家族全体の暮らしを豊かに。それがNecessitiesの目指すもの。鮫島一美さん♯1
大阪で美容室を経営する傍ら、シャンプーやボディソープなど家族の日用品ブランドNecessitiesを運営する鮫島一美さん。
前編では、美容師からNecessitiesを立ち上げることになったきっかけや、ブランドを確固たるものにするまでの工夫などを伺いました。いくら良いものでも、人の目に触れないと意味がない。鮫島さんが、ブランドを立ち上げるために最初に起こしたアクションは、デザイナー探し。大好きだったカフェのデザイナーをどうにか探し出し、共に開発したネーミングやロゴ、パッケージデザインは、どれも細部へのこだわりが満載です。
お話を伺ったのは
Necessities代表
鮫島一美さん
美容学校卒業後、大阪の大型美容室に勤務。東京でサロン展開をスタートする際、店長として東京に異動し、技術指導を担当。半年後、大阪でフランチャイズのオーナーになることをすすめられるが、それなら自分の店を出したいと23才で独立、美容室を経営。その後、「家族の日用品」をテーマにしたNecessitiesを立ち上げ、ボディソープやシャンプー等の販売をスタート。2022年8月には銀座のEXIT MELSAにポップアップストアをオープン。メインキャラクターであるハーブおじさんの心に響くメッセージにはファンが多く、インスタのフォロワー数は1万人超。
真のターゲットは、実はお父さん
――鮫島さんは元々美容師だったそうですが、Necessitiesを立ち上げた理由を教えてください。
美容室の経営がなかなか厳しかったときに、SHIGETAというブランドに出会い、そこからアロマに魅了されていきました。ほぼ全種類の精油を取り揃えて、ハンドクリームやルームフレグランスをハンドメイドするほどアロマが大好きになって。アロマの商品を美容室のお客様にも紹介して、買っていただくようになったのですが、次回そのお客様に「あの商品、使ってますか?」と聞くと、結構使ってくれてなかったりするんですよ…。
自分としては良さも十分に実感していて、すごく気に入っているアイテムでしたが、アロマって消費期限があったり、僕みたいにアロマを深く理解している人間でも使いこなせなかったりして、とっつきにくい部分があるんだなと。いままで習慣になかったものを日常生活にとり入れることって、やっぱり難しいのかなと思ったんです。だったら、体を洗うことや髪を洗うこと、すでに習慣化されている身近なことにアロマをとり入れられないかなと思って、日用品を開発することになりました。
――ターゲット層はどんな世代ですか?
20〜50代の意識の高い女性です。お肌の悩みをはじめ、年齢を重ねるごとに悩みは増えていきますよね。何かしらの悩みを抱えて、それを意識している方をターゲットにしています。
――年齢層は結構幅広いんですね。
そうですね。それは、真のターゲットが実はお父さんだからかもしれません。僕みたいな父親世代にどうやったらアロマをとり入れられるのか、ずっと考えていて。アロマを生活にとり入れると、自律神経が整い、眠りやすくなって、次の日の仕事ががんばれるようになります。でもアロマって男の人はなかなか手にとらないですよね。そこで、お母さんが買って帰って家に置いておいたら、お父さんが手にとる。アロマが入っているのを知らずに使って、次の日の仕事ががんばれたら、結局家族全体の暮らしが豊かになりますよね。 それが、Necessitiesが目指しているところです。
最初に起こしたアクションは、デザイナー探し
――ブランド開発のために、まずはどこから着手したのですか?
僕の頭にしかなかったフワッとしたものを具現化したいと思ったときに、もし実現したら絶対に良いものになるなという自信はあったんです。でもどんなに良い商品でも手にとってもらえなければ意味がない。そこで、最初に起こしたアクションは、デザイナー探しでした。
僕が大好きなカフェ&ダイニングが大阪にあるのですが、そのカフェが元々は青果店だったという話を聞いて、そこをプロデュースした人に作ってもらいたいと思ったんです。まずはそのデザイナーさんを探し出すところから始めて、直接会いに行って、ブランド開発への思いを伝えました。
その方は、自分の心が本当に動かなかったら仕事を断る方だと聞いていたので、かなり緊張しましたが、色々と話をしたら、僕の思いに共感してくださって、全面的にプロデュースをお願いできることになりました。
――プロデュースというとどんなことをしてもらうのですか?
コンセプトからネーミング、ロゴ、パッケージ、Webサイトのデザインまでトータルに手がけていただきました。 ベーシックでありながら人と環境に寄り添った、家族で使える日用品。ニュートラルで上質なブランドの世界観を、感度の高いセレクトショップに並ぶ姿までイメージしてデザインしてくださいました。
ブランドロゴ(上の画像)には、ベーシックであることや家族の日用品であることが細かなディテールで表現されています。
――細部にまでこだわりが詰まっていますね。
他にも、使ってほしいユーザーさんに向けて商品ごとにメッセージマークをつけています。例えば、ハンドソープには、外のイライラやバイ菌を家の中に持ちこまず、気持ちの切り替えができるように、「purify yourself」のメッセージマークを。多幸感を感じられるアロマを配合した商品には、「have a euphoria」。
体を洗う習慣がない人はいないから、最初に商品化したのはボディソープ
――商品で最初に完成したのはどのアイテムだったのですか?
最初にできた商品がボディソープです。手を洗う習慣がない人はいるかもしれませんが、体を洗う習慣がない人はいないなと思ったので。
――確かにその通りですね。ボディソープにはアロマをどのようにとり入れたのですか?
ボディソープには、ラベンダーやローマンカモミールなど睡眠の質を高める8種類のアロマがブレンドされています。日中の勉強や仕事で神経がピリついて、寝つこうとしても深い眠りに入れないときに、お風呂で体を洗うタイミングで副交感神経が優位になるようなブレンドにしています。 ベッドに入る90分前に入浴するといいと言われているので、アロマの力でうまくシフトチェンジできて深い眠りにつければいいなという思いでボディソープを作りました。
――設立当初から売上は順調だったのですか?
会社を設立してから2年間は本当に売上がゼロでした。2年ほど経った頃、 あるブランドのポップアップストアに参加させていただいて、そこにフォロワー数が5万とか10万とかいるインフルエンサーの方が来て下さって、Necessitiesの商品を紹介してくれたんですね。そのタイミングで、Amazonや楽天での販売もスタートして、少しずつ売上が上がってきました。
鮫島さんがブランド確立のために行ったことは
鮫島さんがブランド確立のために行ったことは以下の3つです。
1.真のターゲットをお父さん世代に設定した。
2.最初に起こしたアクションは、デザイナー探し。
3.習慣化されたもの+αの商品開発を心掛けた。
後編では、銀座のポップアップストア展開やハーブおじさんの言葉が胸に沁みるインスタの運営についてお伺いします。
取材・文/永瀬紀子