先輩美容師から託された今のサロン『髪匠庵』
21年のキャリアを持つ岡田さんが独立したのは今から10年前。いちスタイリストからオーナーになって店を切り盛りするようになって以降の心境や考え方の変化、新たな取り組みをはじめ、自由な発想で自身の店をより良い方向へと変えていくための秘訣を伺っていきましょう。
縁が紡いだ独立までの道のり
――実際に独立してオーナースタイリストになったきっかけをお教えください。
「実は、オーナーになる以前から髪匠庵のスタッフとして働いていました。10年前にその当時のオーナーが他に店を出すのでここを引き継いでくれないかというオファーがあり、じゃあやってみようということで(笑)。前オーナーはこの店をオープンする以前からの知り合いで、その人の元でカットの講習を受けた経験もあり、僕自身にとって髪匠庵はオープニングから携わった店でもあります。古民家を一緒にリノベーションして、オープニングスタッフとして働いていたので店に対する思いは強かったですね。僕がオーナーになってからも店名を変えず、だから以前からのお客様も続いて来て下さっています。今までスタッフとして働いていた店のオーナーになったことで、気持ち的な変化はないものの、やはり経営など美容以外の分野の勉強が必須だと感じるようになりました。そのため、現在は月に1度東京で開催されているマーケティングセミナーや講習会に通っています。以前は美容のことだけ考えていれば良かったですが、今ではいかに店を良くしていくか、スタッフにより良い環境を提供できるか、も仕事の一つです。」
時間は作るもの、がモットー
――サロンワークやセミナーへの参加、スタッフ教育などご多忙な中でも趣味の民族楽器講師などをされていますが、そのモチベーションはどこから?
「僕はあまり忙しいとは言いたくない人間で、時間は自分で作るものだと思っています。当店は僕とスタッフ2名のサロンなので店のことを把握しやすいですし、何か新しい取り組みをやろうと思えば比較的挑戦しやすい環境にある。今は毎週木曜日の朝をレッスンとミーティングの時間に充てていますが、2人なので気付いたことは気付いた時にすぐ伝えられる。これは小規模サロンの利点ではないでしょうか。また、僕にとってのモチベーションはお客様の笑顔や自分が楽しいと思える様々なことで、常に色々な経験をしたいというのが原動力。美容以外のことを学んだり体験したりするのは自身の糧にもなりますし、お客様との会話の幅も広がります。今後は休みを増やしてスタッフが自分の世界を広げられる工夫をしたり、様々なイベントを開催したりしていきたいですね。うちの奥さんが国際薬膳師の資格を持っているので、今も薬膳エステというヘアトリートメントをお店で実施していますが、今後はそういった健康面や髪を健やかに保つメニューを増やしていきたいとも考えています。」
一緒に働く、趣味をもった人を募集中
――現在アシスタントさんを募集されていますが、どんな人なら一緒に働きたいとお考えですか?
「明るくて声が通る人、そして趣味のある人ですね。美容以外にもアンテナを張って人生を楽しめるような人が理想です。当店はアットホームな店で、お客様も以前からの顧客が中心のため、ゲストの成長を見守りながら一緒に成長していく喜びを味わえるのが魅力です。また、施術ごとにスタッフが変わることがないので、ひとりひとりのお客様と向き合えるのも特色と言えます。当店では環境にも髪にも優しい店であることを大切にしていて、余ったカラー剤はそのまま流さず拭き取ってゴミに出すなど、できる範囲でのエコロジーも積極的。アシスタントの期間は2年ですが、その間にしっかりと学び、マンツーマンで丁寧な施術をできるようなスタッフ教育を行っています。」
実際に、2年のアシスタント期間を経て今年スタイリストデビューから6年目になるスタッフの三原さんも「大規模サロンのような分業スタイルではなく、一人のお客様を最後まで仕上げられるのがこのお店の魅力です」と語るように、最初から最後までを担えるのが髪匠庵の大きなメリット。これはスタッフにとってだけでなく、ゲストにとっても安心感があり、長年にわたって愛される一因になっているのだと感じます。古くて新しい中崎町という街にあり、その街に根付いてきたヘアサロンは、これからどんな進化を遂げるのでしょうか。
profile
オーナースタイリスト
岡田俊一郎さん
大阪出身。オーストラリアやアジア各国などを広く旅し、民族楽器ディジュリドゥの講師としても活躍中。サロンワークの傍らディジュリドゥのライブも月に1~2回程度大阪で開催するなど、スタイリスト業のみならずアーティストとしても精力的に活動する。