マイナスを強みに変える!ケミカルに強いサロンとしてファンの厚い信頼を獲得【ZACC代表・高橋和義さん】#2
1988年に始まったZACCの歴史。高橋和義さんは常に第一線で美容師・ヘア&メイクアップアーティストとして活躍なさっています。
前編では大学を中退してへア&メイクアップアーティストになる目標を定めたこと、無給の小さな仕事をも引き受けて人脈を築づく努力を惜しまなかったことなどをご紹介しました。後編ではZACCオリジナルの商品を開発するようになったきっかけ、青山に集約させた店舗が今、銀座に続いて神宮前と広がっている理由などを伺います。
敏感なご自身の肌を実験台に、誰もが安心して使える商品を開発
――ZACCと言えば、カットやパーマの技術の高さだけでなく、クオリティの高いオリジナル商品もよく知られています。
独立して2~3年経った頃から、オリジナルのシャンプーとコンディショナーを販売するようになりました。その当時はブリーチやハイトーンは髪にかかる負担が大き過ぎて、ダメージと背中合わせでした。そこで、やりたいことを、髪にダメージを与えないように取り入れるにはどうすればいいか…その答えを探すために、薬剤の研究を始めました。
僕が始めたころは薬剤を研究している美容師は少なかったんですが、今は増えましたよね。メーカーさんも薬剤に詳しい美容師を育てるようになりました。でも、メーカーさんが育てると、どうしてもそのメーカーの色に染まってしまう。一定の商品には詳しくても、他の薬剤や他社の商品についてはまったく知らない、偏った知識になってしまうんです。僕はメーカー色に偏らない、いろいろな薬剤について考えられるようになりたいと思っていました。
――オリジナルの商品を手がけようと思ったきっかけは何ですか?
誰にも負けないケミカルの知識は、自分の武器になると思っていました。当時はもちろんネットが普及していませんでしたから、図書館で薬剤の成分や効果を調べたり、取引のあるメーカーさんに聞いたりして、必死に勉強したものです。
――ZACCオリジナルの商品は効果がすぐに実感できて、しかも肌や髪に負担がかからないと評判です。
僕自身、アレルギーがあって肌が敏感なんです。僕の肌で試してみて大丈夫だったら、他の人の肌でもほとんどいけると思います。
もし、自分にアレルギーがなかったら、肌が敏感な人に合うか合わないのか分からなかったでしょうし、ここまで真剣に取り組まなかったかもしれません。商品開発には自分のマイナスな部分がプラスになっているんでしょうね。
必死に勉強したおかげで、1990年代にはケミカルに詳しいサロンに成長しました。業界誌からも注目されるようになり、ZACCというサロン名が次第に認知されるようになったのもこの頃です。歌手やタレントさん、女優さんからの依頼が増え、他のサロンでは手に負えない…という方々が来店してくださるようになりました。
すべてに一番を目指すのではなく、誰にも負けないものを1つ作るのが成功の秘訣
――仕事に向き合う姿勢はもちろんですが、商品開発に対してもこだわりを感じます。
ザックイズムをどれだけ持てるか、ですね。人がやらないことをやり続けただけです。
――高橋さんが考えるザックイズムは何ですか?
ZACCが提案するスタイルはナチュラルがベースです。サロンで作ったスタイルをご自宅で再現できなければ意味がありません。そのためには健康に近いコンディションを保つことが大事。健康に見える=ナチュラルに美しいことなんです。無理をしなくても再現できることをテーマにしています。
僕が作っているヘアケア商品は、ダメージを受けた髪をいかに健康に近づけるのかを目標にしています。
――常にトップを走り続けるには、何が必要なのでしょうか?
この業界、辞める人はたくさんいます。「美容が好き」、「美容師という仕事が好き」で、努力して何かを作り上げるのが好きな人は残ります。
スタッフには、「努力なくして成長なし。成長なくして成功なし」と繰り返し言っているんですよ。この言葉に共感してくれる人がサロンに残っていますね。もっと簡単に安易にお金を稼げる手段を探している人は、すぐ辞めてしまいます。
――銀座店に続いて神宮店もオープンしました。どんどん拡張していますね。
スタッフの中には独立を目指す人もいます。今までは1つにまとめることを考えていました。でもまとめると、そこから出たがる人が増えるものなんですね(笑)。
銀座も神宮も小さな店を出店して、スタッフに独立してもらっています。僕だけが代表ではなく、代表がたくさんいて夢を共有できるような会社にしたい。自分がいなくても事業が続いていく状況にしたいんです。あと4~5年で叶うと思います。
僕は人を育てるというより、信念を託す…というスタンスで仕事をするようになりました。
――これから美容師を目指す人にアドバイスをお願いします。
現代の人たちはうらやましいくらい器用。美容技術が簡素化したこともあって、美容師に必要な技術の7割は見よう見まねで習得できます。もし自分がトレンドを作る立場を目指すなら、この7割が始まりです。技術習得の8割の壁は厚くて高い。しかもクリアしてもその後にまた壁があるかもしれません。自分の理想像を忘れずに、諦めずに努力してください。走ることを止めれば、それで終わり。歩いてもいいから、少しずつ進んでいけば、必ず実を結ぶ日はやってきます。
撮影/古谷利幸(F-REXon)
高橋さんが実践したの成功の秘訣
1.ムダに見えるような仕事を引き受けて人脈を築く
2.人のやらないことを見つけて、とことん深掘りする
3.スタッフと夢を共有し、自身の信念を託す
お話しを伺ったのは…
ZACC代表
高橋和義さん
山野美容専門学校を卒業後、都内サロンを経て1988年ZACCをオープンさせる。1991年にはZACCオリジナルのシャンプー&コンディショナーの開発を手がけ、以後30年かけて進化させ続けている。2002年にはジャック・デュサンジュの特別講師となり、2007年までアートディレクターを務める。海外でヘアショーを開催するほか、「Japan Hairdressing Awards」の審査員を務めるなど、その活動は多岐にわたる。