とにかく観察。そこから足りないものを見つける【ZACC スタイリスト 定岡広樹さん】#1
スタートラインに立つとき、壁にぶち当たったとき、先輩たちはどうやって道を切り開いたのかを紹介するこの企画。今回はZACCのスタイリスト、定岡広樹さんにお話しを伺います。
前編では、生まれ育った関西を離れて上京したこと、数ある美容室の中からZACCを選んで就職した理由、アシスタント時代から心がけていた「見て学ぶ」姿勢について語っていただきました。
お話しを伺ったのは…
ZACC スタイリスト
定岡広樹さん
2017年に神戸ベルェベル美容専門学校を卒業後、ZACCに入社。ZACC vieサロンマネージャー、大野喜郎氏のアシスタントを経て‘22年にスタイリストデビューし、現在に至る。
入社の決め手は、代表にも自分と同じ肌悩みがあったこと
――定岡さんが美容師を志したのは、どんなきっかけが?
ずっとサッカー選手になるつもりで生きていましたが、高校2年生の冬に足首を骨折してしまったんです。もうサッカー選手にはなれない…ではどうする?と、いろいろ考えました。「デスクワークはしたくない」、「カッコよく歳を取りたい」、「好きなことを仕事にしたい」と自分の中で条件を立てて、残ったのが美容師でした。
――ご出身は神戸なのに、なぜ表参道で就職を?
神戸の街は好きだし、サロンの雰囲気もいい。でも規模が小さいんです。かといって大阪のギャルっぽい雰囲気は好きになれなくて。それで学校の先生に東京のサロンをいくつか教えてもらいました。
――その候補の中にZACCは入っていたんですか?
入っていました。僕は個性を押し出すタイプではないフツーの人間だし(笑)、ナチュラルなスタイルが好きなので、原宿より表参道のサロンがしっくりきました。
――いくつかサロンを見学して、ZACCに決めた理由は何ですか?
代表の高橋和義がケミカルに強いことですね。僕が就職をした7年前は、サロン発のヘアケア剤は珍しかったんです。しかも、ZACCのヘアケア剤はメーカーと一緒に作るのではなく、イチから考えてメーカーに発注しています。そこが素敵だと思いました。高橋は今でも新しいものを作り続けているし、現役スタイリストとしてサロンワークもしている。これもすごいことだと思いましたね。
――定岡さんは商品の開発にも興味があるんですか?
実は僕、アトピーで肌が荒れやすいんです。高橋は髪や肌に負担をかけない商品を開発しています。ここでならキレイな髪を作れるんじゃないかと興味を持ちました。
サロン見学をしたとき、当時のスタイリストから高橋も肌が弱いことを聞き、周りのスタッフにもそういう部分の気遣いをしてくれることも、入社を決めた理由の1つですね。
――アシスタントになると、シャンプーで手荒れがひどくなる話を聞きますが。
僕も覚悟しましたが、「ロイヤルタッチ」という手袋のおかげで乗り切ることができました。手荒れのひどい人はゴム製のグローブをしてシャンプーするようですが、お客さまには分かってしまうんです。頭皮に当たる感触が気持ちよくないみたいで。
アシスタント1年目からこの手袋でシャンプーをしていますが、お客さまに気づかれたことはありません。アシスタントの半分はこの手袋を使っているんじゃないかな。他のサロンにもこれがあれば、辞めてしまうアシスタントが減るのになぁと思います。
同期はライバルであり同志。できる人を観察して学びとる
――アシスタント時代でいちばん辛かったことは何ですか?
モデルハントでしょうか。当時からSNSでモデルを探す人もいましたが、僕はインスタをまったくやっていなくて苦戦していました。
他のサロンに勤めていた女の子と一緒にモデルハントに行くと、反応がぜんぜん違うんです(笑)。同性から声をかけられると「何だろう」と思ってくれる。僕の場合、身体が大きいせいもあって怖がられたり、ナンパだと誤解されたり。モデル探しはネックでした。
――アシスタントからスタイリストになるまで、決まったカリキュラムはありますか?
だいたい3年で終わるようにカリキュラムが組まれています。僕はカリキュラム通り、4年目でスタイリストになりましたが、半年から1年ほど遅れるケースもあります。
――レベルアップするのに練習は欠かせませんよね。毎晩遅くまで練習しましたか?
営業後の練習は週に3日。モデルを使ってカットやカラーの練習をしていました。個人練習は朝でしたね。コロナ前は12時オープンだったので、毎朝9時から練習していました。
――定岡さんが入社したとき、同期は何人でしたか?
入社したときの同期は14人で、スタイリストになったのは8~9人です。僕の代は多いんですよ。僕の1つ上の代は10人入ってスタイリストになったのは3人、下の代は10人入ってスタイリスト1人プラス、アシスタント5年目が1人ですから。
――定岡さんの同期は結束力が強いんでしょうか?
どうでしょう(笑)。全員、個が強くてライバル意識も強かったかもしれません。でも仲もいい。営業中によく話をするのは、やっぱり同期ですね。
――カリキュラムをクリアするために、どんなことをしましたか?
先輩の技術を見ました。同期の中で僕より早く進んでいる人の技術もよく見ました。自分とは何が違うのか、よく観察しましたね。もちろん、ただ見るだけでは身につきません。実際に個人練習で試して、身につけていました。今でも、先輩の動きをよく見るようにしています。
サッカー選手になる夢を絶たれ、美容師への道を選択した定岡さん。神戸ではなく表参道でスタートラインに着きました。
後編ではZACCのナンバー2、大野喜郎さんのアシスタントに抜擢されたこと、思い描いている将来設計について伺います。
撮影/古谷利幸(F-REXon)