大舞台でもプランは立てない。「その日の気分」をつかみ、新鮮な驚きを提供。ヘアメイクアーティスト memiさん
セット専門サロン「SET SALON Clear」でオーナーを務めながら、キャバクラ嬢やインフルエンサー、芸能人、モデルなど第一線で活躍する人からの指名され続けている、ヘアメイクアーティストのmemiさん。前編では15歳で美容に入ったmemiさんが、どのように活躍の場を広げてきたのかを伺いました。
後編ではmemiさんが、第一線で活躍する顧客に指名される理由をお聞きします。何が指名につながっているかをお聞きすると、返ってきたのは「当日までプランは立てないこと」という意外な言葉。その真意とは?
今回、お話を伺ったのは…
memiさん
「SET SALON Clear」オーナー/ヘアメイクアーティスト
15歳で美容の道に入り、19歳でセット専門サロン「SET SALON Clear」に入社。初めて参加した雑誌の撮影がきっかけで評判となり、現在はキャバクラ嬢やインフルエンサー、芸能人、モデルなど第一線で活躍する人からの指名され続けている。2022年には「SET SALON Clear」のオンラインサロンを立ち上げ、技術を公開。美容業界の発展にも力を入れている。
指名の理由は「今日はどうしてくれるんやろ」のワクワク感
――第一線で活躍している方からの指名も多いそうですが、心がけていることはありますか?
具体的に心がけていることは細かく色々あるのですが、大まかにいうと毎回、何か驚きを与えられることが大事だと思っています。押し付けるだけではだめで、提案も必要。安定感も必要だけれど、新鮮さも求めている。この微妙な加減が重要です。
また第一線で活躍している芸能人の方、モデルさん、インフルエンサーの方、キャバクラ嬢の方というのは、とても特殊でエネルギーがすごく強いんですよ。だからそのエネルギーに負けない気持ちを持って挑むようにしています。
――驚きを与えるために、具体的にはどんなことをされていますか?
その方が今、何を求めているかをその場でこちらが見つけることです。だから私はプランを事前に立てることはほとんどありません。その方に会ったときに、その日の気分、その日のコンディションから何を求めているかを判断して、組み立てていきます。あとはその日の顔のコンディションの見極めも大事ですね。本人が気にしていることをカバーできるメイクや髪型を心がけます。もう1つ大事なのが、何を主役にしたいと思っているかということです。顔なのか、服なのか。その基準は人によって決まっているのではなく、日によってかわっていくものだと思っています。
――プランを立てないで当日を迎えることを、プレッシャーに感じることはありませんか?
そういうときも、ごくたまにはありますが、ほとんどの場合は楽しく仕事ができていると思います。私、何があってもあまり動じることがないんです。それはこれまでも臨機応変に現場をくぐってきたからかなと思います。たとえばアイロンとかコテを忘れて現場に入ってしまったときもあって(笑)。でもそこでどうあがいてもアイロンが出てくるわけではないので、なくてもできる方法を考えるしかない。そういう対応を繰り返すうちに、プレッシャーもなくなってきたのかなと思います。
あとは事前に決めておいても、その通りにいかないというところも大きいですね。みなさん毎日気分が変わるので(笑)。なのでモデルさんたちも当日どんな髪型になるかを全く知らないことがほとんどです。それが「memiちゃん、今日はどんな感じにしてくれるんやろ」というような、ワクワク感につながっているのかなと思いますね。
流行りを追うのでなく、生み出すことが使命
――キャバクラ嬢であるみゆうさんの引退式で作られた、ティアラからお団子を出すヘアスタイルが斬新でした。こういったヘアスタイルはどのようにして生み出しているのでしょうか?
その方の好きなテイストを、アイテムをメインにして考えていくことが多いですね。みゆうさんのときは、ティアラというアイテムを最初に決めていて、そこから「今までにない形」を目指して考えました。
私が抱えている顧客さまは圧倒的に目を引く人、華がある人で、言ってみれば歩く広告塔のような方たちばかりです。その方たちにだれかの真似のようなスタイルをさせるわけにはいきませんから、私が流行を追いかけるのでは絶対にだめで流行りを生み出していく意識を持っています。筋盛りが流行っている最中に、そろそろ次の一手をと思い始めたのが、頭の下のほうにシニヨンを作るナチュラルなテイストのヘアセットでした。そのあとに流行ったリボンを使ったアレンジも、私が生み出したという自負があります。髪の毛の巻き方ひとつをとっても、常に新しい巻き方を模索していますね。
――流行を生み出すには、どうすればいいのでしょうか。
何十年も何百年も変わらない、みんなの目を引く方程式が頭のなかに入っているので、それを少しずつ変えて流行させるという感じですね。ちょっとずつ変えながら試して、そのなかから評判のいいものを広げていくというイメージです。
夜のお仕事をされている方というと、世間的には下に見られるようなこともあるかもしれませんが、そこで働いている方たちってやっぱりすごく目を引く存在だと思うんです。歴史を振り返ってもそうで。たとえば花魁。恥ずべき仕事とされてきましたが、最高に着飾って、まつりあげられて、だれもが一度でいいからあんな髪型をして豪華なものをつけてみたいという願望がどこかにあると思うんです。だから、その流行が段々と世間の人たちにおりていく。現代もまったく同じで、夜の世界で流行ったものが一般社会におりていくんだと思っています。
ヘアメイクとエンタメで大阪を盛り上げていきたい
――最後に今後の目標を教えてください。
目標ややりたいことはたくさんあって、それを1つでも多く実現していきたいと思っています。その1つがヘアメイクとエンタメで大阪の活性化、経済活動のお手伝いをすることです。大阪を盛り上げる活動をしたいというのが私の昔からの夢で、万博の開催に向けて自分がそこに携わっていきたいと思っています。先日もうちの会社と大阪の吉村知事の開いた会議に参加させてもらったのですが、その一歩が踏み出せていると思うと本当にうれしくて。
あとは日本から出て、どこにいても仕事ができるようになるというのも夢ですね。日本は大好きなのですが、世界のいろんな場所に行って、さまざまな感性を取り入れていきたいですし、刺激を受けたいと思っているんです。今、ヘアメイクアーティスト10人ほどと連携しながら働いているので、私が海外に行っている間に、日本の現場に行ってもらったり、その逆をしたりというようなことができればいいなと思っています。
去年「SET SALON Clear」でオンラインサロンを立ち上げたので、私の技術を公開しながら、美容業界の発展にも貢献できたらうれしいですね。
memiさんが第一線で活躍するモデルに信頼される3つのポイント
1.事前にプランを立てず、毎回驚きを与えるような提案をする
2.何が起きても動じず、臨機応変に対応する
3.流行を追うのではなく、流行を生み出す意識を持つ
ストイックに仕事をされているmemiさん。その根本にある思いをお聞きすると「人のため」だと教えてくれました。ヘアスタイルやメイクが求めている通りになって少しでも満足してもらいたいと考えているそうです。この思いも第一線で活躍する人に指名される理由なんだと感じました。