人を大切にする教育&運営が強みになる【FILMS 代表 若林紀元さん】#2

美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな方へ成功している先輩オーナーの経験談を全2回でお届けする本企画。

前回に続き、2017年に共同代表というかたちで独立開業した、人気ヘアサロン「FILMS」の代表 若林紀元さんにインタビュー。前編では、共同代表のメリットと、開業に必要な心構えを教えていただきました。

後編では、開業からの理念でもある「人が辞めない組織作り」と、昨年オープンしたセカンドブランド「foto」を通した経営戦略について教えていただきます。

お話を伺ったのは…

FILMS 代表 若林紀元さん


専門学校卒業後、山梨県内のサロンに勤務。上京し、表参道の有名サロン2店舗を経て独立。2017年9月「FILMS」を銀座にオープン。現在は芝浦、新宿、柏、渋谷に店舗を展開、2021年9月にセカンドブランド「foto」を新宿にオープン。2022年5月「FILMS Shibuya」オープン予定。
若林さんのインスタグラム:@norimoto_wakabayashi

独立のきっかけになった「人を大切に」という気持ちは変わらない

現在スタッフは55名。
スタッフ同士の雰囲気のよさもFILMSの特徴です

――開業当初から掲げる「人が辞めない組織作り」は経営戦略としての面もあるのでしょうか?

経営戦略が目的ではありませんが、やっぱり独立を考えた当初の気持ちである「人が大切」というのは、経営にとってもすごく重要なところだと思います。人が辞めてしまうとか、入ってこないとなると、そもそも経営面にはかなりのダメージですから。

――「人が辞めない組織作り」のために続けていることは?

組織作りの考え方としては、①価値観の共有 ②透明性があること ③従業員にもサービスをする、という3つを柱にしています。これらを踏まえた上で取り組んでいるのは、採用から大切にするということと、体調のケア、働きやすい環境づくり、働きがいづくりの4つです。

採用で大切にしているのは、その段階から価値観を共有していただけているかという点。そのためにリファラル採用(紹介制度)を推進しています。紹介してもらったら会社から紹介料も払うんです。紹介だと、信頼関係のスタートが違うんですよね。今働いているスタッフの半数近くは紹介で採用しています。

――働く前からの価値観の共有が大切なんですね。

はい。働き始めてからの取り組みとしては、ベースになっているのは体調のケアです。例えば、美容師は食事より服や交遊にお金を使いがちなので、昼食だけでもしっかりとれるように弁当を出しています。また早朝や深夜の練習をなくすために、その練習量を1日で完結できるアカデミーを開設しました。人間ドックの補助や生理休暇なども取り入れています。

働きやすさとしては、やっぱり人間関係がすごく大切なので、コミュニケーションを重視して施策をうっています。例えば自分の技術の進捗や抱えている悩みなどを出せる場として、役職のあるメンバーとの1on1ミーティングを全スタッフが毎月行います。その精度を上げるために、役職メンバーには講師を入れたコーチングの勉強会もしているんです。

少し前には、コミュニケーション道徳というイベントも行いました。会社が経費を出すから、ふだん関わらないスタッフとコミュニケーションをとろうという施策で、150回くらい関係づくりの場が生まれました。いろんな考えを持っているスタッフがいると知り、話してみることでスタッフ同士の距離感が近づいて、団結力につながったと思います。

また働きがいを作るには、自己実現と自己成長という未来の話が大切になります。そのためには、キャリアプランをしっかり作ること。未来の道としてプレイヤーだけでなく、いろいろなことに挑戦できるようなコースをいくつか作っています。

――キャリアプランとして独立を考える人もいるかと思います。

もちろんいますし、そこは応援しています。なるべくグループでやっていただくのが、すごくありがたいなとは思っているので、FILMSとしてフランチャイズやグループでの他事業展開というところをオーナー制度として取り入れているんです。

