自分の「好き」を詰め込んだら「ゆめかわ」ネイルが生まれた。ネイリストなかやまちえこさん
著名人からの指名が絶えないフリーランスのネイリスト なかやまちえこさん。現在は、ネイリストでありながら講師業、ネイルアイテムのプロデュース、YouTubeを始めとしたSNS運用などさまざまな場に活躍を広げています。
前編では、ネイル業界での多岐にわたる活躍を紐解いていきました。美容業界全体を見渡していたことで、ネイリストにもフリーランス化の波が来ると予見。いち早くシェアネイルサロンを開業し、大人気となっています。現在、たくさんの肩書を持つなかやまさんですが、ほぼすべてのお仕事が紹介によって始まったものなのだそう。さらに、フォロワー10万人を超えるInstagramやYouTubeなどのSNS運用を続ける原動力についてもじっくり伺いました。
後編では、なかやまさんのネイルに対するこだわりを深掘りしていきます。なかやまさんといえば「ゆめかわ」ネイルが代名詞になっていますが、その始まりは自分が好きなファッションから発想したのだそう。なかやまさんが20代のころ、青文字系雑誌を読むような人向けのネイルがなかったことに着目し、自分が好きなタイプのネイルを作りはじめたんだとか。
またネイルデザインの着想は、なかやまさんが大好きなテーマパークやゆめかわなアイテムから得ることが多いそうです。他のネイリストさんのネイルにインスピレーションを受けないよう、あえて知り合い以外のネイリストのSNSを見ないというのも驚きです。
今回、お話を伺ったのは…
なかやまちえこさん
ネイリスト。ネイル講師、ジェルネイルメーカーでのディレクションインストラクターや、シェアネイルサロン「aby.」のプロデュースなど、ネイル業界で多岐にわたって活躍。ファンシーなデザインの「ゆめかわ」ネイルの先駆者で、青文字系モデルやアイドルなどの多くの有名人顧客を抱える。Instagramのフォロワーは10万人、YouTubeの登録者数は4.38万人。人気の動画は44万回再生を超える。
自分の好きなファッションに着想を得て、青文字系ネイルのパイオニアに
――なかやまさんといえば「ゆめかわ」ネイルの先駆者ですが、どんないきさつでファンシーなネイルをされるようになったのですか。
私はもともと、高校時代に服を手作りしていて服飾の専門学校に通おうと思っていたほど、ファッションが大好きです。そのなかでも「青文字系」と呼ばれるジャンルが好きで、雑誌でいうと『Zipper』や『KERA』、『FRUiTS』などをよく読んでいました。
ネイリストを始め、自分のサロンをオープンするころまでは、ネイルは「お金持ちの方や派手に見せたい職業の方がするもの」というイメージがありました。デザインは、いわゆる「赤文字系」のようなフェミニンなものがメインで、あってもちょっとギャルっぽい要素のものが多かったんです。
私自身は青文字系ファッションが好きだったので、青文字系のネイルがないことを疑問に感じたと同時に、「もしかしたらコレはチャンスかも!」と思い、好きな系統のデザインのネイルを作ることにしたんです。そうして、雑誌『KERA』の編集部に自ら売り込みをかけ、ネイルを取り上げてもらうことに。それからは他の青文字系雑誌にもネイルが取り上げられるようになりました。
――青文字系のジャンルでネイルを一般化させた立役者ですね!ずっと第一線で活躍されていますが、デザインのアイディアはどんなところから得ているのでしょうか。
生活をしているなかで接する、ネイルにはまったく関係ないジャンルで、「素敵だな」「かわいいな」と思ったものからインスピレーションを受けることが多いですね。テーマパークのパレードや、ゆめかわなアイテムを見て、「この色合わせかわいい!」「この柄の組み合わせ、合うかも!」というようにインプットをしています。
「いいな!」と思ったものは心にずっと残ってしまうので、SNSでは知り合い以外のネイルの投稿は見ないようにしています。情報が入ってくると、自然と人のデザインにインスピレーションを引っ張られてしまうので、あえて見ないようにしています。
ネイリストは「接客業半分、技術職半分」お客さまの生活に馴染むネイルを作る
