【エステ業界動向】大手サロンの動向から見るエステ集客最前線、今後のサロンブランディングの課題

トレンドの動きが早いと言われるエステティック業界ですが、他の業界に比べて遅れをとりやすいのが「集客」の動きです。美容業界は大手が少なく、個人サロンが非常に多いため、横のつながりがない分情報不足になりやすい傾向にあります。

そのため集客に対するアンテナがあまり張られていなかったり、広告費自体をそこまでかけられず、集客に遅れをとっています。動きが早い業界において、情報の遅れや集客の遅れは店舗の存続において命取りになってきます。

大手サロンの集客動向を中心に、今やるべき集客と今後サロンブランディングについて、船井総合研究所でエステサロン専門のコンサルタントを務める、楠本文哉(くすもとふみや)さんにお話を伺ってきました。

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重要なのは立地の取捨選択


エステサロンは無資格で参入できることもあり非常に競合も多く常に飽和状態を保っています。だいたい5,000~5,800件程度の事業所数で毎年推移しています。毎年すごい数のサロンが生まれているのですが、倒産も同じくらい出てしまっている厳しい業界です。

新規オープンしたエステサロンが一体どの程度存続できているのかご存知でしょうか?実は、オープンして1年以内に半分以上のサロンは閉店に追い込まれてしまうのです。

エステ業界で1年以内に倒産する企業が60%と言われており、10年生存するサロンはたった10%になります。

この10%に入れずに倒産してしまう企業の中に何店舗もチェーン店をもつようなサロンももちろん含まれています。最近、大手のエステサロンの目立つ動きとしては既存サロンの見直しが進んでいます。既存サロンの中でも、特に見直しが入っているのが地方都市の店舗です。

原因としては、都心部への人材の集中により、働き手がいなくなってしまったことが考えられます。

10年前くらいまで地方都市のエステの在り方としては郊外にドンと大型店舗を構えるサロンが主流のやり方だったのですが、最近は地方のサロンについてはかなり規模が縮小している傾向にあります。20万人都市程度の規模で地域一番店と呼ばれ月に800~1,000万の売上をあげていたサロンが、人材の不足が進むごとに顧客の回転数も落ち、売上が目減りしていっている状況です。

政府の方でも地方創生を進めていたように、都心部と地方の格差というのが年々開きつつあります。

政府調査データから読み解く若者の都心一極集中傾向

格差が開いてしまった原因としては、仕事の選択肢の多さや賃金の高さが挙げられますが、特に若者については首都圏で働きたいという願望が強い傾向にあります。

内閣官房の調査によると、東京圏以外の出身者が東京都で暮らし始めた目的は、

「東京に進学したい大学や専門学校があったから」(37.0%)が最も高く、
「新しい生活を始めたいと思ったから」
「色々なチャンスがあると思ったから」
「都会に憧れがあったから」

と続きます。学生の段階で東京や大都市に出たい!という思いを強く持つ若者は多いと言えます。

男女別で見ると、女性では、「地元や親元を離れたかったから」、「地元に進学したい大学や専門学校がなかったから」の割合が男性よりも高い のが特徴。若い女性は、進学だけでなく、地元に息苦しさを感じて移動している可能性が考えられる。

東京圏転入者が現在(東京圏)の仕事を選ぶにあたって重視したことは、男女ともに「給与水準」や「自分の関心に近い仕事ができること」が6割超を占めています。また、男性では「企業の将来性」、女性では「一都三県で仕事をすること」とする割合も高いです。女性では、さらに「育児・介護の 制度が充実していること」も一定程度重視しています。

都心で居心地の良い職場を見つけた場合、やめない傾向にあります。刺激が多く、便利な都会は一度慣れてしまうと郊外が物足りなくなる部分もあるのでしょう。それを物語っているのが、東京圏への転入と転出の比較です。

男性は転勤の影響もあるかと思いますが、出たり入ったりが発生しています。それに対し、女性の場合は転出者数が極端に少なくなっています。そのため、女性の方が郊外から都心部に出てしまった場合、戻りにくいといえるでしょう。

エステサロンの場合、大部分が女性をターゲットとしているので、ターゲット顧客も減り、さらに働き手までもが見つかりにくいという現状になっています。そして、都心部と違い、郊外の方が女性が家庭に入るのが早い傾向にあります。

そして、結婚の平均初婚年齢は男性が31.1歳、女性が29.4歳です。結婚の平均年齢は年々上がりつつあるものの、郊外の場合は都心に比べて結婚も早い傾向にあるので、20代前半で結婚・出産してしまう女性も多くなります。そうすると、ただでさえ女性の人数が少なくなった上、フルタイムで働ける人材が少なくなっていると言えます。

そもそも、エステサロン業界においては需要と供給が合致していないんです。勤務時間は10~20時、土日含む週5働く前提のような募集のサロンが非常に目立ちます。それが都心の店舗なら金額提示でなんとか雇用にこぎつけられますが、地方郊外の店舗だったりすると、もはや結婚もして子供もいてという方が多く、応募に至らないということになってしまいます。

