【美容師のカット技術】Rougy 薫森正義さん流 パーマ履歴をいかした『マッシュバングショート』#1
オリジナリティのあるヘアデザインを求める人が増えている今、おしゃれな印象を作るのに効果的なのが「バング」のデザインです。Rougyの薫森正義さんが提案してくれたのは、パーマ履歴をいかしたラフで動きのあるマッシュバングのショートスタイル。
前編では、多くのお客様から支持を集める薫森さんの、技術力と提案力の高め方に対する考えを伺いました。
「Rougy」の薫森正義さんにインタビュー
アシスタント時代から培ってきたコミュニケーション力が武器に
――アシスタント時代、大切にしていたことは何ですか?
とくにコレってことはないんですけど、アシスタントのころから、仕事は全部楽しかったんですよね。1番楽しかったのは、スタイリストのフォローをすることで。気を利かせるとか、お客様に気遣いをするとか、そういうところはちゃんとしなきゃなと思ってやっていました。
技術面は自分との戦いですけど、接客面は対人でないと学べないですよね。練習も大好きだったので、営業中以外はずっと練習していましたけど、営業中は人と関わることをメインで頑張っていましたね。
――スタイリストになってからも、そのスタンスは変わらず?
はい。お客様を楽しませるとか、喜ばせるとか、その基本は変わらず。髪型とかデザインに関しては、みんなとちょっと違うところを見つけてあげることを意識するようになったかな。技術ももちろん必要だけど、「サービス業である」という意識は昔からすごくありました。
――若手時代から磨いておくとよいことは何だと思いますか?
技術面は、自分で何とかできることじゃないですか。それよりも、コミュニケーションをとるチカラっていうのをつけていくことかなと思います。お客様はもちろん、スタッフ間でも。
今の美容師って、みんな上手になっているから、技術力があるだけだとお客様もちょっと物足りないんですよね。それには、何か武器をみつけなきゃいけなくて…。僕の場合は、それが接客だったり、相手を観察するチカラなのかなと思うんです。
それが培われたのは、やっぱりアシスタント時代から、人とコミュニケーションをとってきた経験なのかなと。いろんな人と接して、いろんなことを経験すれば、どんなお客様にも対応できるようになる。人って合う合わないが絶対あるから、「合わせる」っていうことは覚えておいたほうがいいですよね。
相手を知るためには、お話することも重要で、会話の中からヒントを得て、髪型に落とし込むとか、デザインを提案することもありますから。
――お客様への提案の際に大切にしていることは?
客観的にどう見えるかっていうのを、しっかり伝えることですね。
お客様がやりたいことや悩みっていうのは、もちろん共有したほうがいいんですけど、イメージとかデザインに関しては、お客様に寄りすぎるのも違うかなと思っていて。
お客様の要望だけ聞くと、結局いつもと変わらないスタイルになってしまうことって多いんですよね。いつもと変わらないと、周りからの反応もないじゃないですか。
やっぱり人って、周りから「かわいいね」って認められると嬉しくなるから。そこを意識して提案をしています。お客様が求めるデザインが、客観的にどう見えるかっていうのを伝えて、より良いと思うものを提案して、「1回やってみれば?」って背中を押してあげること。あと、それを受け入れてもらえるような話の仕方も心がけています。
――「おまかせ」と言われることも多そうですが…。
そうですね。それはありがたいし嬉しいんですけど、そうは言っても好き嫌いはあるじゃないですか。「じゃあ、すごいボーイッシュにしてもいいの?」って聞いたら、それはちょっと…みたいな。そういう時は、お客様相手でも、「自分のなりたい女性像は持ってなきゃいけないよ」って話をしてから、好きなデザイン、嫌いなデザインを聞いて詰めていったりしますね。
しゃべりたくないお客様って、本当はいないと思うんです。だったら、わざわざヘアサロンに来てないし、むしろ何かを求めて来てくれているとも思う。もちろん、毎回同じスタイリストに「今日どこ行くんですか?」とか聞かれたら嫌だと思うけど(笑)。やっぱり、自分のことを知ってもらったほうがいいっていうのは、当然あるわけで。
だから僕の場合は、雑誌を読んでいてしゃべらないお客様でも、「もっと髪のこと一緒に考えようよ!」っていうことを言います。だって何カ月もその髪型で過ごさなきゃいけないし、その髪型がよければ周りに「かわいい」って毎日言われるんですよ? 逆だったら、何カ月も憂鬱に過ごさなきゃいけなくなっちゃう。だから、真剣に向き合ってくださいって、伝えますね。
美容師みたいに2、3時間もずっと一緒にいる仕事って、ないじゃないですか。だから、最初は噛み合ってなかったとしても、最終的に喜んで帰ってもらえればいいと思って、諦めないでコミュニケーションを取り続けないと。髪に対しては、僕たちは責任がありますから。
大切なのは、流行を作る側としての思考を止めないこと
――新しいデザインを考える時に意識していることは?
