18時終業&1年半デビュー!「株式会社サクラビト」能勢秀昭さんの革新的経営術
「能勢秀昭さん」は神戸市に3つのヘアサロンを展開する「株式会社サクラビト」の取締役社長。また、オンラインサロン3つを運営(600名在籍)するほか、コンサルティング事業やセミナー講師活動も行っています。
「売上だけに目を向けずに、組織作りや教育にも力を入れることが大切」と語る能勢さん。その言葉の背景には、1年半でデビューができる教育体制やママさんのお悩みを解消する託児所の完備などの、思いやりに溢れた経営術がありました。前編では、お客さま&スタッフから愛されるサロン作りに迫ります。
今回お話を伺ったのは…
能勢秀昭さん
株式会社サクラビト 取締役社長
1999年、神戸のサロンに入社し同時に「BEAUTY ARTS KOBE(通信課)」に通う。2004年、神戸の大型サロンに移籍し10年ほど腕を磨く。2014年「株式会社サクラビト」に移籍し、2017年に「取締役社長」に就任。2020年インスタグラムで美容師さんに向け情報を発信し始め、2021年オンラインサロンをスタート。現在は、オンラインサロン3つを運営(600名在籍)の他、コンサルティング事業やセミナー講師活動も展開。
Instagram:@nose_hideaki
業界で問題視されている、サロンの空洞化
――能勢さんはサロン経営の他にコンサルティング事業も展開されています。業界を見渡すなかで、問題だと感じていることはありますか?
売上だけに目を向けずに、組織作りや教育にも力を入れるべきだと感じています。業界には「売上を上げることが何よりも大切」という偏った考え方があり、それがサロンの成長にストップをかけている大きな原因です。たとえば、ここ数年で次のような状態に陥っているサロンをよく見受けます。
カリスマブームのときに名を上げた美容師の手によってサロンが誕生。技術力の高いスタッフが集まってきて、そのなかでとくに売上を残した美容師を幹部にすえる。そして、数年後には多店舗展開に成功。ここまでは理想のカタチに映っていると思います。
――そうですね、とくに問題を感じません。
しかし、成長はある程度のところでストップします。そのときに、このサロンはどのような状況になっているでしょうか?上層部のポストは技術に特化した幹部で埋まっているので、そのひとつ下の世代にはキャリアアップの道筋が見えません。そこで店長クラスの彼らは次々と独立します。
ようするに、このサロンには中間層がまったくいません。この空洞化の状態で店長に就くスタッフは、教育をはじめ仕事への取り組みがいまひとつの美容師です。どう考えてもこのリーダーのもとでは店舗は成長しません。
本来であればこの状況を変える人物は、オーナーや幹部です。しかし技術だけでのしあがってきた彼らには、人をまとめる力が十分にありません。本当にどうしようもない、八方ふさがりの状態ですね。
18時終業&1年半デビュー!革新的な体制で業界を変える
――なるほど。それではこの状況を生まないためには、どのようなことが重要なのでしょうか?
自分の感情をコントロールできたり、他人の成功に拍手を送ることができたり、異なる価値観を認めることができたりなど、広い意味で高い人間力を持つ集団をつくることが大切だと思います。実はこのためには、家族、恋人、友だちなど職場以外の人と接するプライベートの時間が想像以上に重要です。そこで私たちは18時に帰宅できる体制を整えているほか、週休2日制、夏季休暇・年末休暇5日、研修代休制度などの休日も充実させています。
――それはかなり働きやすそうですね。ただレッスン時間の確保が難しそうですが、どのように取り組んでいるのでしょうか?
「アカデミー制度」という教育スタイルを整えており、1年半でのデビューを実現しています。従来の業界はデビューまでに5年かかることが当たり前だったので、かなり革新的な取り組みですね。サロンでは新卒向けのレッスンを9時から11時まで毎日行っており、火曜日は半日、木曜日には各新人が交代で1日中レッスンができる状態を整えています。
ママさんの声をきっかけに、保育士常駐の本格的な託児所を完備!
――18時終業&1年半デビューですか!確かに業界ではかなり革新的ですね。その他に、働きやすい環境を整えるために力を入れている取り組みはありますか?
託児所を完備していることも大きなポイントですね。約12畳の本格的な託児所では、スタッフの子どもを始め、お客さまのお子さんもお預かりしています。そもそも、この環境は「サクラテッセン」を訪れていたお客さまの声をきっかけに始まりました。
オープン当初から、サロンにはママさんの方々が多く訪れており、施術中に「子どもを連れてこれないから、育児期間はおしゃれを我慢します…」というお悩みをよく聞いていました。しかし本心では「好きな髪型をしたい」と思っていますから、そんなママさんの要望に応えるために、5年ほど前に託児所を作りました。
託児所には保育士さんが常駐しており、お子さんの様子を施術スペースのお母さんに届けるためにカメラも設置しています。
ちなみに現在、社員25名のうち7名がママ美容師で、これまでに結婚や出産をきっかけにやむなく退職したスタッフはひとりもいません。その他に働きやすい体制作りとしては「基本給17万円+奨学金補助1万円+家賃補助1万円=新卒の手取りが19万円」という給与面も力を入れているポイントですね。
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お客さま&スタッフから愛されるサロン作りの3POINT
「能勢秀昭」さんから聞いた、お客さま&スタッフから愛されるサロン作りのポイントをまとめると以下の3つでした。
1.人間力の向上も考慮してプライベートの時間を充実させる
2.1年半でデビューができる教育体制を整えて、若手の意欲を高める
3.保育士常駐の託児所を完備して、ママさんのお悩みを解消する
後編では、オンラインサロンについてフォーカス。また、リピート率を高める接客術についても伺いました。後編もぜひチェックしてください!