どの業界でも深刻な問題となっている人材不足が郊外では大きな打撃になっています。

大手エステサロンは衰退した郊外店舗をいち早く見切っている

大手サロンの場合、全国の店舗で比較して新規顧客数や雇用の状況が見えるため、個人サロンよりも全体的なジャッジを早くしなければなりません。最近の大手サロンで多く見られているのは、地方の衰退店の閉店や近隣店舗同士での統合です。

大手サロンの傾向として、全体的に店舗は減少傾向にあります。特に郊外店を占めて首都圏集中型の経営に移行するサロンが目立ちます。会員の囲いこみや会員のスライドにシフトし、近隣店舗に移行するという形で、販促費用の使い方を変えています。

不採算店舗は、集客でなんとかなる場合もありますが、大手サロンの場合は周辺にも同じ系列店を持っていることも多く、集客でテコ入れするよりも早く足切りをすることで損益を最小限にとどめて、収益性を重視する戦略をとる企業も多くあると言えます。

現在オープンしている個人店に関しては、大手が撤退するエリアは大手ですらも苦戦しているということなので、営業時間の工夫や、結婚後の子持ちの女性も働きやすいような環境で差別化を図る工夫が必要でしょう。例えばママ主体のサロンで収益をあげている店舗もあるそうです。

ママさんサロンは17時までの営業で、18時には店を閉めてみんなで子供を迎えに行くというスタイルをとっています。その店舗は客単価を一般的なサロンの1.2倍~1.5倍くらいとっていて、営業時間は短くても売上的には問題ないんです。時間の単価さえきちんととれていれば売上としては夜の営業がなくても十分に成り立っています。そして、求人はもちろんすぐに応募が来ます。

人材というのはサロンを経営する上でもっとも大切な要素です。現状郊外で人材の確保に苦戦しているサロンさんは、もっとワーキングマザーの活用ができる体制を作っていかないといけません。

長く営業時間を作って売上をあげるよりも、いかに効率よく売上を上げられるかという点を軸に考えていくことで1年でつぶれないサロン作りが叶うと言えます。新規オープンを考えている場合は、そのエリアで大手の撤退がないか、というのは集客しやすさのひとつの目安になるといえるでしょう。

飽きさせないサロン作り、リブランディングの重要性


大手サロンの郊外衰退エリアの撤退を先述しましたが、もちろんただつぶしているわけではありません。大手サロンの場合は膨大な顧客データと資本力を持っています。

例えばA店をつぶす場合、10キロ先の隣市B店に人が流れるような顧客誘導をします。まず、A店の既存顧客については、つぶれるという言い方をせずにA店とB店が統合するという情報を流します。そしてB店に関しては、リニューアルオープンという形をとるのです。リニューアルオープンについては、B店の顧客や休眠客、近隣の住民にもメールやはがきでダイレクトメールを送ります。

やはり人はお得感のあるキャンペーンを見せられると行ってみようかなと思うようになるので、休眠客や新規客の来店動機になります。

大手サロンの出店ペース自体は落ちていて、今は不採算店舗を閉めることで、会員の囲いこみから会員のスライドの方式をとっています。近隣店舗に移行させることで、人材不足の問題と売上減少の問題を一緒に解決しています。今まで顧客の囲いこみに広告予算を大きく使っていましたが、店舗リニューアルによる新規メニューの追加や、新業態への着手を進めることで、今までとは違う形での新規顧客の獲得を目指しています。

10年以内でつぶれるサロンが圧倒的に多いのは、そもそもの集客もさることながら、顧客が飽きてしまう状況を作り出しているところにも原因があると言えます。よく、女性は飽きっぽい生き物なのだと言われますが、エステの場合ワンクール10回~20回程度で契約することが多いので、その10回の先にもう一度続けてもらうためにはどうするかという対策は常に考える必要があるでしょう。

特に都心部と違って郊外の方が流行が遅い傾向にあるので、「九州エリア初導入!」「雑誌で話題の○○ケア」のように、トレンド要素を組み合わせていくことも重要です。専門で特化するのももちろん良いのですが、新しいものを常に探し取り入れるという視点は持ち続ける必要があります。

例えばリニューアルで売り上げが上がった例ですが、郊外で、格安サロンとして90分5,000円で痩身コースを売っていた店舗が、高級な美容機器を導入し、都心部だと2万円以上する同じ機械の痩身コースを60分12,000円でコース販売をしました。それを見て、都心の高級店で体験を受けて高いからと離脱した客層が、調べて遠方からもくるようになったのです。遠方から来店した顧客達いわく、「交通費を加味してでもこちらの店舗が良心的な価格だったので」とのことです。

新しく話題性のある機械を導入したことで大きな集客につながりました。さらに店舗としては、低すぎる単価のせいで効率の悪い収益だったのが、分単価が一気にあがり、営業効率もアップしました。リニューアルという名目で、利率の調整もできるので、メニューの定期的な見直しを是非行うべきと言えます。

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WEB対策ができていないエステサロンはつぶれる


エステと言えば、会員情報を利用してのDMや、近隣エリアに対してのチラシのポスティング、地域のフリーペーパーでの広告掲示にお金をかける傾向がありました。しかし、この数年でそれも一気にWEBに移行しているそうです。