デザインを作っていく側として、次にどういうものを流行らせたいかっていうのは、常に考えていますね。自分の中で流れを作るというか。例えば、長めの前髪が自分の中でブームだったとして、次はそれを変えるにはどうしたらいいかなって考える。じゃあ次は短めの前髪が来るとして、短めでもどんなデザインがいいんだろう…って感じで。
常にそれは考えているので、雑誌や映画、美術館とかに行くと、「あ、これ可愛いな」って、今の自分の感覚に引っかかるものが出てくるんです。そういうのを自分の中にストックしておいて、デザインに落とし込んでいく感じですね。
――自分らしいデザインのポイントは、どんなところだと思いますか?
僕が提案しているヘアスタイルは、奇抜というよりは、オーソドックスな中に少し今っぽいデザインが入っている感じなのかな。ゆるいモード感というか、さりげない感じが好きなんですよね。限りなくコンサバな雰囲気の人にも、ちょっとどこかにモードの要素を入れたいっていうのはあって。その、モード感の匙加減を人によって変えるっていうのが、こだわりであり、デザインのポイントなのかな。
あとは、髪型を考えるポイントとして、その人が持っている雰囲気と逆の要素を少し加えるっていうことは、よくしていると思います。可愛い雰囲気の人には、髪型でかっこいい要素を加えたり。キツく見える顔立ちの人なら、柔らかい雰囲気をプラスしてみたり。
――今回ご提案いただいたスタイルも?
そうですね。今回は、モデルさんが可愛い顔立ちなので、真逆の印象の、ちょっと色っぽいモードな感じを足してみました。色っぽさのあるマッシュルームと、ラフで動きのある感じは、この春に推していきたいデザインですね。
サロンワークでは、今の髪の状態に対して、どうデザインしていくかって大事なんですけど。今回のモデルさんは、他店でのパーマがのびてしっくりしていない状態。そこからどういう提案をしていくかを考えました。
薫森さんが提案する『マッシュバングショート』
春に向けて提案したい、ラフで動きのあるマッシュバングのショートスタイル。レザーカットで作る柔らかい毛先のラインが、ほんのり色っぽくモードな印象に。
薫森さん流『マッシュバングショート』のいいところ
1.ショートでも女っぽく見せられる
2.パーマやくせ毛をいかして作れる
3.毛先にスカスカにならず再現しやすい
コミュニケーション力と観察力を養い、お客様にとって的確な提案ができるようになったという薫森さん。それは、どんな履歴がある人にも対応できるということ。そんな薫森さんが提案してくれたのが、パーマ履歴を活かした、この春イチオシのマッシュバングスタイルです。後編では、その詳しい作り方とスタイリング方法を教えていただきます。
▽後編はこちら▽
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取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥
ヘア&メイク:薫森正義(Rougy)
モデル:木村由希
教えてくれたのはこの人!
薫森正義さん
Rougy ディレクター/店長
おしゃれのツボを押さえた、ハイセンスな作品を生み出し、幅広い客層から支持を得ている。お客様とのコミュニケーションを大切にした、ほんのりモードなデザイン提案が人気。業界誌、一般誌でのデザイン提案、セミナーなどでも活躍中。
Salon Data
Rougy(ロージ)
住所:東京都港区南青山3-10-32 Aoyama Morita bldg1F
TEL:03-6804-6082
URL:http://www.rougy.jp/