私の人生を変えたのは、高校時代のガソリンスタンドでのアルバイト 私の履歴書 【サロンオーナー兼プロデューサー/化粧品開発コーディネーター 東福由香理さん】#1
緑豊かで洗練された雰囲気が魅力の東京・代官山。今回は、東急東横線代官山駅から徒歩約5分の場所にあるエステサロン「Terme Felice(テルメフェリーチェ)」のオーナー・東福由香理さんにお話を伺います。
現在はTerme Feliceを営む傍ら、他サロンのプロデューサーや化粧品開発コーディネーターとしても幅広く活躍される東福さん。オーガニックコスメの先駆者としても知られています。
さぞや、昔から周りと一線を画す美容エリートだったのでは…と思いきや、東福さんのキャリアのスタートは、とても意外なところにありました。前編では、今の東福さんのルーツともいえる物語から始まり、最年少でサロンオーナーとなるまでを語っていただきます。
YUKARI’S PROFILE
- お名前
- 東福由香理
- 出身地
- 東京都豊島区
- 出身学校
- VANTAN VENUS ACADEMY 専門部 東京校 エステティックコース
- プライベートの過ごし方
- 愛犬とお出かけ
- 趣味・ハマっていること
- 乗馬、登山(時々)
- 仕事道具へのこだわりがあれば
- 「やはり素材には、特にこだわっています。特に、トレーサビリティがあることは重視していますね。また、お客様に良質なものを提供するのはもちろんですが、お店で一緒に働くスタッフも同様に大切です。お店で使う洗剤や掃除用品などといった、備品の素材にも配慮しています。手は、エステティシャンの命ですから」
「美容の職に就くこと」ではなく「経営者になること」がすべての始まり

エステサロンのオーナーをはじめ、多岐にわたる活躍を見せる東福さん。そのキャリアの原点に迫る
――早速ですが、美容に興味を持ち、美容業界の職を志すこととなったきっかけや経緯をお聞かせください。
美容やファッションに関心を持ち始めたのは、中学生くらいからかな。大体周りと同じか、ちょっと早いかも、くらいです。友達の肌の悩みなどといった話を聞くうちに興味が出て、雑誌などを買って調べたり、百貨店に足を運んだ際には美容部員の方とお話ししたりして、独学ですが知識を蓄えていきました。友人から、肌や化粧品について相談されることも多かったです。職業としての興味も、もちろんあったとは思います。
しかし、今のキャリアを歩むことになったきっかけと考えると、また違う気がするんですよね。
――どういうことですか?
そもそも、私はまず経営者になりたかったんです。じゃあどの業界で社長になるか、と考えた時に選んだのが、たまたま好きで詳しかった美容業界だった、ということです。
――始まりとしては、経営者になることが先だったのですね!
勉強でも運動でもそれ以外でも、突出したものがなかった私は何かで一番になったことがなく、自分に自信がなかったんです。中学生の終わりくらいには「このまま自信を持てない人生は嫌だ、何かで自分に自信を付けたい」と考え始めていました。
そして高校生になって始めたガソリンスタンドでのアルバイトが、私の人生を変えたんです。
――詳しく教えてください!
一言で表すと、「働くことの素晴らしさ」を知りました。頑張った分だけお客様に「ありがとう」と感謝されて、その上でお金までもらえる。仕事とは、とてもシンプルなんですよね。働くのが楽しくて、気がつけばアルバイトに明け暮れていました。
そんなある時、社会の“現実”を実感する出来事がありました。バイト先のガソリンスタンドを運営している会社の社長が、店舗へ訪問する機会があり、どんな人なんだろう?どんな話をするのだろう?と楽しみにしていました。
ところが、現実はアルバイトの一人である私など知るはずもなく、目の前を素通りされてしまったんです。当時の私は、これに本当に衝撃を受けました。
なぜなら学校では、初めて会った先生でも生徒の名前をきちんと覚えてくれますよね。校内ですれ違ったら、名前を呼んで挨拶してくれる。高校生の私にはそれが当たり前の感覚でした。だから、社長がいらっしゃっても同様に、名前を呼んで挨拶してくれると思っていたんです。社長ってどんな人なんだろう、という期待感もありました。
高校1年生にして、ガソリンスタンドの物販売上で1位を達成!

