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学び・キャリア 2021-02-09

【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.3/変わりゆく時代の空気感に寄り添ったメニュー展開で売り上げアップ/Belle Kichijoji 新井直樹さん #1

コロナ禍での働き方は、「時短で高パフォーマンス」がキーワード。そんなwithコロナ時代を生き抜くために、どんな取り組みを行っているのか、そのプラス効果とは?

今回取材したのは、Belle Kichijojiで店長を務める新井直樹さん。「このコロナ禍でいろんな問題に直面したけれど、チャンスや気づきも多かった」という新井さんに、美容室のあり方や働き方の変化についてお聞きしました。

お話しを伺ったのは…

Belle Kichijoji 店長 新井直樹さん


都内1店舗を経て、Belleオープニングスタッフとして参加。現在6店舗あるうちの吉祥寺店・店長を務める。ショート、ボブ、レイヤースタイル、メンズも得意。小顔効果に加え、再現性の高いスタイルを追求。緊張させない、気を使わせない接客がモットー。その丁寧さと明るい人柄に、幅広い世代から信頼を得ている。

勤務システムの変化/最初は席数・スタッフを半分にして営業。ミーティングや新人研修にもテレワーク導入で効率化を図る

——コロナ禍で、サロンの勤務体制は変わりましたか?

最初の緊急事態宣言が出た頃、この先どうなるか全然分からななくていろいろ不安定でしたが、そんな中でまず、国の意向、会社の考え、スタッフの思いにズレが出ないようBelleでは動いて行こうということになりました。当時、飲食店は時短営業してください、美容室は除外します、となったあたりで自粛警察とかもあったじゃないですか。正直、サロンとしての見られ方も問われるのかな? と感じました。あの時はお店を開けていてもお客さんはほとんど来なかったと思うので、それだったらお店の見られ方やスタッフを守ることを優先し、2週間お店を閉めることになりました。(1回目の緊急事態宣言後、2週間休業)。

その後は、時短営業にしてしまうとお客様が集中して密になると思ったので、お店は開けるけど時短はせず、枠数を減らして営業することに。普段の席数の半分くらいにして、スタッフ人数も半数で1ヶ月ほど営業していました。

——テレワークは活用しましたか?

ZOOMを活用しました。Belleはもともとミーティングを頻繁にやるサロンなんですね。役職のミーティング、店舗のミーティング、全店の店長・副店長だけのミーティング、幹部だけのミーティング、教育系のミーティングなどだいたい月に6〜8本はありました。そのうちいくつかは夜遅くまでコースもあったりして。数が多く時間も長くなる、これをどうにかならないものかと、コロナ前からずっと感じていて。ただ、業界のやり方だったり今までのやり方を急に変えるのは難しいな……そんな風に思いながらも、オンラインのミーティングをいつか導入して効率化を図りたいと個人的に準備していたんです。そしたらコロナでこんな状況になって、僕としては「今だ!」という勢いで、会社にZOOMでのミーティング導入をプレゼンしました。そしたらよしやってみようということになって、パワポで使い方をまとめた資料を作ったりして、それをスタッフに共有してスタートしました。こんなタイミングでしたが、スムーズに導入できたのはよかったです。結果、ミーティング数は月に3本くらいになりました。

そういったミーティングなんかを効率化できたのはとてもよかったのですが、逆のこともあるなと感じている部分もあります。きゅきゅっと効率化、簡易化しすぎて、みんなの本音での意思疎通がしにくくなったり、今までのオフラインでつながっていた感覚というものが薄れてくる、その辺は今後の課題なのかなと思います。そういうこともあり、大きな局面をむかえる時は、みんなの解釈やズレが生じないように、全員が集まった場所で代表の口から直接言葉を伝えるようになっています。

——春先、新卒が入るタイミングだったと思います。そのあたりはどう対応しましたか?

