パーソナルトレーナーとして独立開業したい! 個人ジムやクラブを開業するときに必要な手続きとは?
パーソナルトレーナーとしてそれなりのキャリアを積んだ人にとって、さらなる高みを目指すために用意されたステージが「独立開業」ではないでしょうか。
社員として働く人のなかには、そこを目指すべき最後のゴールとして見据えつつ、日々の業務に励む人もいることでしょう。
また自身でスタジオを構えてしまえば、得られた収益をどのように配分するかといった、お金の流れを自由に決めることができるようになります。
もちろん、経営がうまくいかなければ苦しい立場に追い込まれますが、それは経営者すべてに当てはまることです。
会社を経営することは、パーソナルトレーナーとしての才能とはまた別の能力が要求されるでしょう。
しかし、チャレンジすることで、さらなる収入を得ることができるのも、また事実です。
今回はパーソナルトレーナーとして独立開業をするうえで、必要となる手続きについて考えてみましょう。
独立開業に必要な2つの手続き

パーソナルトレーナーとして実績を積んだ人のなかには、独立をしてジムやクラブを運営する人もいます。
そのような独立開業にあたっては、決められた手続きを踏まえなければ、個人事業主として認められません。
すなわち「開業届」「個人事業開始申告書」の提出といった2つの手続きが必要になります。
それぞれの書類の提出先や、書類を作成するうえで注意すべきポイントなどを見ていきましょう。
①開業届|開業したら提出
開業したら、まず提出しなくてはならない書類が開業届です。個人事業主であることを宣言することで、その所得に応じて税金がかかってきます。
事業内容や屋号を提出することで、会社としての銀行口座を作ることができますし、それにともない融資などを受けることができるようになります。
いつまでに、どこへ提出する?
開業届は、開業してから1か月以内に、納税地の税務署に提出しなくてはなりません。
納税地というのは、原則的には住民票がある場所ですが、現在住んでいる場所と住民票の住所が異なる場合は、どちらか片方に納税することになります。
また、事務所や事業所を構えている所在地を納税地とすることも可能になっています。いずれにせよ、所轄の税務署に書類を提出するようにしましょう。
【ポイントを解説】開業届の書き方
納税先となる税務署を記載し、開業した日は書類の提出日を書くようにしましょう。
書類の提出は開業から1カ月以内と決められていますが、事業開始の定義はないため、提出日を開業日としておけば問題ありません。
住所地、事業所、氏名、職業、屋号と書き進めていきましょう。職業欄はどんな仕事かわかればよいので、その範囲内で自由に書くようにしましょう。
届け出の区分では、新規開業の場合「開業」に丸をしましょう。事業の概要欄では、職業の欄で記載した内容をより具体的に記載します。
②個人事業開始申告書
開業届と同時に提出しなくてはならないのが「個人事業開始申告書」です。提出する際は1部持ち帰る用にコピーを取っておき、受領のハンコを押してもらってください。
口座を開設する際に証明書類として求められることがあるので、忘れないようにしましょう。
個人事業税は必ず発生するもの?
開業届が国税の納付を宣誓するものであることに対し、事業開始申告書は各種地方税の納付を宣誓するためのものです。
地方税とはすなわち、住民税と事業税のことを意味します。
個人事業税は、法律で定められた70種類の業種だけにかかる税金ですが、法定の業種に当たるかどうかは、事業の実態で判断されます。
業種的に当てはまるかどうかわからない場合は、事業所がある都道府県にあらかじめ問い合わせることがおすすめです。
いつまでに、どこへ提出する?
提出期限は、開業届と同じく、事業開始日から1カ月以内となっています。期限に遅れてもとくに罰則はありませんが、その場合は担当課に相談しましょう。
書類は同じものを2枚用意し、1枚を都道府県税事務所に、もう1枚を市町村の役所に提出します。
【ポイントを解説】個人事業開始申告書の書き方
基本的に所在地や屋号といった空欄を埋めていくだけで、とくに難しい作業を必要としませんので大きな心配はありません。
しかし、「事業内容」の欄は詳しく書く必要がありますので、用意をしておくことをおすすめします。
青色申告をしたいなら申請が必要!