その他事業コースで、昨年9月にセカンドブランド「foto」をうちのスタッフが立ち上げました。

セカンドブランドは独立支援&経営戦略のひとつ

2021年9月、新宿にオープンしたセカンドブランド「foto(フォト)」。
シンプルなサービスと、カット¥4,950~というリーズナブルさが特徴

――セカンドブランド「foto」の経営戦略を教えてください。

「foto」は、コロナ禍で収入が減ったお客様が出てきた中で、FILMSとして何かできないか、というのが発想の原点でした。FILMSは高価格帯のため、1〜2カ月に1回通うのが厳しくなり来店間隔があいてしまう。そこに対して、FILMSではできなくても、セカンドブランドならできることはあると考えました。

FILMSの技術はしっかりと継承しつつ、サービスや空間をシンプルにさせてもらうことによって、価格面に還元する。そこがスタートでした。

そこから戦略を考えていくなかで、FILMSよりも出店スピードを早く展開できるかたちで作ることにしました。FILMSでは出さないであろうエリアや出しにくいエリアへの出店も、今後の展開として考えられるなと思っています。

――FILMSの店舗展開として、4店舗目となる柏店(2021年1月オープン)は少し意外でした。コロナ禍で地方出店するサロンも増えていますが、早かったですよね。

柏店は、すごく信頼できるスタッフが「柏で出店したい」と話を持ってきてくれたんです。時期的にもコロナ禍になったくらいのころで、なかなか東京に人が来なくなるなとは思っていたので、ちょうどタイミングが良かったと思います。

戦略的な話をすると、今後FILMSを展開していくうえで、「これをやっておけば大丈夫」という技術と運営のパッケージを作っておきたいなと思っていたところだったんですよね。いろいろチャレンジしていたんですが、もう出店しちゃったほうが早いなっていうのもあって(笑)。その一環として、柏店はスタッフがみんな中途採用なんです。それでもきちんとクオリティが担保できるかたちを作るというのが裏テーマでした。

2店舗目(田町・芝浦店)という早い段階で、人流の多いターミナル駅ではなく地域に密着するサロンを作るという経験も積んでいます。くわえて柏店で運営のパッケージづくりができたのは、すごく良かったです。今までの経験を踏まえて、ゆくゆくは地方での出店や、スタッフの地元での出店というのも視野に入れています

ブレずに、ずるをせず。理念に真摯に向き合い続ける

独立から変わらず「人を大切にする」という理念を
追求し続けている若林さん

――経営者として大切にしていることを教えてください。

「言行一致」と「首尾一貫」です。言葉と行動が合っているか、自分の信念をしっかり守ってブレていないかというのは、常に心がけています。

あとは、やっぱり透明性の追求ですね。嘘はつかない、ズルはしない。グレーなところも隠さずに、正しさを突き詰めていくというのが、経営者として大切なことだと思っています。

――今後の目標を教えてください。

理念やミッションの追求は、前提としてあります。また開業当初からの夢である海外展開は、コロナ禍で一度断念してしまったんですが、やっぱりどうしてもしたいのでどこかのタイミングで挑戦できれば。

あとは柏店でのパッケージづくりにもつながるんですが、地方再生事業みたいなことはしたいです。今後やっぱり地方のサロンは、どうしても求人や集客が難しくなっていくと思います。そこに僕たちのサロン運営と教育のパッケージを活用する。FILMSが持つストロングポイントで、困っているサロンを活気づけて再生していく事業にチャレンジしたいなと考えています。

独立を目指すあなたへ


独立開業が成功するかは、最後は自分といかに対峙できるか。いろんな誘惑や妥協に負けて失敗してしまう人が、すごく多いと思います。だから常に自分には強く厳しく!

また独立は自分に向けていた矢印を、他者に向けることだと思います。お客様や従業員、その他関わっている人たちに矢印が向けば、喜びや楽しさを分かり合える。それが何より充実感と幸せを与えてくれることだと、この5年でますます感じるようになりました。

独立があなたにとって、自分から他者に目を向ける良いきっかけになると良いなと思います。そして人を大切にする良いサロン、良い会社が増えていくのを楽しみにしています
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取材・文:山本二季
撮影:米玉利朋子(G.P.FLAG)

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Salon Data

FILMS GINZA(フィルムス 銀座店)
住所:東京都中央区銀座1-8-7 VORTGINZA6F
TEL:03-6263-2966
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