけています。長く通ってもお客さまが飽きないサロンづくりをしていくことも、長く愛していただけるサロンづくりのコツだと思います。
また、技術向上はもちろんのこと、自分自身の人生を豊かに過ごすことも、とても大切だと感じます。ネイリストが心を豊かに持つことで、それがサービスに反映され、結果的にお客様にも循環し、ネイリストとお客さまの信頼の構築につながると思っています。
小林あいりさんの愛されるサロンを経営するための3つのコツ
1.流行に左右されない「売り」を持つことで、資材の無駄を減らし、施術者の心理的安全も手に入れる
2.リピーター獲得のため次回予約を必ずとり、自分のお気に入りのアイテム販売で日々の単価アップを目指すことで安定した経営状態を保つ
3.目の前の利益にとらわれずに、お客さまと真摯に向き合う
後編では、小林さんの講師としての一面について掘り下げていきます。
ネイリスト向け講座のなかでは「マインドセット」の考えを大事にされているのだそう。マインドセットを意識づけることで、健やかにサロンワークを続けることができるといいます。またよいパフォーマンスが叶い、お客さまの満足度を上げる上でも重要とのこと。また、技術力、自分の雰囲気、ターゲット層、自分の「売り」、SNS運用、サロンのインテリアなどサロンを構成するさまざまな要素に統一感を持たせる「ブランディング」の重要性についても教えていただきます。後編もお楽しみに!