藤村 岳 interview#1:女性が男の美容を語ることに違和感が……。

徐々にではありますが、男性美容の需要が増えています。その中において、牽引役の一人として活躍しているのが男性美容研究家の藤村岳さん。この分野が注目されてから始めたのではなく、10年以上も前から地道に活動を続けてきた人物です。そんな藤村さんに、なぜ今の仕事を選んだのかをお伺いしました。

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やりたいことを口にする。そうすればまわりが覚えてくれる

――藤村さんは唯一と言っていい男性美容研究家としてご活躍されております。男性美容の現状はどのようなものでしょうか?
「男性の美容に対する意識は年々高まっていて、それの裏付けとして微増ではありますが、男性化粧品の売り上げが毎年右肩上がりを続けています」

――もともと男性美容の仕事をしたいというお考えを持ちだったのですか?
「それまでは出版社で編集の仕事をしていました。編集者といっても結局は会社員なので、長くいると管理する側になってしまう。できれば現場にいたかったし、もともと独立志向が強かったので、昇進したばかりのときに独立しました。もう12、13年前の話しになります。あのときは周囲の方々に迷惑をかけたと、今となって反省しています」

――編集というと、男性ファッションやビューティの雑誌ですか?
「最初はハーブやアロマなどの植物関連の出版社で専門雑誌や図鑑などを作っていて、そのあと生活情報誌に転職し、少し毛色の違う仕事をしていました。独立したあと、何をやろうかと考えたときに、男性ファッション誌だなと思っていたんです。だけど服、靴、時計はあまりにも先人が多すぎて勝てない。それでまわりを見回してみたら、男性の美容について取材したり記事を書いている男性がいないということが分かったんです。基本、女性ばかりで。女性のライターさんが書く男性ビューティの記事を読み、間違ってはいないんだけど、しっくりも来なかった。やはり、どこかで男性の気持ちが分かっていないと感じたんです。だったら自分がやろうと思いました」

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――男性美容についてゼロからの出発となると、それはそれで大変だと思うのですが。
「植物の図鑑を作っていたことが役に立ちました。化粧品に使う精油やハーブの知識は、図鑑を作っているときにある程度身についていたので、男性美容をやろうと思っても、自然と入ることができました。例えば、『この化粧水にはフランキンセンスが入っているんですよ』と言われても、フランキンセンスにはこういう作用があるからこんな肌質の人には確かにいいよねと、すんなり理解することができたんです。『何、それ?』から入らなくて済んだというのは大きなアドバンテージだったと思います」

――それまでスキンケアに興味はおありだったんでしょうか?
「普通だったと思います。高校や大学時代はガンガン日焼けしていましたよ(笑)。その頃は紫外線が悪いというのを知らなかったので。もちろん分かってからはしていませんが。普通のレベルだったからこそ、頑なにスキンケアをやりたくないと言っている人たちの気持ちも分かるんです。面倒くさいですからね。顔を洗ったあとになぜ保湿をしないといけないのか、どうして紫外線ケアをしないとダメなのか、その理屈は、原稿を書く際には最低限必要なんですけど、その先の『やりたくない』『面倒くさい』という気持ちまで理解していないと、心に届く文章は書けないし、言っていることに対しての説得力はないと思うんです」

――独立して、どのように男性美容の仕事を増やしていったのですか?
「すぐに雑誌で原稿を書けるなんて思ってはいなかったので、まずは無理をしない。でも、無理をしないのと何もしないのとは別なので、目標をいくつか立てました。例えば、35歳までに自分の名前がついた連載を持つとか、40歳までに商品のプロデュースをするとか、そういう大目標を立て、それを実現するための中・小目標を細かく作って実行していきました。あとは、こういうことをやりたいというのを常にまわりにアピールしていましたね」

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――目標を口にするということはやはり大切ですか?
「口頭じゃなくてもSNSでもかまわないと思います。まわりが『あいつ、こういうことをやりたいんだ』と分かってもらえることが重要なので。僕自身はまだ黎明期のTwitterで、とある広告会社の社長さんと知り合い、お花見に誘われてお会いしたときに『男性美容の分野で頑張りたいと思っています』と話すことで美容誌の編集長や、大手ビューティサイトのCFOを紹介していただきました。また、前の会社でいっしょだった親友の編集者が、男性ファッション誌も出している出版社に就職していて、彼女にも伝えることでやりたい雑誌の編集者を紹介してもらったりもしました。その後、何度か原稿を任せられるようになり、目標の35歳前に連載を持てるまでになりました。そしてそのページを持って、他の出版社に営業に行きました。美容業界のことを深く知るために直接メーカーさんに電話をし、お会いして教えてもらったこともありましたよ」

――無理をせずと言いながらも、積極的ですね。
「コツコツという感じですかね。そうやって現状打破を求めてやり続けたことが良かったと思います。ちなみに40歳前に商品をプロデュースすることもできました。今ふり返ると、ラッキーだった気がします(笑)」

Profile

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藤村 岳(ふじむら がく)さん

男性美容研究家

出身地・東京都

大学卒業後、植物関連の雑誌・書籍の編集を行い、ハーブやアロマテラピーの知識を得る。その後、『オレンジページ』に転職し、料理、健康などの生活情報誌に携わる。そんな中、男性が読む美容記事を、ヒゲを剃らない女性美容ライターが書くことに違和感を覚えて、男性美容の道に進む。シェービングを中心に据えた独自の男性美容理論を打ち立て、男性美容のパイオニアとして活動中。総合情報サイト『All About』にて「メンズコスメ」のガイドも務めている。『Safari』『UOMO』『GOETHE』などの雑誌でも連載し、数々のテレビ番組やラジオなどの出演のほか、講演・イベントなども行う。
また、コンサルタントとしてコスメの開発にも携わる。その他、男性用コスメのマーケティングも行っている。国内外のスパを訪れ、男性が楽しめるスパ・エステについても造詣が深い。

HP http://danbiken.net/

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