エステティシャンの独立 町会に入って地域活動に参加したことが、亀戸の方々に受け入れてもらえたきっかけに Vol.18【柳田式インドエステ Rise 代表 柳田きよみさん】#1

美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな人に向けて、独立して成功されている先輩オーナーの経験談をお届けする本企画。

今回はエステティシャン編。インタビューをしたのは「柳田式インドエステRise」代表の柳田きよみさん。医療事務からエステ業界に転身したのち、独自の「柳田式インドエステ」を生み出し、今では悩みを抱える女性たちの心の支えとなっています。現在お店があるのは有名な自由が丘ですが、実は、独立のスタートを切ったのは東京の下町「亀戸」でした。

前編では、なぜ「独立」を選択されたのか、そしてローカルな街で成功された秘訣を教えていただきました。

「自分の手で直接」という想いで、医療事務からエステ業界へ

――柳田さんは以前、医療現場で働かれていたそうですね。

大学病院で医療事務をしていたんです。人の役に立てる仕事がしたいという気持ちがあったのですが、医療事務となると、患者さんとはどうしても間接的に接することしかできないんです。私の場合、受付や会計業務ではなく、現場に立つ部署にいたんですが、あくまでも医療事務なので、患者さんの痛みを取り除いてあげるとか、病気を良い方に持っていくとか、そういうことができなくて歯がゆさを感じていました。

「自分の手」で直接その人を良くする仕事がしたいと思って、色々と模索していたところ、エステにたどり着いたんです。「心を込めて」「自分の手」で人の役に立てる「オールハンド施術」はまさに自分の信念にぴったりだと思いました。それで9年目の29歳のときに病院を辞めたんです。

――エステの道を志されて、まずどのように働かれたのですか?

オールハンドでやっている大手のインドエステサロンに就職したんです。

――インドエステとはどのタイミングで出会われたのでしょうか。

やっぱり「医療」に気持ちが残っていたので、キレイになることや痩せることだけではなく、「健康」や「体質改善」という要素がほしかったんです。オールハンドでやっているエステサロンを探しているときに、体質改善の力が一番大きいなと感じたのが、アーユルヴェーダがもとになった日本オリジナルのインドエステだったんです。インドのアーユルヴェーダは世界最古の伝承医学でWHO(世界保健機関)に予防医学として登録され、国際的にも注目されてきました。自分でもインドエステについて勉強していくうちに、「美と健康の両方のお手伝いができる」と、どんどん惹かれていったんです。

――独立は最初から視野に入れていたのですか?

最初は全然! でも就職したサロンで、私が思った以上に営業ができてしまいまして(笑)。入社3か月で売り上げ1位になっちゃったので、それからはずっと営業・契約担当になってしまって…。これ以上売る必要がないお客様にチケットを売らなければいけなかったのも辛かったですね。しかも、私がチケットを売ったお客様には別のスタッフが施術を担当するため、自分で最後まで見届けられないんですよ。

「もっとこうした方がお客様のためになるんじゃないか」という気持ちがふつふつと自分の中で大きくなって、それを叶えるには自分でお店をつくるしかないなと。とはいえ、私ができるのは手技だけで、経営の知識は何もなく、確定申告すらどうやれば良いのか知りませんでした。でも、勇気を出してチャレンジすることに。その後、経営者の方々に出会う機会があり、アドバイスをいただくことができたんです。

町会に入って、地域住民に認めてもらえるお店に

――独立を決めて、まず何から準備されたのでしょうか。

実は、最初からテナントを借りたんです。内装を工事して1か月後にはオープンさせました。その際に600万円のお金を借りたんですが、「清水の舞台から飛び降りるってこのことね」というくらい勇気を使いました(笑)。もし赤字が続いて借金が1000万円になったら、お店を閉めて、借金返済のために働こうと決めていました。当時33歳だったんですが、同年代の人の中には結婚して家を建てている人、子どもを養っている人、車を買っている人もいるわけなので、そういう人たちと比べたときに「1000万円なんて大した借金じゃないかも」と思えたんです。その1000万円で自分が本当にやりたいことができて、充実した毎日を送れるならチャレンジする価値はあるなと、前向きに捉えることができました。

――なるほど。1000万円と聞くと大金ですが、借りるだけの価値を見出すことができたのですね。それでは次に、集客はどのようにされたのでしょうか。

当時はツイッターを活用していましたが、集客のメインはチラシ配り。まだ大手広告会社などのクーポンサイトがない時代でした。お客様がゼロからのスタートだったので、毎日チラシを配る日々だったんですが、気づいたらリピーターと口コミでの集客で回せるようになっていて、2か月後くらいには黒字になっていました。借金もその頃から返済をはじめたんです。

