自分の「好き」をアピールして差別化。相手の期待を上回ることが重要「QUQU」長田怜士さん
渋谷にある美容室「QUQU」。その人だけに似合う唯一無二の施術がしてもらえると、人気を博すサロンです。
そんな「QUQU」に2023年に入社し、アシスタントとして活躍しているのが長田怜士さん。初めて髪を染めたときに感じた「自分が強くなるような感覚」を他の人にも還元できたらと美容師を志し、大学卒業後に美容専門学校に3年通ったといいます。
前編では、長田さんが学生時代にした努力や、「QUQU」を志望した理由について振り返っていただきました。後編では、採用試験の内容や、どんな対策をしてきたのかを教えていただきました。
今回、お話を伺ったのは…
「QUQU」アシスタント 長田怜士さん
2023年に「QUQU」に入社し、現在はアシスタントとして経験を積んでいる。愛知県出身。大学卒業後、美容専門学校に入学。美容師免許やネイル、着付け、パーソナルカラーなどの資格を有する。アニメ、漫画、バンド、アイドル、ネットミームが好きな自称「オタク」。サブカルチャーから着想を得た唯一無二のスタイルが評価され、学生時代にはフォトコンテストなどでの受賞歴もあり。
スタイルブックまで制作した書類選考
――QUQUはLECOと同系列ですよね。採用試験はどのような感じで進むのですか?
採用はQUQUとLECOの2サロンが共同で進行していきます。ただ採用試験時にどのサロンを志望しているかを伝える機会があり、配属もその通りに進むことがほとんどです。
――採用試験の流れを教えてください。
内定をいただくまでに5つのステップを踏みます。1次はファッション写真と作文、履歴書による書類選考、2次で集団面接と進み、3次からは実践的な内容に入ります。3次にクリエイティブ試験、4次にサロンワーク試験、最後は個人面接を受けました。
――採用試験のために準備したことを教えてください。
絶対に合格したかったので、書類選考の際に提出する書類の作成から、ひとつも手を抜かないと決めて取り組みました。
1次試験ではファッション写真の提出が求められるのですが、ただの写真を送っただけでは他の受験者に埋もれてしまうと思い、1週間の服装をまとめたスタイルブックを作成しました。LECO代表の内田が出版した『内田本』をオマージュし、『長田本』というタイトルの本を作ったことは思い出深いです。集団面接でも話題にすることができ、「作ってよかった」と思いました。
――クリエイティブ試験ではどんな作品を作りましたか?
本来はサロンに行き、その場で作った作品をみてもらうという試験なのですが、私が試験を受けたのがコロナ禍だったため、スタイルを作るプロセスを動画で確認していただくことになりました。
「QUQUやLECOの志望者は、絶対にファッショナブルでかっこいい動画を作ってくるはず」と思ったので、同じ土俵で戦うのはやめて、自分のカラーを出して差別化しようと決めました。
僕は漫画やアニメ、ネットなどのサブカルチャー育ち。「ここで自分のバックグラウンドを出さずにどうする!」と思いました。アニメキャラの顔が書かれたセーラー服風の衣装を自作してモデルに着用してもらい、動画にはネットミームの「ゆっくり実況」風の編集を施しました。
――他の受験者との差別化もばっちりだったでしょうね!サロンワーク試験ではどんなことをするのですか?
