「大丈夫です」は、大丈夫ではありません!接客で求められる【言葉づかい&話し方セミナー #3】

何気なく口にしている言葉、あるいは気を使ったつもりの言葉のなかには、その言葉の本来の意味からそれて間違った使い方をしていたり、若い世代の間だけに通用するものだったりするものがあります。今回は、その代表格である「大丈夫」「大丈夫です」を取り上げます。

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YES、NO、どっちなの?

「大丈夫」という言葉の本来の意味には、「立派な男子」(この場合は「だいじょうふ」と読みます)のほかに、「間違いなく確かなさま」、「危なげがなく安心できるさま」などがあります。日常会話で多く使われているのは、後者の意味での「大丈夫」。

たとえば、
Aさん:「ケガの具合は、どう?」
Bさん:「大丈夫。大したことないよ」
というやりとりだったり、

Cさん:「この仕事、Aさんに任せても大丈夫かな?
Dさん:「Aさんなら、間違いなくきっちりやってくれるよ」
というように。

ところが最近、これらとは違った意味で「大丈夫」が使われるようになって、一部で混乱を招いているようです。

言葉づかい&話し方セミナー

ある飲食店の店主は、こう語ります。
「先日、『◯日△時に5人で予約したい』という電話をいただきました。喫煙可能かと尋ねられたので、当店は禁煙だとお伝えすると『そうですか』との反応。そこで『ご予約、どういたしましょう』とうかがうと『そうですね、大丈夫です』とのお答え。ところが、お約束の時間が過ぎてもどなたもいらっしゃらない。5人分の食材がムダになってしまいました」

店主は、電話主の「そうですね、大丈夫です」を、「禁煙だということを承知して、予約する」と受け止めたそうです。

「でも、その後、若い世代の人たちと話をするうち、どうやら『大丈夫です』はNOという意味、つまり『予約はしません』という意味だったのだということを知りました。いやあ、だったらそう言ってくだされば……」

今、これを読んでいて、「何がいけないの?」と不思議に思う人もいるかもしれません。飲食店の店主が言うように、若い世代の間では「NO」の意味で「大丈夫です」が使われることが多いようです。

言葉の専門家によれば、「大丈夫です、という言葉を使う意図は理解できる」とのこと。断る場合、相手を傷つけてしまうのを恐れて婉曲的な表現として「大丈夫です」が使われるようになったといいます。

「明鏡国語辞典」にも、今どきの俗語として「相手の勧誘などを遠回しに拒否する言葉」と記されています。ただし、注釈に「主に若者が使う」とあり、やはり一般的ではない様子。とくに目上の人に対して使うと、かえって相手に迷惑をかけてしまいかねません。

「NO」の場合は「大丈夫です」ではなく、「要りません」「結構です」「お断りします」……などなど、相手にきちんと真意が伝わるような言葉を使いましょう。

こんな間違いあるある!「大丈夫です」NG集

「NO」の意味での「大丈夫です」は、場合によってはギリギリセーフ。でも、明らかに使い方が間違っているケースがあります。

接客時に、つい使ってしまいがちな「大丈夫」について、チェックしていきましょう。

言葉づかい&話し方セミナー

「お荷物をお預かりしなくても大丈夫ですか?」
サロンにこられたお客様に対して、「お荷物をお預かりしましょうか?」という意味でこう言っているのでしょう。ただ、聞きようによっては「お預かりしなくてもいいですよね?」と受け取られかねません。
→GOOD「お荷物をお預かりしましょうか?」あるいは「お荷物、いかがなさいますか?」でも。

「お手洗いのほうは、大丈夫ですか?」
お客様がカラーリングやパーマのほか、時間のかかる施術に入る前、「しばらくの間、身動きを取りにくくなるので、もしお手洗いに行くなら今のうちに」と気を利かせたこと自体は◯です。でも、やはり「大丈夫ですか?」では、相手に意味が伝わりにくい。また、「〜のほう」は、2つあるうちの1つを指す場合に使う言い方なので、ここでは不要です。
→GOOD「お手洗いをお使いになりますか?」

「お茶は大丈夫ですか?」
お客様にお待ちいただいている間、お茶やお菓子をお出しするサービスを行っているサロンも増えているようです。お客様のなかには「今は、いらない」という人もいるかもしれないので、お出しする前にお茶やお菓子を召し上がるかどうか確認するのは◯。「大丈夫ですか?」ではなく、まずは「召し上がりますか?」と尋ねましょう。なお、カップ(コップ)が空いていたら、「おかわりをお持ちしましょうか?」とうかがってみるのも◯です。
→GOOD「お茶を召し上がりますか?」あるいは「お茶をお持ちしましょうか?」でも。

「レシート(領収書)は大丈夫でしょうか?」
「レシートが大丈夫」というのは、意味不明です。お客様がレシートを必要としているかどうかを尋ねる場合は、「いかがなさいますか?」あるいは「いかがいたしましょう」、「ご入用ですか?」が正解です。
→GOOD「レシート(領収書)はいかがなさいますか?」あるいは「レシート(領収書)はご入用ですか?」でも。

お客様のために、よかれと思って口にした言葉でも、相手にその思いが通じず、かえって失礼にあたったらとても残念。「大丈夫」は、何気なく使ってしまいがちなだけに注意が必要ですね。

参考文献

「今どきの『大丈夫です』ーその使用実態(2013)〜『大丈夫です』は若者ことばか?〜」明海大学・山下早代子/「明海日本語」第18号増刊(2013.11)
「日本人が『9割間違える』日本語」本郷陽二/PHP文庫
「『そのまま使える』敬語ハンドブック できる人の『この言葉づかい』『この話し方』」鹿島しのぶ編著/知的生き方文庫(三笠書房)

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