4月に最初の緊急事態宣言が出た後、お店は2週間休みになって、5月くらいまではいろいろ調整しながら営業していたので、その間、新卒の出社も止めていました。4月に入社してもらってお給料は払いつつ出社はストップ。実質6月からのスタートです。普通、2ヶ月間出社せずに給料がもらえたらラッキー! と思う人が多いのかもしれませんが、美容師の場合は技術職だからかなり不安だったと思います。やる気があるのに2ヶ月何もできない不安。他のスタッフもやることがなくて手持ち無沙汰。じゃあそこはテレワーク化しようということで、ZOOMでつなぎました。朝礼をやったり、不安なことを聞いたり、どこまで新人研修をテレワークでできるのかをスタッフ全員で話し合ってピックアップしてみました。例えば、シャンプー剤の種類は覚えられるよねとか、席の番号、美容室の独特の隠語や業界用語、クロスのたたみ方・つけ方、朝の掃除は何をする……などなど。出社しなくてもまず覚えられること、できそうなことをまとめました。

そして緊急事態宣言後、明日から自宅待機! となる前に、スタッフそれぞれに役割を与えた。○○さんはシャンプーを教える係といった感じで役割分担し、新人に教える曜日を決めて、それまでに各自資料を作ったり教えることをまとめる。教わる方も教える側も、何かしらやることや勉強することがある状態。ZOOMで全員をつないで話したり教えたり、というのを実践していました。

(左)ZOOMを使ってのミーティングの様子。吉祥寺店のスタッフはもちろん、他店舗との話し合いや情報共有にも大いに活用。現在では、ZOOM+LINEでのやりとり+現場でのミーティングを内容によって使い分けている。
(右)新人研修をテレワークで行った時の資料。役割分担や研修内容・資料、スケジュールなどをまとめ、みんなで共有した。

集客のコツ/まずは感染症対策を徹底。世の中の空気を読み取り、お客様の心理にフィットするメニュー作りに取り組んだ

——集客について、何か工夫したことはありますか?

吉祥寺という街は、新宿や渋谷などの都市とは少し違って、生活圏なので会社がリモートになってもそれなりに人がいたと思います。近隣に住んでいる人もかなり多いし、電車に乗らずに来れる街、というのが大きかったのかもしれません。不要不急と言っても、医者やスーパーに行くのと同じように、髪が伸びてきたら自分では切れないから美容室に行きたいというお客様の気持ち。でもお店側は声を大にして「いらっしゃいませ!」とは言いにくい世の中の空気。これを上手くつなぐことができたらチャンスになるな、と思ったんです。そこでまず始めは、感染症対策を徹底していることを明確にするため、HPやSNSに情報をアップしました。文字情報だけでなく、より分かりやすいよう動画も作って全面的に感染症対策をアピール。それがみなさんに届いて「安心できる店なんだな」という風に思っていただけたようで、開放していた半数ほどの席はほぼ埋まっている状態でした。

——メニューなどにも変化があったのでしょうか?

自粛してください、でも経済も回さないと……みたいな状況になって、先行きが不安になって、あの頃みなさんニュースをすごく見ていたと思うんです。僕も毎日ずっとニュースをチェックしてました。その時に思ったのが、世の中の空気を肌で感じながら、よりフィットするような落としどころを何かサービスにつなげられないかと。感染症対策を最初に打ち出したのもその一環だったのですが、僕の中でいろんなロジックとパズルを頭の中で繰り返しぐるぐるやって出てきた一つの答えがありました。

当時、お客様の心理として、お洒落をするというのが自分自身でも何となく気まずかった。それは自粛ムードが高まっていたから。だから、例えばブリーチとかデザインカラーとか、そういうお洒落につながるようなものは需要が減りました。だったらそれに対し、やらなくちゃいけないもので呼び込もうと。例えば、ボーボーに伸びちゃうと切らなきゃいけないメンズカット、白髪染めもそう、放置しておくには限界があるメニュー。そこをクーポンを作って目立つように打ち出したところ、かなり好評に。あとは、クイック時短メニューとして、前髪カットだけとか、マッサージなしとか、根元のリタッチだけのカラーとか。不要不急と言われていた中で、これは不要なのか? という迷いがみんなにあったからこそ、必要なものを明確にしたメニューが刺さったのだと思います。

しばらくして在宅ワークが定着してくると、またカラーが戻ってきたりもしました。会社がテレワークの人はまだまだたくさんいて、これまでだったらデザインカラーなんてできなかったけれど、毎日出社せずにたまにZOOMで顔を合わせる程度だったらインナーカラーだったらいける、画面に映る時は髪をおろして隠しちゃえばOK、みたいな。世の中の流れでそういう新しい発想も生まれてきて、なるほどなと考えさせられます。ニュースを見る、インスタを見る、YouTubeを見る、あとはそういう世の中の流れに敏感なオンラインサロンから学んだり、いろんな角度から分析して考えるようになりました。

自粛ムードが高まっていた時に打ち出していたクーポンの一例。
不要不急と言われる中、必要なものを明確にしたメニュー作りがお客様の心に響いた。
(※クーポン内容はその時々により変更になっています)

時短接客のポイント/人の入れ替えをできるだけしないことで感染症対策&時短にも。結果、お客様の満足度とリピート率もアップ

——接客面で変わったことや時短を意識しているポイントは?

