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学び・キャリア 2020-12-15

美容師の独立 必要なのは柔軟性。「美容師」という枠を超えて活躍の場を広げる Vol.16【siki 代表 磯田基徳さん、伊藤竜さん】#2

独立した先輩たちにその心構えを学ぶ本企画。

前編に引き続き、「siki」代表の磯田基徳さんと伊藤竜さんにインタビュー。「誰とやるか」でしか独立を考えなかったそうで、一緒に働く上で土台となるのは人間性なのだとか。そしてそれはスタッフに対しても然り。

後編では、ブランド力や今の世の中に適応したサロン展開について教えていただきます。

長く一緒に働けるように、色々な能力を発揮できる場を用意したい

――スタッフが働きやすい職場環境にすることも大切かと思いますが、その辺りはどのようにされていますか?

伊藤さん:お給料はきちんと出している方だと思います。アシスタントには家賃手当、後輩指導を担当しているスタイリストには講師手当とか。支払うべきところにはきちんと支払っています。自分たちが入りたくなるようなサロンにすることが根底にありますからね。

磯田さん:美容業界も福利厚生が段々と良くなっていますよね。むしろそれが当たり前になりつつあります。でも、当たり前になってきているからこそ、逆にそこを疑ってしまいますね。

――それはどういうことでしょうか?

磯田さん:世の中はこれからもっと多様化していくし、それに伴って才能のある子が生まれてきますよね。だから、美容師も髪を切って染める以外の能力を発揮できる場が必要なんじゃないかなと思っているんです。美容師ってすごいセンスのある人がたくさんいるんですよ。SNSや動画なども他の業界と比べて進んでいますし。よく世間では「働き方改革が…」とか言われていますが、労働環境の改善ばかりではなくて、もっと色々な働き方や活躍の場が増えたら良いなと。うちは今オンラインサロンを経営しているんですが、そういう考えもあってのことなんです。

実際、カットやカラーを学ぶにしても、今は無料で情報が配信されているし、コンテンツは無限にあります。だから、今の若い子たちは技術以外のプラスαのことについて知りたいという人が多いんじゃないかな。

例えば、伊藤だったらカメラや映像が得意なので、うちでは美容が半分、もう半分はカメラや映像のことを教えています。僕ならサロン経営をしたり、新しい事業を起こしたり。「美容師」という狭い枠では考えていないんです。

――SNSを含む個人としての発信力とお店としての発信力、どちらを重要視されていますか?

伊藤さん:どちらも大事ですけど、そこは持ちつ持たれつかな。お店が個人力に助けられることもあると思うし、sikiというブランドに助けられるスタッフだっていると思います。

磯田さん:個人の発信力はもちろん大事ですが、ブランド力も必要とされる時代だと思います。今は美容師さんの数が溢れているし、SNSの情報も無限にある中で、何が求められるのかというと、「何を買うかではなく、誰から買うか」ということ。誰に切ってもらいたいのか、どの店で切ってもらいたいのか。つまり、「上手い」以外の付加価値を高めなければいけないということです。そもそもブランド力がしっかりしていれば、スタッフが個人としての力が弱くても、sikiにいるだけで価値が上がると思いますし。

だから今、服をつくったり、オンラインサロンを経営したり、大宮に出店したり、新しいことに色々とチャレンジしているところです。別に話題性をつくりたくてやっているわけではなく、ブランド力をつけるためにも新しいクリエーションを止めたくないなと。上手くいっているから何もしないのではなくて、上手くいっているからこそクリエーションを押していくんです。

美容師として一生懸命頑張っている人ももちろん多いですが、僕らが新しいことに取り組むことによって、色々な可能性があるよってことをスタッフに伝えたいですね。真面目になりすぎると面白いクリエーションが生まれないし、人の真似ばかりになって埋もれてしまうから。真面目になることだけが正解ではないんじゃないかなと思っています。その感覚が伊藤と合うんでしょうね。力を抜いているから今っぽいのかも。

いじる磯田さんと、素直にいじられる伊藤さん。
性格は違うけれど、取材中もお二人の仲の良さが伝わってきました。

――ちなみに、美容師を続けるために独立は必要なのでしょうか?