個人事業の確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
独立開業を果たした際には、青色申告での確定申告をすることをおすすめします。
【おさらい】青色申告とは?
青色申告は白色申告に比べて、より詳細な帳簿付けをする必要がある申告方法です。
白色申告に比べて特別控除が受けられたり、専従者給与を必要経費として計上できるなどの長所があります。
青色申告のメリット・デメリット
仮に自宅をスタジオにして運営する場合、家事上の経費のうち、業務に必要であるとされた部分を記録として明らかにすることで、それらを必要経費として計上できます。
また、正規の簿記の原則に従った記録と、賃借対照表・損益計算書の提出により、最大で65万円の特別控除が受けられ、節税効果も見込めるでしょう。
さらに、ある年度の確定申告で赤字が出た場合、その赤字分を翌年度から3年間繰り越すことができ、黒字の年の所得から差し引くことができます。
一方、デメリットとしては下記のようなことが挙げられます。
①青色申告には申請が必要であること
②正規の簿記の原則に従った会計処理が必要であること
③書類の不備があれば許可が取り消されること
実際にやってみると手間もかかるのは事実ですので、お金を払って税理士にお願いするというのもひとつの手です。
もちろん、税理士にかかった費用も経費にあてることができます。
青色申告承認申請書を提出しよう!
開業届の記入欄には、青色申告をするかしないかを決める記入欄があります。青色申告を予定している人は、その欄で「有」を選択しなければなりません。
そのうえで、税務署に「青色承認申請書」という書類を提出すれば、青色申告が認められます。
いつまでに、どこへ提出する?
通常は、毎年3月15日までに提出することで、4月からの年度に関して青色申告が認められます。
年度の途中で開業した場合は、事業開始日から2カ月以内に提出してください。
【ポイントを解説】青色申告承認申請書の書き方
書類は、国税庁のWebサイトからダウンロードをして、PDFに直接入力することで作成できます。
納税先の税務署を記入し、住所や氏名、いつから青色申告を始めるのか、事業所の住所などを記入しましょう。また、年の途中で事業を始めた人のみ、その日付を記入します。
それに加え所得の種類欄には、「事業所得」に印を入れましょう。次に今まで青色申告をしたことがあるのか尋ねられる欄がありますので「無」に印を入れましょう。
今回は独立開業がテーマですので、相続したかどうかを尋ねられる欄には「無」に印を入れます。
家族も一緒に働く場合|青色事業専従者給与に関する届出
青色申告をした人は「青色事業専従者給与に関する届け出」を提出することで、家族に支払った給与を経費として計上することができます。
これにより、所得が大きく変わってくるため、節税効果も期待できます。
いつまでに、どこへ提出する?
「青色承認申請書」と同じく、青色申告を適用したい年度の3月15日まで、または年度の途中で事業を開始した場合は、その日付から2カ月以内に、税務署に提出しましょう。
【ポイントを解説】青色事業専従者給与に関する届出の書き方
対象となる家族(専従者)の氏名、事業に従事している期間、仕事の内容を書き、従事の程度として「平日の毎日〇時間」などを記入します。
専従者が資格を持っているならば、その資格名を書き、支給期と金額は「毎月○日」「○○万円」と具体的な数字を記入します。
ボーナスも同じく具体的な数字で書き、昇給の基準欄では、「使用人の昇給基準と同じ」などと記載しましょう。
出典元:国税庁(http://www.nta.go.jp/)
独立開業には必須の手続きもある|忘れないように注意しよう
パーソナルトレーナーとして独立開業をするにあたって、必要な手続きについて記載してきました。
開業届と個人事業開始申告書の提出により、個人事業主として認められることになりますが、その時点で会社の経営者としての目線を持つことが必須となります。
経営者の立場に立つことで、これまでとは違った物事のとらえ方が要求される場面もあるでしょう。
また、独立開業をして収益を上げるということは、納税の義務が課されることを意味します。
そのため、青色申告を用いた確定申告により、課税対策などを講じることで、より安定した事業運営が行えることを抑えておきましょう。
いちトレーナーから経営者へとステップアップした先には、未経験の領域が広がっているはずです。それらの景色をより良いものにするためにも、そのときどきに合わせて必要な対策ができるように心がけていきましょう。