【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.3/営業スタイルも教育も。効率化することで見えてくる新しいやり方/Belle Kichijoji 新井直樹さん #2
コロナ禍での働き方は、「時短で高パフォーマンス」がキーワード。そんなwithコロナ時代を生き抜くための、美容室の次なる戦略とは?
後編では、Belle Kichijojiで店長を務める新井直樹さんの1日のタイムスケジュールを取材。これまでとの変化や見直し、改善した点、今後の動向などについてお聞きしました。
お話しを伺ったのは…
Belle Kichijoji 店長 新井直樹さん
都内1店舗を経て、Belleオープニングスタッフとして参加。現在6店舗あるうちの吉祥寺店・店長を務める。ショート、ボブ、レイヤースタイル、メンズも得意。小顔効果に加え、再現性の高いスタイルを追求している。緊張させない、気を使わせない接客がモットー。その丁寧さと明るい人柄に、幅広い世代から信頼を得ている。
新井さんの1日の流れ/きっちり3席ルールで1日15人。予約枠を減らしたらうまく回るように
——サロンワークの流れとして、意識していることは?
お店は朝10時オープンで、19時まで。1日15人までと決めていて、自分のお客様が常に3人以上お店にいないように調整しています。コロナ前は、予約をバンバン入れて追加メニューも対応。5枠、6枠と増やしてやっていたので、1日8人の時もあれば20人の日もあって波がすごく大きかったんです。そのやり方をやめてきっちり3席ルールにしたところ、常に15人前後をキープできるようになって、その方がサロンワークもやりやすいし、売り上げも上がるという良い結果につながったんです。
——予約数を減らしたことで新たな発見もあったそうですね。
予約枠を減らしたことで、通常よりもうまく回るようになりましたね。週末は混みそうだから、平日に行きますと言ってくださる方も多く、お客様が予約枠に合わせて入ってくださるので、とてもありがたいです。
——朝の過ごし方も変わったと聞きましたが。
お店の朝礼は9:30からなのですが、7:30くらいに出社して朝活を始めました。子供が生まれて早寝早起きになったこともあり、「これを機に! 」と。朝の時間は日によって何をやるかいろいろですけど、データをまとめたり、読書する日があったり、カット練習をしたり…。仕事と自分の時間を上手く使えるようになったので、これからも続けていきたいと思っています。
今後の展望/目まぐるしい時代の変化、流れについていくことが重要。効率化とともに進化してブラックからホワイトへ
——このコロナで実感したことは?
今までのいろんな固定概念が壊されたことですね。予約は常にあけておくべき、スタッフとはより長く濃厚な時間を過ごすべき…、全部をやりすぎていたのかもしれません。それがいいと思っていたんですけど、結果につながっていなかったことも多かったし、「愛」なようで「エゴ」だった部分があったのかもしれません。
あとは、スタッフにもお客様にも感謝の気持ちがすごく大きくなりました。こんな事態でも会社がスタッフに給料を払い、守ってくれたこと。お客様も来にくい状態の中それでも戻ってきてくださった。ありがとうという感謝の気持ちしかないですね。スタッフも「自分一人じゃ働けないんだ」という思いを強く持つきっかけになったし、アシスタントが協力してくれるから営業もできる。周囲への感謝の気持ちをずっと忘れないでやっていきたいです。
—−これからどのような働き方が求められると思いますか?
無駄を省いて効率化できる部分は対応する、このコロナ禍で見直すきっかけになりましたね。美容業界は正直ブラックな体質がまだまだ残っているというのが現状で、それがホワイトへ進化していけたら良いなと。そういう動きはこれまでもあったとは思うのですが、コロナになってより早まったなと感じています。
だからこそ、人を大事にしたい。遅くまで残業してやっていた勉強会などは減らし、その分、一人でも練習や勉強ができるカリキュラム動画を作ったんです。練習がきちんとできる環境作り、教育体制の見直し、休みを確保してスタイリストそれぞれの時間も作ってあげる。そういう細かい部分も大切だと思っています。
—−個人それぞれが自分のペースで練習できるのは良いですね。
動画を見るだけでも勉強できるし、みんな同じものを見るので技術のムラも少なくなりますからね。それに、動画を導入することで営業後に週2回あった勉強会を1回に減らすことができたんです。定休日を勉強会にして、アシスタントの練習を1日見てあげる日も作ったんですよ(その分の休みは他で補っています)。コロナをきっかけに、さまざまな取り組みができるようになったことは前進ですね。
—−世の中はまだまだ不安な状況ですが、美容師としてどんな風に進んでいきたいですか?
コロナで大打撃を受けましたけど、これからは効率化を考えつつ、感謝の気持ちを持って進んでいけたらと思います。美容業界は今、大きく進化して変わっていく時。僕自身、ニュースで情報を得て、デジタル化に取り組む過程で「時代の流れ速っ!」って何度も思いました。時代の流れに置いていかれないように、もっともっと勉強しないといけない。それで朝活を始めたというのもあります。勉強して変化を体感する、これからも自分をアップデートしていきたいですね。
リピート率が上がったり売り上げが伸びたりして、正直気持ちよかったし、発見もたくさんあった。自分の得意分野かもしれないと気づけたのも大きかったですね。この体験をみんなと分かち合って、感謝を忘れずに、周りを巻き込みながら強くなれたら最高です。
コロナ時代、効率的に働く3つのコツ
1. 時間や作業の無駄を省いて効率化する
2. 時代の空気感を読み取りながら流れについていく
3. 全ての人への感謝の気持ちを忘れない
これまでの営業がぷつりと途切れ、スタッフもお客様も世の中の空気までも一気に不安に包まれる、まさに緊急事態。そんな中でもピンチをチャンスに変えるべく、データを分析し、時代の流れを読み解き、考える力と行動力でみんなと乗り切ってきた。
そんな新井さんが、たびたび口にした「効率化」。美容師という職業柄、業界としてのやり方や考え方は色濃く根付いている部分は多いものの、進化の過程でもある。今回のコロナショックを、その進化を後押しするようなきっかけにできるかどうか。大きく前進するためのターニングポイントになりそうです。
▽前編はこちら▽
【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.3/変わりゆく時代の空気感に寄り添ったメニュー展開で売り上げアップ/Belle Kichijoji 新井直樹さん #1>>
取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:mika