――オープン2か月で、とはすごいですね! リピーターを増やすためにどんなことを工夫されたのでしょうか。

チラシを1000枚配ってやっと1人がご来店くださる、というレベル。そこで、ご来店くださった方には絶対リピーターになっていただくことと、そのお客様にほかの知り合いをご紹介していただけるシステムづくりをしました。来店してくださった方が誰かに紹介したくなる心理って何だろう? と考えたときに、初回の金額をぐっと安くしようと思ったんです。初回が3000円くらいなら、紹介する方も「安いから行ってきなよ」と勧めやすいですよね。あとは、紹介してくれた方にプレゼントをお渡ししたりも。今ほどネット上での口コミはない時代でしたが、口コミを広めるための戦術です。この戦術を功を奏し、口コミでご来店くださるお客様は、私の施術内容や人柄を知った上でご来店くださるので、チケットを買うつもりでご来店くださる方が増えました。

もう一つは、近隣の方に私がどういう人物なのかを知ってもらった方が良いと思い、地域の町会にも入りました。

――町会ですか。

実は、はじめにお店を開いたのは亀戸なんです。亀戸って、エステサロンに来るためだけに降りるような駅ではないじゃないですか。だから、ターゲットのメインになるのは亀戸に住んでいらっしゃる地域の方だと思って。近隣の方々に認めていただくためには町会に入るのが一番だと考えたんです。

街内の掃除から、イベント運営、お祭りや火の用心まで参加させていただきました。男性がメインの町会の中では50代でも若手と言われている中で、私は30代の女性。はじめは馴染めず、町会の皆さんも正直私のことをどう扱って良いのか分からなかったと思います。でも次第に「あの子、頑張っているから」と声を掛けていただいたり、力を貸してくださるようになり、ついには「この町会のアイドルだね」と言ってもらえるまでに(笑)。一度馴染んでしまえばすごく人情味のある街で、朝お店を開けるとドアノブにミカンがかかっていたり…。人情味深くて、あたたかみのある亀戸がどんどん好きになりました。

――サロン経営にも地域との交流が大事なのですね。

OLだった私には、事業主の方々が町おこしをしていることを知りませんでした。でも、町会に入ったことで、「亀戸の街を良くしよう」と地域活性化のためにイベントや清掃、安全対策や消防などを休みの日に無償で取り組んでくれている人たちがいるおかげで街がきれいに、そして安全に保たれていたのだということを知ったんです。そういう事業主の先輩たちの背中からたくさんのことを勉強できたので、町会に入って本当に良かったと感じています。自由が丘に移転して来たときも、真っ先に「町会に入りたいです!」と名乗り出ました(笑)。

――愛着のある亀戸から、なぜ自由が丘に移転されたのですか?

実は大きなきっかけがあったんです。友人と温泉旅行に行ったときに、雪崩事故に巻き込まれて生き埋めになり、脊椎・胸椎を骨折して入院したんです。普段から怪我だけはしないように気をつけていたので、とにかくお客様に本当に申し訳なくて…。予約が入っていた方々に泣きながら連絡をしました。

それから、事故の後遺症としてPTSDになってしまい、数年間社会復帰ができなかったんです。3年間の闘病を経て、ようやく「もう一度チャレンジしよう」というところまで精神的に這い上がることができました。今度は人を雇える広い物件を探したところ、ここを見つけたんです。自由が丘なら女性が集まる街だし、住んでいる人も多いし、お出かけしやすいし、そして自分も土地勘があったので、事業を起こすにはぴったりの街だなと思いました。

自分の中でイメージしやすい街とイメージしにくい街ってあるんですよ。ドアにミカンがかかっているような人情味のある街で事業をしてきた私には、銀座や六本木などはイメージがつきにくかったんです。でも、自由が丘っておしゃれだけど人情味があって、赤ちょうちんのお店もあったりして、ほっとするんです(笑)。長く事業をしていく目標がありましたし、自分が好きになれて、居心地の良さを感じる街を選びたいと思っていたので、自由が丘はぴったりでした。

ローカルな街で開業するには

柳田さんがはじめに選んだ地は、銀座や恵比寿などのような女性に人気の街とは言いがたい「亀戸」。なぜ、美容業としては一見ハンデとも思えるその条件の中、わずか2か月という早さでリピーターが定着したのかを教えていただきました。

1. 目先の利益よりも口コミを増やすことに力を入れる

2. 町会に入って地域住民との交流の場を増やす

3. 自分に合う街を選ぶ

▽後編はこちら▽
エステティシャンの独立 心のカウンセリングができるサロンに Vol.18【柳田式インドエステ Rise 代表 柳田きよみさん】#2>>

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/岩田慶(fort)

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Salon Data

柳田式インドエステ Rise

住所:東京都目黒区自由が丘2-20-24 NOA自由が丘101
TEL:03−6884−5920

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