――なかやまさんはモデルさんやアイドルの方などの著名人をはじめ、多くの顧客の方を抱えていらっしゃいます。ネイリストとして施術をするときに、心がけている接客方法などがあれば教えてください。
私はネイリストという仕事を「接客業半分、技術職半分」のお仕事だと思っているんです。そのためサロンワークでは、お客さまの要望に応えるようにしています。
ネイリストは技術職の側面も持っているので、時折、生徒さんやフォロワーさんからも、「お客さまから『こういうデザインを施術してほしい』と言われても、やりたくない時がある。どうしたらよいか」という相談をもらうこともあります。職人気質の考え方も私の中にもあるので気持ちは分かるのですが、そんな時は、「サロンワークなら、お客さまのご要望を優先して施術しているよ」と答えます。
そのネイルとともに生活をするのはお客さまです。ネイルは施術をした瞬間から、お客さまの生活の一部になります。ネイルが、お客さまの生活に馴染むものでなかった場合、お客さまが生活をおくるうえで不便を感じてしまうかもしれません。ですから施術時には、私はお客さまの要望を大事に聞くようにしています。サロンワークでは、自分のこだわりよりも「お客さまの生活がネイルの主体」であり、重要なものだと思うんです。
――「お客さまの生活に馴染むかどうか」という視点と、確かな技術によって、顧客の厚い信頼を得ているんですね。逆に、サロンワーク以外のお仕事のときのデザインはどんなことを心がけていらっしゃいますか?
サロンワーク以外のお仕事で作成する「作品」については、自分のアイコンである「ゆめかわ」からブレないように意識しています。たとえばメーカーさんから「このカラーを使ってネイルを作ってください」という依頼があった場合など、意向に添いながらも、自分のテイストを出すよう心がけています。自由に作るネイルも楽しいですし、制約があるなかで工夫をこらすネイルも作りがいがあってとても楽しいです。
自分が好きなものを詰め込んで作った作品を見て、「ゆめかわ」に共感してくれた人がサロンに来てくださると、喜びもひとしおです。
好きなジャンルを見つければ、「こだわり」は自然と生まれてくる
――ネイリストの多くの方は、人との技術やデザインの差別化に悩んでいる人が多いように思います。なかやまさんはデザインにどんなこだわりを持たれていますか?
私は好きなものではないと、作り手がこだわりを持つのは難しいんじゃないかと思うんですよ。私が「ゆめかわ」にこだわれているのも、自分が好きなジャンルだからです。「この色を重ねたらもっと可愛い!」「モチーフはこれにしたほうがさらに可愛くなる!」という、自分なりの「可愛い基準」は、好きなジャンルだからこそ生まれると思うんです。
今流行している「ニュアンスネイル」は、見ていて素敵だなと思うものももちろんありますし、日本人の生活に馴染みやすいネイルだと思います。でも「ゆめかわ」が好きな私がニュアンスネイルをしようと思っても、どこにこだわったら良いのかわかりませんし、お客さまの爪のタイプに合うデザインの提案をするのも難しく感じます。私自身は、自分の趣味ではないジャンルを無理に極めようとはせず、「自分自身が好きなジャンル」にフォーカスしています。
――最後に、今後の目標について教えてください。
私、あまり計画を立てないタイプなんです(笑)。どちらかというと、目の前にあるひとつひとつの小さな目標をクリアしていくことが大事だと思っています。小さな目標をクリアすると、不思議と次の展開が開けていくんですよね。ですからこれからも、目の前に現れる「あれをやってみたい!」「これをやってみたい!」という気持ちを大切に、開けていく展開を楽しんでいきたいです!
なかやまちえこさんの多くに人に支持されるネイルを生み出す3つの秘訣
1.人のデザインに影響を受けないよう、知り合い以外のネイルは見ない
2.サロンワークで作るネイルはあくまでお客さまが主体 「お客さまの生活に馴染む」ネイルを作る
3.無理に興味の範囲外のデザインを極めるよりも、好きなジャンルのデザインを見つけてフォーカスしていく
ネイル業界の第一線で活躍を続けるなかやまさん。多岐にわたる活躍でお忙しいなかでも、ものづくりを心から楽しんでいらっしゃる様子が印象的でした。これからなかやまさんのようにネイリストとして活躍の幅を広げていきたい方は、参考にされてみてはいかがでしょうか。