伊藤さん:50、60歳でもサロンで働いている人は結構いますよ。

磯田さん:独立すれば成功だと考えるのは危険ですね。一般的に美容室は20年で潰れると言われています。20年以上続いている美容室って何%だと思います? たったの0.2%ですよ。独立は「成功」や「稼げる」という物差しではかれるほど単純なものではなくて、とても難しいことなんです。経営のリスクを背負いながら、スタッフがのびのびと安心して働ける環境をつくってあげなければいけませんから。

スタッフは我が子みたいに可愛いので、まだ独立できるだけの力をつけていない子を無責任に送り出したくはないですし、会社で影響力を持って、会社の中にいくつもポジションをつくって、そこで任せていける方がいいのかなと。

逆算ではなく、習慣をつなげていく

――これからお二人が目指すサロンとは?

伊藤さん:ここで一緒に長く働けるようなサロンにしたいですね。美容業界ってみんな独立していくので、中々長く一緒に…というのは難しいですよね。だから、別事業をしたり、店舗を広げたりして社内にいくつもポジションをつくって、50、60歳になっても働けるような仕組みにしていけたらと。女性スタッフの場合は、出産・育児で店から離れるときは、「売上げどうすんの?」ではなく「おめでとう」と気持ち良く送り出してあげられる器の大きいサロンでありたいです。

大きくしていきたいという気持ちもありますが、色々な形があっていいのかなと。フリーランスになりたい子がいるなら、最悪うちに箱だけつくっても良いですし。柔軟にやっていこうと思います。

ちなみに僕、美容師で一番になりたいというよりも、映像の業界で一番になりたいと思っているんです。もしかしたら、そこに行き着くまで10年くらいかかるかもしれないけど…。「美容師」としての道だけを想像するではなくて、僕みたいな考え方を持っていたって良いんです。

磯田さん:楽しく働いてほしい、というのが僕の願い。僕と伊藤は個性が強いので、僕らが主導でやっていると僕らの店になってしまうし、下の子たちが成長しません。だから、今は幹部や店長を育てて、彼らに譲っていきたいんです。ちなみに、店舗ミーティングには僕らは出ていませんし、店舗でご飯会があっても僕らはあえて参加しません。店長たちをリスペクトできるような場をつくりたいからです。ミーティングの結論は必ず聞きますよ。「まだまだだな」と思うこともたくさんあるけれど(笑)、僕らが最終的に責任を取って修正をすればいいだけなので。僕らは「見守る」という立ち位置にいることで、スタッフが楽しく働けるんだと思っています。

あとは、チャレンジは絶えずしていきたいですね。出店もそうだし、業界の「当たり前」を疑うチャンスはたくさんありますから。でも、何店舗目指すというような目標は持っていませんね。

以前はよく取材で「将来は何店舗を出す予定ですか?」というような質問を受けていたのですが、そういう考え方って僕ららしくないなって。前に本で読んだのですが、「先にゴールを決めるより、習慣にしていく方が遠くまで行ける」という考え方があって。「○店舗出店」という目標から逆算していくより、目の前のお客様やスタッフを大切にして、新しくクリエーションして、任せていく。これを習慣にしていく方が、数年後もっと先まで行けるんじゃないかと思っています。

独立を目指すあなたへ

長く続かなければ意味がないと思います。僕らのときも、書籍が出版されたり、雑誌に掲載されたり、たくさんの方に取材していただいたのですが、同時に「流行りもの」みたいになってしまった気がして。「過大評価されているんじゃないか」「僕らって何がやりたいんだっけ?」という違和感が常にあったんです。「流行りもの」みたいに廃れるのは嫌だったし、結局「僕ららしく」いないと長続きしないなと。勢いのままに独立する人は多いかと思いますが、長く続けることに焦点を当てて地に足をつけて頑張ってください。(siki代表 磯田基徳さん)

僕らが独立するとき、まず何からはじめたら良いのか全くわからなかったんですが、おそらく同じような人がたくさんいると思うんです。だから、独立のノウハウを学ぶ機会や支援するシステムをsikiという会社で提供していけたら良いなと考えています。僕らが何か一緒に手助けできることはないかなと。だから、悩んでいる人がもしいたら、髪を切りながらでも相談に乗りますよ。(siki代表 伊藤竜さん)

▽前編はこちら▽
美容師の独立 「人として」を大事にできるお店に Vol.16【siki 代表 磯田基徳さん、伊藤竜さん】#1>>

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/柴田大地(fort)

Salon Data

siki

住所:東京都渋谷区神宮前5-18-8
TEL:03-6434-1446

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