「自分らしく」働きたくて、フリーランスに転身【フリーランス美容師 深沢秀さん】#1
原宿・表参道のサロン勤務を経験したあと、フリーランスの美容師として働き始めた深沢秀さん。フリーランスになってから、のびのびと自分らしく働けているんだそう。その理由とは? サロン勤務時代と現在の働き方を比較しながら、気持ちの変化も掘り下げます。
前編では、深沢さんが美容師になるまでの経緯とフリーランスへ移行するためにしたこと、フリーランスになってから変化した接客の方法について伺いました。
お話を伺ったのは…
フリーランス・業務委託美容師 深沢秀さん
都内の大学進学後、就職活動中に美容師になることを決意し、通信制の美容学校へ入学。その後、地元・山梨県に戻り、家業の農業を手伝いながらサロンアシスタント経験を積み、東京・原宿にあるサロンに転職してスタイリストデビュー。5年勤務したのちに、フリーランスに転身。同時に業務委託も開始し、現在はフリーランス&新橋にあるサロンでの業務委託の2本柱で活動中。
大学卒業後、美容師へ進路変更して地元でアシスタントデビュー
――美容師を目指したのはいつ頃でしょうか?
実は美容の道へ進んだのは20歳を過ぎてからなんです。子どもの頃から美容師を目指していましたが、両親に「美容師は離職率が高いからとりあえず大学卒業の肩書きはもっておいた方が良い」とアドバイスされ、大学へ進学して就活をしていました。ところが、就活中に美容師になりたい気持ちを再確認して、東京の通信制の美容学校に通うことにしました。
通信制の美容学校を3年で卒業したあと、地元の山梨県に戻り、県内で有名なサロンにアシスタントとして就職。本当は東京で挑戦したかったのですが、家業の手伝いをするように言われていて、2年間の期限を決めて地元に残り、美容師を目指すことにしたんです。
――地元・山梨県で就職したサロンの決め手は?
ゆくゆくは東京で美容師をしていくことを考えていたので、技術・接客・評判がトップのサロンで働きたいと思っていました。探したところ、山梨県でも評判が高く、人づてでしか採用していないサロンがあり、「ここだ!」と思って直談判をしに行ったんです(笑)。
――勇気ある行動ですね。それから2年間のアシスタント勤務を経て、なぜ原宿へ?
当時から将来的にフリーランスで働くことを視野に入れていたため、都内でも激戦区である原宿・表参道のエリアを選びました。
――原宿で働いていたサロンのコンセプトを教えてください。
韓国テイストのサロン。今やそういったサロンは溢れていますが、まだ浸透する前に打ち出していたので話題性がありました。
僕はフリーランスで活動しようと考えていたし、それには周りから一線を画すスタイルを築かなければいけないと思っていたので、あえてサロンの意向とは違う「大人の色気」をテーマにしたスタイルを打ち出すことにしたんです。
サロンとしても全員が全く同じスタイルを得意とするより、誰か違うテイストができた方が持ち味にもなると思ってくれたようで、受け入れてくれました。
原宿で念願の美容師に。自分の理想の働き方を求めてフリーランスに転身
――なぜフリーランスで働くことを目指したのですか?
最近のサロンは昔に比べて働き方が見直されていますが、以前はそうでもなくて…。僕が働いていたときって、朝から晩まで拘束されるわりに安い給料で、食べるのにも一苦労な時代。さらに僕は施術以外にも、店舗の材料発注や経理周りも任されていて、店長の次に責任のある立場なため、負担も大きかったんです。
この先もこんな環境下で続けていくのは厳しいと感じたし、憧れて美容師になったのに嫌いになっては本末転倒だと思い、フリーランスの働き方に着目したんです。
――フリーランスとして活動すると決めてから、どんな準備をしましたか?
フリーランスになるためには、実力や特徴などがないと難しいと考え、まずは自分が得意とする手技を磨き、技術面の向上に力を入れました。メンズメニューではメンズパーマを強化したり、レディースメニューはサロンで身につけた韓国風のスタイリングに力を入れて打ち出したり…。韓国スタイルの人気が継続していたので、メニューに加えました。
――集客はどのように?
以前働いていたサロンのお客様と事前にInstagramで繋がっておいて、フリーランスになった直後に「フリーランスで美容師を始めました」と、告知をしたところ、認知してもらえて集客に繋がりました。
あとは仕上がりを気に入ってくださってか、お客様の友人・知人様を紹介いただくこともあります。口コミで広がっていくのはとても嬉しいですね。
――実際にフリーランスで働いてみて、良かったと感じますか?
そうですね。「一対一でゆったりと施術してもらえる」などのお声を多くいただいています。また、以前に勤めていたサロンは韓国テイストを全面に打ち出していましたが、「大人の色気」を演出するスタイリングがウリの僕を指名していただいていたお客様からすると、今の方が通いやすいとも(笑)。とにかく、お客様が来店しやすい環境を整えられて良かったと感じます。
以前は「作業」になってしまっていましたが、フリーランスの働き方にしたおかげで美容師として誇りを持って自分らしく働けるようになりました。何より、サロン勤め時代と比べて自由に予定を組めるので、仕事がしやすい。ひとりだと、自分とお客様のことだけを考えていればいいですし、お客様と向き合える時間が増えたことで、満足度も高い評価をいただくようになりました。
――お客様が定着した秘訣は、時間をかけて向き合えたからなのですね。
それもありますが、こまめに連絡をとっていたことも良かったのかなと思います。例えば来店される前だと「どのメニューが希望なのか」を具体的にお伺いし、退店されたあとはお礼のメッセージを送るようにしたら、リピート率も上がりました。
フリーランスはお客様と僕だけの空間。一対一の関係ですから、積極的に交流をするようにしています。
都内でも激戦区のサロンで働き、美容師への憧れを保つために、基盤を作り上げてフリーランスの道に進んだ深沢さん。どんなに好きな職業でも自分が働きやすい環境づくりをすることが、とても重要なことだと感じました。後編では、フリーランスでありながら、業務委託としても働くことになった経緯と売上の変化、フリーランス形態で働くうえで経験しておいた方がいいことや今後の目標を伺います。
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/SHOHEI
Salon Data
住所:東京都渋谷区神宮前5丁目16−13
mail:suzusuki.and.susuki@gmail.com