長らくチラシやフリーペーパーでの集客を行ってきたエステ業界ですが、約3年前を契機に、チラシ・フリーペーパーはほぼ0になったと言えます。もちろん、今でも紙媒体で集客できるエリアというのは一部あるのですが、特定のエリアを除くと、今は1万部のフリーペーパーやチラシで3件予約がくるかどうかというところまで集客力が落ちてきました。WEBサイトの強化やリスティング広告で補填するという動きを組み込んでいないサロンに関しては売上をあげるのが厳しくなってきたと言えます。

大手のエステサロンに関しては早い段階からWEB環境を整えてSEO対策やアフィリエイト広告に力を入れていましたが、個人店に関してはまだまだWEB環境が整えられていないサロンが多いです。

ホットペッパービューティーに関しては個人店でも利用率は高く、そちらをWEBサイトの代わりにしているところも多く見られます。ホットペッパービューティーに関しては費用対効果の面でいうと非常に良いので、個人店にとっては最小限のリスクで広告掲載ができるメリットがあると言えます。大手サロンの最近の動きでは、法人ならではのM&Aによる顧客リストの強化や、WEB・アプリでの配信を活用している例が見られます。

大手エステサロンについては、M&Aによる顧客データ活用も見られます。今まで大手エステサロンはテレビCMや雑誌・チラシといったマス向けの宣伝や、自社の顧客リストに対してのDMに大きく広告費を割いていました。そういった企業がM&Aなどで別企業とタッグを組むことで、グループ企業の顧客リストの活用や、アプリを使ったチケット配信など新たな集客を試みています。こういった顧客リストやWEB集客を強化することで、以前の半分まで広告宣伝費を削減に成功した例もあります。

WEB集客の利点としては、リアルタイムで顧客のアクセスがわかるので効果検証がしやすい点と、エステの場合契約につながった場合の収益が大きいので、美容院などに比べると集客にお金をかけるリスクが低いところもメリットと言えます。

例えば、10~20万のWEB広告の場合、体験でも20人程度で黒字、さらにその中で3~4人コース契約につながれば万々歳という感じなので、WEB集客は積極的に活用すべきと言えるでしょう。SNSについても同様に、お金をかければある程度の見込みがあるようです。

Instagramでの集客は非常に良い結果がでています。ただし、無料の範囲で自分の店舗でアカウント運営するのではなく、あくまで、きちんと広告費をかけてシステム的に運営をするという前提になります。SNSの広告費としては現状の傾向でいくと最低30,000円~50,000円ほどかけるのがベースになってくると思います。

大手の場合はSEO対策など十分に行えますが、個人店の場合はなかなかそこまで広告予算もかけられないので、こういった手軽なSNSを合わせて活用するのも一つの手と言えるでしょう。

例えば、昨年のホットペッパービューティーだと、サイト内検索で、「ハイパーナイフ」という痩身の機械の名指しの検索が機械の検索だと最も多いとのデータがありました。集客力のある機械や商品を導入することでお客様の検索にひっかかりやすくするというのも、対策のひとつになると言えます。

インバウンドよりもアウトバウンドでの集客に目を向ける


最近は異業種からの買収が多く見られる美容業界ですが、国内だけではなく、海外からも買収に乗り出してくるケースは多いです。日本企業、特にエステサロンのようなサービス業は、商品の品質だけではなく、従業員のサービスやマナーの質が海外でも高評価されています。

インバウンドの顧客については、言語や文化の壁の問題もありますし、海外用に言語対応したWEBの構築も必要になります。そしてバイリンガルのような語学堪能な人材は、他の業界でも高待遇で雇用されてしまうので、なかなかそういった人材がエステサロンで雇用するということは難しいと言えます。

そのため、インバウンドよりはアウトバウンドに目を向けるほうがいいといえるでしょう。今後も外資企業による買収や、海外企業との業務提携で日本のエステサロンの海外進出は大きな可能性があります。特に大手に関しては海外との連携も今後の注目要素と言えそうです。

出典元:
エイチビイエム 経済センサスに見る理美容業種の実態 
平成28年経済センサス‐活動調査 産業別集計(「サービス関連産業B」及び 「医療,福祉」に関する集計)
内閣府 平均初婚年齢、平均出会い年齢及び交際期間の推移
内閣府 東京一極集中の要因分析に関する関連データ集

Profile

楠本文哉さん Fumiya Kusumoto

船井総合研究所の中で最もエステ業界に精通し、船井総研の中でもエステ業界のクライアントを最も多く抱えるエステ専門のコンサルタントである。 得意とするテーマは、「WEBを活用した集客・見込み客の最大化」、「多種多様な業種からのエステ事業への新規参入支援」である。 現在は、年商2000万円の企業から年商30億円の企業クラスまで、年間300回を超える個別コンサルティングを全国で行っている。 常に地域1番店を作るためのコンサルティングは顧問先様から好評を得ており、個別コンサルティングの依頼は1年先まで埋まっている状況である(2019年1月現在)

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