東福さんの人生を変えたという、ガソリンスタンドのアルバイト。まだまだ興味深いお話が続く
――学校と社会との違いですね…!
これがめちゃくちゃ悔しくて、そして思いました。「社長に興味を持ってもらうには、名前を覚えてもらうには、どうしたらいいんだろう?」って。
考えた末に出した結論は、数字すなわち売り上げを上げること。ガソリンスタンドは燃料油であるガソリンや軽油などの他に、実は洗車やオイル交換タイヤやバッテリーなどといった車の部品類や、走行機能をサポートする様々な商品の販売も行っています。これらの販促を、私はものすごく頑張ったんです。
そして気がつけば、当時全国で展開していた約20店舗くらいの中で、物販売上1位を獲っていました。
――高校1年生にして、ですか?
はい。社長から直々に、FAXで全店舗に周知されました。「高校1年生の東福由香理さんが、物販売上で1位になりました」といった感じに。これが私の、人生で初めての成功体験です。
――周りの大人の方々は、衝撃だったでしょうね…!
そうですね。ここで同時に、トップの成績を継続することの難しさや、周囲の大人たちのすごさも知りました。焦った大人たちがグッと追い上げてくるのも経験して、私もさらに努力しましたね。
結果的に、社長に名前も覚えてもらえて、直接お話しすることもできるようになったので、当初の目的は達成できました。
また、私はアルバイトでしたが、某ガソリンスタンド全体の集会にも参加させてもらっていました。そこには全国から集められた社長をはじめ幹部の方々たちもいました。
そこで、アルバイトをしてから疑問だったことを質問させてもらったことがあります。社長はほとんど休みなく働いており、その姿がとても楽しそうなんです。当時の私は、大人はあまり仕事を楽しんでいないイメージがあり、だから「休まなくて大丈夫なのか?」とお聞きしました。そうしたら「仕事は楽しいからね!」と。この言葉を聞いた瞬間、私も「社長になろう」って心から強く決めたんです。そしてその舞台は、自分が好きで興味関心の高かった美容業界にしよう、と。
――ガソリンスタンドでのアルバイトが、すべての始まりだったんですね。
今までのキャリアには、この時の経験や学んだことがすべて詰まっています。いわば、私の原点ですね。
目標に向かって進む日々。ひょんなことから、若くしてサロン経営者に?!

自分の軸は一貫して「経営者になること」だったという東福さん。そのため、初めて勤めた先のエステサロンでは苦労することも
――業界を美容関係に定められたということは、高校卒業後は専門学校に進学されたのでしょうか?
はい。VANTAN(バンタン)が運営する美容の専門学校に進学し、エステティックコースで学びました。
高校生の頃のアルバイトで周囲より資金はあったと思いますが、起業することを考えたらたかが知れています。そこで初期投資を抑えられそうなヘアメイクかエステの分野に目星をつけて、最終的にエステを選びました。
――学生時代は、いかがでしたか?
先生に恵まれたな、と思っていましたね。独立するなら、現実的に考えて20代の後半くらいになるのかなと考えていました。しかしそれを先生に話したら「自分次第で、もっと早く独立できるよ」と言ってくださって、かなり励まされましたね。
また、「アロマティックコスメ」――今で言う、オーガニックコスメとの出会えたこともよかったです。フランスから輸入された質の高い化粧品を、ありがたいことに教材として扱ってくれていました。ここでオーガニックコスメの素晴らしさに触れることができたのは、その後の私のキャリアに大いに役立ちました。
――卒業後は、やはりエステサロンに勤められたのですか?
はい。アルバイト契約ですが、エステサロンに就職しました。
しかし勤め始めた直後、やる気がありすぎて空回ってしまったり、怒られることも多い新人時代でした…。その頃サロンにはマッサージ業界に精通している顧問が全体ミーティングにいらっしゃっていて、出来の悪い私はその顧問と個人面談をするという緊張感に包まれた面談がありました。
しかし、これは私にとってターニングポイントとなりました。
――一見ピンチのようですが…。
この個人面談の際に、顧問の方が「夢や目標はあるのか?」と聞いてくださったので、「経営者になりたい」という自分の夢と仕事についての考えなどのお話しをしたんです。それを聞いた顧問が「君は早く独立したほうがいい」と言ってくださいました。
そしてサロン勤務から半年くらいした頃、その顧問の方から独立の機会、自分のエステサロンを持つチャンスをいただけたんです!
――たった半年で?!
そうなんです。お台場にある商業施設・デックス東京ビーチで展開するエステサロンを任せるので、やってみないかとお話をいただきました。当時の私はまだ20か21歳という若さでしたが、二つ返事で「やります」と即答していましたね。
こうして、驚くべき若さでエステサロンの運営を任されることに。私のサロンオーナーとしてのキャリアは、ここから始まることになります。

代官山にある東福さんのサロン「Terme Felice」の内観。7階にあり周囲が抜けていることから、室内の大窓からは心地よい陽光が差し込む

ゆとりある空間の待合スペース。洗練された空間と室内に漂うほのかにいい香りが、訪れる人たちの心身を解きほぐす
高校生でのアルバイトをきっかけに働くことの素晴らしさや社会の厳しさ、そして人生初の成功体験をも経験した東福さん。現在のキャリアの原点は「経営者になりたい」という想いが始まりでした。そのステージとして選んだのが、美容業界のエステの分野。専門学校卒業後に勤務したエステサロンでのピンチをチャンスに変え、なんと弱冠20〜21歳にして、サロンオーナーとしてのキャリアをスタートさせる機会をつかみます。後編では独立後のキャリアと、そこからさらに活躍の幅を広げていく姿をお伝えします。
Salon Data
住所:東京都渋谷区代官山町7−8-701 ドッケン代官山701
・公式LINE
・公式Online Shop「Bio Time」
撮影/内田 龍
取材・文/勝島春奈