想いを言葉にできない「人見知り」が接客の大きな武器に!【sui ヘアデザイナー・森岡萌絵さん】#1
新たな道を切り開くとき、先輩たちはどうやって壁を乗り越えたのかを紹介するこの企画。今回はsuiのヘアデザイナー、森岡萌絵さんにお話しを伺います。
前編では極度の人見知りから美容師を目指したこと、早く美容師になりたくて高校に通いながら専門学校とのWスクールを頑張ったこと、サロンの技術試験にパスするためにアドバイスをメモしまくったことについてご紹介します。
お話しを伺ったのは…
sui ヘアデザイナー
森岡萌絵さん
三重県のあけぼの学園高等学校に進学。在学中に奈良県にあるル・クレエ橿原美容専門学校に進学し、美容の知識を通信で学ぶ。2018年に高校を卒業後、表参道にあるヘアサロン「sui」に就職。2022年12月ジュニアデザイナー、2023年6月にヘアメイクデビューを飾る。同年11月にデザイナーに昇格。
なりたい髪型も言えない人見知りが美容師になることを決意!
――森岡さんが美容師になろうと思ったのはどうしてですか?
小学生の頃から、「なりたいな」とは思っていました。なりたい気持ちがだんだん大きくなっていって、高校を受験する頃には「美容師になって東京に行くぞ!」というくらい強い気持ちになっていました。
――身近に憧れるような美容師さんがいたんですか?
特別に「この人」という方はいません。私はものすごく人見知りで、美容師さんに「こんな髪型がいい」とか「前髪はこうして欲しい」とか、まったく伝えられなかったんです。
せいぜい言えたのは、なりたい長さだけ。雑誌を読みたくても「〇〇〇を持ってきてください」って言えないほど。そんな緊張している私を気遣って、さりげなく読みたそうな雑誌を持ってきてくれる方がいたんです。伝えたいことがあっても言えない私の気持ちを読み取ってくれる大人って素敵だなぁと、子ども心に思っていました。
――小さなお客さまを大切にするヘアサロンだったんですね。
子どもの頃から、ホスピタリティのある大人になるのが目標でした。「誰かの役に立つ生き方をしたい」という気持ちと美容師になりたい想いが重なって、本格的に目指しました。
――Wスクールの道を選んだのはどうしてですか?
高校に入学したその年から、ル・クレエ橿原美容専門学校とのWスクールを認める制度になったんです。最初の1年はどんな感じなのか様子を見ていましたが、2年目からWスクールにしました。とにかく早く美容師になりたかったんです。高校と専門学校を同時に通えば2年早くデビューできます。若いときの2年の差は大きいと思っています。
――高校と専門学校とでは学ぶジャンルが違うので、大変だったでしょう?
高校は土曜と日曜はお休みでしたし、専門学校のスクーリングは夏休みなど長期のお休みだったので、そんなに辛いとは思いませんでした。学校に通いながらアルバイトもしっかりしていました(笑)。
――高校卒業したときは、まだ美容専門学校に在籍中ですよね?
そうです。2年生のときに専門学校に進学したのであと1年間残っていました。
――卒業前にsuiに就職したんですね。
卒業の見込みがあって、国家試験にパスしていないと入社試験が受けられないところがほとんどでした。でもsuiはずべての事情を分かった上で受け入れてくれました。
――数あるサロンの中からsuiを選んだ理由を教えてください。
suiの代表、冬木慎一と高校の先生が知り合いだったこともあり、suiを勧めてくれたんです。美容師をしながらヘアメイクもできること、サロン発のオリジナルメニューや商品開発などいろいろなことにチャレンジできることを教えてくれました。
当時の私は、「こんなデザインのスタイルを作りたい」というよりは、「髪をキレイにしたい」という想いの方が強かったので、髪の毛に寄り添う施術に魅力を感じてsuiに入社しました。
アドバイスはノートに書き、試験のたびに弱点を洗い出す!
――suiに入社して、専門学校の勉強もあるしサロンのカリキュラムもあるし、大変だったでしょう?
家から駅まで、駅からサロンまでずっと走っていました(笑)。1本でも早い電車に乗れれば少しでも早くサロンに着きますし、、それだけ勉強できると思っていたんです。
でも、学生時代はWスクールの他にアルバイトの掛け持ちもしていたので、社会人になって「こんなもんか~」って感じたくらいですね。
――国家試験の勉強もありますよね?
曜日ごとに「サロンのカリキュラムを勉強する日」、「国家試験の練習をする日」と計画を立てていました。サロンがお休みでも、必ず出勤して練習していました。
国家試験に関しては冬木がミリ単位で指導してくれたおかげで、試験当日はまったく緊張することなく受けることができました。
――もともと技術的なことは得意なんですか?
私は手が器用な方ではないので、人一倍、練習が必要なんです。時間があれば練習をして、スタイリストの先輩にアドバイスをもらって全部メモしてました。
月に2回ある技術テストのときも、パスしなかったときは注意を受けたことは全てメモに残していました。そのメモを見ながらできなかった部分を整理して、次の試験ではクリアできるようにさらに練習していました。
――すごいですね。それだけ熱心に練習していたら、先輩たちも応援してくれたのでは?
オープンの時間まで、みなさん支度をしたり、朝食を摂ったり、ゆっくり過ごしたかったと思います。それなのにアポイントも取らずに「チェックをお願いします!」って、私の都合を押しつけてしまって(笑)。自分がデザイナーになって思い返せば、今さらですが申し訳ないことをしていたなぁと反省しています(笑)。
――練習中や試験のときのアドバイスを書き取ったメモは、よく見直していたんですか?
言われたアドバイスをメモ帳に書き取って、家に帰ってから整理しながら清書していました。カットを練習するようになってからは「モデルの髪質は〇〇」、「ダメ出しをされたのは〇〇」という具合に、勝手にカルテを作っていました。「今日は△△ができなかったから、明日は△△をできるようにする」という目標も書いていました。
ただでさえ自分の時間が持てないアシスタント時代に、学校の課題と国家試験対策をしなければならなかった森岡さん。練習の計画を立てて、時間とメモを上手に使って乗りきった様子を教えていただきました。
後編ではストレスをどう解消したのか、デビューを控えて散財してしまったこと、作品撮りやヘアメイクの仕事を通して人脈を広げていることなどをご紹介します。
撮影/森 浩司