郊外サロンこそコンテストに挑戦を!「AR hair」益岡純一さんの経営術
「AR hair」は2006年に誕生した大阪府大阪市のヘアサロン。一軒家を改装した温もりあふれる店内ではカットやパーマはもちろん、まつ毛エクステや着付けのサービスも展開しています。昨年からは、なんとクッキーの販売も始めたとのこと。
前編ではオーナースタイリストの益岡純一さんが、強い組織を作り上げた方法に迫ります。「美容師を楽しむという根本を忘れないことが大切です」と語る益岡さん。その言葉の背景にはコンテストへの挑戦で自信と信頼を掴み取った実体験がありました。
今回お話を伺ったのは…
益岡純一さん
「AR hair」オーナースタイリスト
2006年の4月に「AR hair」をオープン。美容師の日本一を決めるJHA(ジャパンヘアドレッシングアワード)にノミネート。また関西一を決めるKHA(関西ヘアドレッシングアワード)で準グランプリを受賞するなど、数々のコンテストで高い評価を得る。美容業界誌や一般紙でも活躍中。得意な施術は、自分の癖が好きになる毛先だけパーマ。骨格の悩みを解決する彫刻カット。
インスタグラム:ARhair / 大阪 旭区 関目 美容室
「美容が好き」。それが、もっとも強い武器
――「AR hair」は、競争が激しい業界で今年16年目を迎えます。安定した成果を残し続けるためには、どのようなことが大切なのでしょうか?
1人ひとりのスタッフが「自分はなぜ美容師をしているのか?」ということを、日々考えることが大切だと思います。おそらく美容業界で働いている方々の心には、「美容が好き」や「誰かをきれいにすることが楽しい」という想いが根本にあり、それがお客さまの心を掴むもっとも強い武器です。
しかし、売上が厳しいときには数字だけに捉われてしまい、その気持ちをつい忘れてしまいます。実際に私たちも、オープンして5年目くらいにそのタイミングがありましたね。
――そのタイミングについて詳しく教えてください。
2番手だったスタイリストが独立した時期で、売上が落ち込み「どうしようか…」と悩んでしまいました。そこで、現在もサロンで活躍している「薬師神」というスタッフと居酒屋でいろいろと話し合いました。
そのときに「本当はもっとコンテストに出てクリエイティブなことをやりたいんやけど、どうなんかな?」と言ったところ、彼女もコンテストに出場していた同級生から刺激を受けていたときだったので「私もやりたいと思っていたんです」と話してくれました。そこで「2年ぐらいは売上を気にせず、とにかくやりたいことをやってみよう」と決めました。
勝負に挑む姿勢が、お客さまの信頼を深める。
――ではコンテストに出場し始めて、どのような効果がありましたか?
コンテストへの挑戦は大きく3つの効果をもたらしてくれました。1つ目は、技術に対しての自信が高まったことです。「AR hair」は「大阪市旭区」という都心から少し離れた郊外に誕生し、周囲のサロンとそれほど激しく競争をすることがありませんでした。つまり、自分たちの力量をいまひとつ実感できずにいました。
しかし、コンテストに出場すれば有名店と戦うことになります。技術への想いが刺激され、繊細なカットや大胆なイメージチェンジを叶えるテクニックなど、スキルの幅が大きく広がりました。コンテストでは賞を獲ることもできたので、「デザインで勝負ができる!」と本当に自信が付きましたね。
――なるほど。続いて2つ目はどんな効果でしょう?
お客さまとの信頼関係が深まりました。施術中に「次はこんなコンテストに出ます」とお伝えすると「がんばってください!」という、あたたかな応援をいただくことができました。賞を獲ったときには本当によろこんでくださって、モチベーションがさらに高まりましたね。
コンテストへの挑戦を始めた当初にお客さまから「最近、目の色が変わりましたね」と言われたこともあったので、サロン内の雰囲気もかなり前向きに変わったのだと思います。
雑誌への掲載で集客面でも効果を実感!
――それでは最後に3つ目の効果を教えてください。
3つ目は集客力が高まったことです。現在ではSNS集客が主流ですが10年ほど前は、まだ口コミと雑誌がメインでした。コンテストで受賞したり、業界誌掲載されたり成果が表れ始めた頃には、自然とお客さまが増えてきて兵庫、奈良、京都など遠方からも多くのお客さまがいらっしゃいました。
この3つの効果が合わさって気が付いたら売上がグッと伸びていました。「雑誌を見て応募しました」と求人面でも効果があったので、「なぜ自分は美容師をやっているのか?」と考えて初心に返ることは、サロンを経営するうえでとても大切だと思っています。
――求人のお話が出たので、採用面についても気になりました。魅力的な人材を確保するために力を入れていることはありますか?
4年ほど前に株式会社に変えたので、整容国保、厚生年金、雇用保険、労災保険、有給休暇、育休産休などの福利厚生面には力を入れています。ただし、雇用面よりも社員旅行、食事会、毎月の映画鑑賞会のほうが学生に高評価ですね(笑)。コロナ禍ではなかなか実施ができていないので、落ち着いたらまた再開したいと思っています。
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強い組織を作り上げる3POINT
「AR hair」の強い組織を作り上げるポイントをまとめると以下の3つでした。
1.「自分はなぜ美容師をしているのか?」という本質に目を向ける
2.コンテストに挑戦して技術を高める
3.自分たちのチャレンジをお客さまと共有して信頼を深める
後編では、まつ毛エクステ、着付け、そしてクッキー販売にフォーカス。また顧客を掴む接客術についても伺いました。後編もぜひチェックしてください!