前髪カットだけ、白髪染めだけ、とかクイック時短メニューの打ち出しは、施術そのものが時短になっていると思います。接客の仕方で変わったことと言えば、一人のお客様に対する人の入れ替えをできるだけしないようにしたことです。うちはスタイリスト3人、アシスタント6人で基本動いていますが、チーム制にはしていなくて、その時に動けるアシスタントが適材適所で入るというやり方をしていました。それを今回、担当を変えないチーム制に。コロナ前は、人を入れ替えない方が効率よく早くできると思っていたんですよね。でも人が変わるたびに伝達したり説明したりがあると、結局トータルでの時間はそんなに変わらないと。それだったら、一人の専属がいて、全部把握して担当した方がスムーズにいくし、アシスタントもお客様ともっと仲良くなれるし、いいルーティーンができていった。そうしたら、お客様の満足度が上がって口コミやリピート率もよくなった、という結果が出て(!)。最初は感染症対策という意味で始めたことだったんですが、チーム制に変えたらいろんないいことが生まれた、という発見でした。

世の雰囲気がすごくナーバスになっている頃は、シャンプー中に話をしないようにしていた時もありました。ただお客様によっては、気にして恐る恐る来ている人もいれば、気分を上げに美容室に来ている人もいる。その意識はみんなそれぞれバラバラなんだよ、という点にはすごく注意しています。そういう世の中の情勢と人の気持ちを汲み取るみたいな作業って、若い子たちにとってはすごく難しいと思うので、そこは導いてあげなきゃいけないなと考えています。ニュースは日々チェックして、若手が分かってなさそうだったら「昨日はこんな発表があったので〜」とひと言伝えておく。それだけで、お客様ともしそういう会話になった時にきちんと対応できるし、それがお客様の安心にもつながるのではないかと思っています。

売り上げはどう変わった?/一時的に急降下したものの、2020年後半はゆるやかな右肩上がりをキープ

<新井さんの売り上げ変動イメージ>2020年3月〜

2020年は3月半ばくらいまでは調子がよくて、4月に2週間お店を閉めて急激に売り上げがダウン。5月から少しずつ戻り、6月に自粛が緩和されるとみなさん一気に切りに来たことで大幅にアップ。そこから2、3ヶ月は周期がまたあくので、夏は少なめでした。例年だったら11月12月でぐんと上がるのですが、今年はそこまではいかず、でも夏から年末に向かってはゆるっと右肩上がりに。

枠数を減らしたのとチーム制にした点が、売り上げを落とさず伸ばせたポイントだと読んでいます。お店全体で、お客様の待ち時間をめちゃくちゃシビアに考えるようになりました。今まで予約をバンバン入れていた分、お待たせしてしまうことも正直多かったでんですよね。枠数を減らして無理に予約を詰めず、チーム制にしてコミュニケーションがスムーズになった。結果、待ち時間が減ってお客様の満足度が上がり、次もまた来てくださるように。新規集客はこれまでと変わらないくらいなんですが、リピート率が確実に上がっていて、それが11月あたりにぐーん伸びている部分だと思います。11月の売り上げは6月を超えました。

時代の急激な変化の壁にぶち当たるも、分析力と行動力で新たな道を切り開いてきた新井さん。失敗と発見の両方があり、今回初めて見えてきたこともあると言います。

後編では、そんな新井さんの1日のタイムスケジュールや、今後の動向などについてお伺いします。

▽後編はこちら▽
【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.3/営業スタイルも教育も。効率化することで見えてくる新しいやり方/Belle Kichijoji 新井直樹さん #2>>

取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:mika

Salon Data

Belle Kichijoji(ベル 吉祥寺)

住所:東京都武蔵野市御殿山1-2-3
TEL:0422-29-8589
新井さんのInstagram:@belle__arai

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