サロンワーク試験はその名前の通り、営業中のサロンで数時間アシスタントとして働く試験でした。スタイリストの動きを見て、オイルを手渡したり、床に落ちた髪を片付けたりと、臨機応変に動けるかをチェックしてもらったのだと思います。
僕は頭でっかちで臨機応変な動きが苦手なので、緊張でがちがちになり、試験の日の記憶があまりありません(笑)。
――最終面接で話したことを教えてください。
最終面接では、その前のサロンワーク試験に対するフィードバックをいただいたり、パーソナルな部分について質問をされたりした記憶があります。
僕は3次試験のときにスタイルブックを作り込んでいたので、「美容師の仕事のほとんどはサロンワーク。作品づくりは仕事の一部に過ぎませんが、それでも美容師になりたいですか?そしてここで働きたいですか?」という質問をされました。美容師の仕事はあくまでサロンワークがベースであり、大切にしていかないといけないのだということを、最終面接で気づかせていただきました。
――面接で意識していたことはありますか。
性格的に臨機応変な受け答えがとても苦手なので、ついガチガチに準備をしてしまいそうだったのですが、あえて準備し過ぎないことを意識しました。
用意されたことをつらつらと答えるだけだと、人となりや僕の熱意は伝わらないと思ったので、志望動機以外の返答はあえて用意せず、その場で答えるようにしました。
左利きから右利きに矯正。すべては技術習得のために
――内定の連絡が来たときの気持ちを教えてください。
合否がわかる日を知っていたので、その日は1日中ソワソワしていた記憶があります。家族で外食をしたのですが落ち着かず、僕だけ先に家に帰ったほどでした。
自宅までの帰路で内定の連絡があったので、家族が食事をしている店に走って戻り、お店のドアをバーンとあけて「合格したー!」と大声で報告しました(笑)。家族もとても喜んでくれて、本当にうれしかったですね。
――入社後、ギャップを感じたことはありますか。
QUQUは、派手なヘアカラーやスタイルを求めている人ばかりが来客すると思われがちです。しかし、一般的にナチュラルと言われるようなスタイルを求める方もたくさんお越しくださることには、いい意味でギャップを感じています。
個性的なスタイルからベーシックなスタイルまで、幅広いスタイルを求めるお客様に携われることはとてもうれしいです。
――入社後、働く上で課題に感じていることはありますか?
先日からカットの練習に入ったのですが、技術的な面で壁にぶつかっています。
僕は左利きなのですが、専門学校時代の恩師から「右利きの先生や先輩からカットを教わることが多いから、学ぶときは頭のなかで左右反転させないといけない。そんな苦労をするくらいならば、カットのときだけ右利きに矯正してしまうのもありなのでは?」と言われました。それ以来、右利きに矯正しているんです。
右利き歴はまだ4年ほど。さらに僕は不器用なので、二重の意味で課題があると感じていますね。
――課題を乗り越えるために努力していることを教えてください。
人よりも練習を重ねることと、練習したら人にチェックしてもらうことを意識しています。
僕は技術習得に時間がかかるタイプだと自負しているので、「数をこなさなければ」とがむしゃらに練習を重ねたのですが、技術がまったく上達しない期間が続きました。その件を先輩に相談したところ「完成した後、カットできる人にチェックしてもらっている?」と質問されたのです。
練習からチェックまでをすべてひとりでやってしまっていたので、できていない部分に気づけていなかったということを、そのとき初めて自覚しました。以降、練習量を確保することはもちろんのこと、練習したらできる人にチェックしてもらうようにしています。
「好きなもの」を持つことは、人としての深みになる
――長田さんはどんなときにやりがいを感じますか?
お金をいただけて、しかもお客様から「ありがとう」と言ってもらえることですかね。
毎日働くことがとても楽しいですし、「なんていい仕事なんだろう」「美容師になってよかった」と思っています。先輩のアシスタントとして施術のサポートに入らせてもらったとき、「この髪色、かわいい!」と、お客様が喜んでいる瞬間を目の当たりにできるのは、本当にうれしく幸せです。
――就活を通して感じたことや学んだことを教えてください。
相手から求められているものはなにかを考え、期待されている以上のものを返すことが大切ということですね。
そのためには人よりも多く努力や工夫をする必要がありますが、「QUQU」ではそうした過程も見てもらえていると感じています。
――最後に、これから就活に挑む方へのアドバイスをお願いします。
美容でもそれ以外でもいいので、好きなものをひとつでも見つけることが大切だと思います。
自分のコアになるものを持つことは、人としての厚みや深みにもつながると思います。美容は、惰性ではできない仕事です。好きなことは、辛いとき、しんどいときに自分を支えてくれると思います。
長田さんが有名サロンに合格した3つの理由
1.その場面で何を求められているのかを冷静に分析していた
2.期待されている以上のものを見せようと心がけた
3.自分の好きなものをしっかりと理解し、スタイルに落とし込んだ
「不器用で自信がない」と話す長田さん。しかし、自分が思う弱点をカバーするための努力には目を見張るものがありました。すべてに妥協せず、全力で臨む姿は必ず誰かが見ていて、それが評価されることで未来が切り開かれるのだろうと感じました。