新人時代に悩んだ心地よい時間づくり。精度の高いカウンセリングで心を掴む・「♢at’LAV♢by Belle」美容師・宇梶祐市さん
表参道に店を構えるヘアサロン「♢at’LAV♢by Belle」で店長を務めながら、プレイヤーとしても活躍している宇梶祐市さん。メンズスタイルに特化し、お客様ひとりひとりにあわせた骨格補正カットを得意としています。
そんな宇梶さんはもともと調理師を目指していたそうですが、高校在学中にヘアスタイルに興味をもち、美容師の専門学校へ。親の反対を説得しての入学となったため、学生時代は放課後に自主練をしたり、学内活動にてリーダーを担ったりと積極的に活動していました。入社後の新人時代には悩みが多く、特に女性のお客さまの気持ちに寄り添うことを苦手だと感じていたそうです。その結果、苦手なものに無理に向き合っても精神的負担になると考え、宇梶さんはメンズ特化に移行しました。
カウンセリングでは、どんなお客さまでも答えやすいよう「はい」か「いいえ」で答えられる簡単な質問を繰り返すことで、理想を汲み取っているようです。
今回、お話を伺ったのは…
「♢at’LAV♢by Belle」美容師・宇梶祐市さん
栃木県出身。栃木県にある「足利デザインビューティ専門学校」を卒業後、「♢at’LAV (現:♢at’LAV♢by Belle」に2014年入社。現在は、スタイリストとして活躍しながら店長としてスタッフの指導や統括を行なっている。メンズカットに特化しており、骨格補正カットに定評がある。
国家試験に特化した技術磨きに取り組んだ学生時代
――学生時代はどのように技術を磨いていましたか。
通っていた学校のカリキュラムが国家試験対策に特化していたんです。そのため、ウィッグを相手に国家試験の実技課題である、カットや髪を巻くワインディングなどの技術に主に取り組んでいました。なかでも、特に磨いていたのはワインディング。放課後に同級生と集まって、タイムを意識した練習「タイム巻き」や質を意識した練習「キレイ巻き」などを行なっていましたね。1人ではなく大人数で楽しく練習できていたため精神的にも辛くなく、不器用な僕でも数を重ねて技術を向上させることができたんです。
――いつから美容師を目指すようになりましたか。
高校生の頃からですね。調理師免許を取得できる学校に通っていたこともあり、もともとは調理師を目指していました。ですが、調理師の資格取得を目指して職場体験や実習を経験していく間に、調理師として働く将来への不安が湧いてきたんです。そんな精神状態の時にファッションやヘアスタイルに強く興味を持ち、美容師を仕事にしたら楽しい人生を過ごせそうだと思ったのがきっかけでした。
――親御さんの反対はありませんでしたか。
ものすごくありました。突然、言い出したので、「一時の感情で決めるのはやめたほうかいい」と反対が強かったですが、粘り強く何度も説得を重ね、了承してもらうことができました。その反対があったからこそ意志が強くなって、専門学校へ入学後もほぼ毎日のように放課後の練習に臨んだり、学内活動のリーダーを担ったりと積極的になれたと思います。
苦手を受け入れ、得意を大切にすることでたどり着いた理想の美容師像
――入社後1年目は順調でしたか。
いえ、順調ではありませんでした。すべてにおいて苦労しましたが、特に女性の接客、悩みに対する施術が苦手で…。僕が女性ではないため、女性の皆さんが日頃抱える髪の悩みがわからず、女性の気持ちになって理想を汲み取ったり、お客さまに合ったスタイルを提供したりすることが難しいと感じていました。
――それはどのように乗り越えたのですか。
乗り越えるというより、方向転換したんです。はじめは女性の気持ちを意欲的に考えたり、業界誌を読んだりして学んでいましたが、苦手なことに無理に向き合ってもお客さまに上質な施術を提供できないうえ、僕の精神的にも負担になると考えたんです。そこで、メンズ特化に移行する決断をしました。
――入社してみて感じた学生時代との違いは何ですか。
自分の行動次第で未来が決まる点です。学生時代は取り組むカリキュラムが決められていて、先生もいるため何があろうと取り組めました。ですが入社後は、何を努力して、どんな美容師を目指すかなど、進む未来がすべて自分のやる気や行動次第で決まるようになります。どんな結果も自己責任になることが、学生時代と社会人との大きな違いだと感じました。
短時間で正確に理想を捉える。寄り添ったカウンセリングで心地よさを提供
――新人時代、ほかにも悩んだことはありますか。
美容師になる前は居酒屋などでバイトをしていたのですが、そういった接客業とは違い、美容師はお客さまと1対1で時間を共有します。その中で、「どうしたらお客さまが居心地の良い時間を作ることができるか」ということに悩みました。
――どのようにしてお客さまに居心地の良さを提供していたのでしょうか。
僕がお客さまに対して真剣に向き合っているという姿勢を見せれば、お客さまも心地よく過ごしていただけると考えたんです。そのため、何に悩んでいるのか、何を求めているか、理想のスタイルは何か、といったことをカウンセリングで丁寧に汲み取り、お客さまに信頼や安心感を覚えてもらう努力をしていました。
――カウンセリングにおいて工夫していることは何ですか。
精度をあげるためにじっくりと時間をかけてカウンセリングを行うのが理想ですが、人によっては長いカウンセリングを嫌う方やうまく理想を伝えられないという方もいます。そのため、短時間で精度の高いカウンセリングが行えるよう、前髪の長さと耳周り、バックの3点のみを聞いたり、「はい」か「いいえ」で答えられる簡単な質問を繰り返して、理想を汲み取るようにしているんです。
宇梶さんが新人時代に悩んだ3つのこと
1.異性のお客さまの理想を汲み取り叶えること
2.お客さまにとって居心地の良い時間づくり
3.接客と並行して技術スピードも向上させなければならないこと
後編では、宇梶さんの新人時代の技術の磨き方やデビューまでに意識して取り組んでいたこと、入社前にやっておくといいこと、入社したばかりの方へのアドバイスなどを伺います。
Salon Data
住所:東京都渋谷区神宮前3-28-3
電話:03-6432-9103