スタッフの幸せとお客様の幸せ、両方実現できてこそ独立した意味がある【ElEn.代表 奥村一輝さん】#2
ワーホリでの海外生活やアパレル会社でのサラリーマン、大学と美容学校のダブルスクールを経て、美容師になった奥村一輝さん。「人がやらないことをやる」「やれることは全部やる」というマインドでスタイリストとして結果を出してきました。現在は池袋にある「ElEn.(エレン)」でオーナー兼プレイヤーとして活躍中です。
この後編では、「ElEn.」に込めた思いやサロンづくりのこだわり、美容師という職業の醍醐味や今後の目標などをお聞きします。
お話を伺ったのは…
ElEn.代表 奥村一輝さん
大学在学中に日本美容専門学校の夜間部で学ぶ。卒業後はK-twoに入社。2011年スタイリストデビュー、同年に銀座店へ移籍。銀座店の代表と池袋店の代表を歴任し、2017年に役員就任。2023年、独立して池袋に「ElEn.」をオープン。顔タイプ診断×顔型診断をもとにした小顔カットで人気を集めている。
「素敵な縁を結ぶ」という願いを込めてElEn.と名づける
――2023年に「ElEn.」をオープンしましたが、店名はどのように決めたのでしょう。
いくつか候補がありましたが、その中でしっくりきたものをスタッフに提案してみて、みんなで話し合って決めました。造語なのですが、前半の「El」には「素敵な」とか「明るい」という意味があり、後半の「En」は「縁」です。人を大事にしてくれるスタッフが集まっているので、「明るく素敵な縁があるお店にしましょう」という気持ちを込めました。
オープンから1年で、大成功とまではいかなくても中成功くらいはしているんじゃないかなと思っています。多くのお客様に来ていただき、スタッフ数もスタート時の倍以上に増えました。それもみんなスタッフのおかげだと感じています。
――お店のコンセプトや、それを具体化するための取り組みについて教えてください。
「素敵な縁を結んで、関わる人が日本一幸せになれるようなサロンをつくる」というのがコンセプトですね。そのためにはどうすればいいのかを、みんなで考えながら進めていきたいと思っています。
人を幸せにすると言ってもボランティアではないので、まずはスタッフ一人一人が幸せじゃないとだめですよね。そこで、給与体系を改善したり、休みをしっかり取れるようにしたりしつつ、スタッフにも「短い時間の中で最大限の結果を出して、自分に返ってくるようにしましょう」と伝えています。それができた上で、お客様はもちろんお取引先のメーカーさん、メディアの方などにちゃんと返せるような自分になりましょう、と。
スタイリストやアシスタントのみんなが潤わないと、僕自身の利益が上がらない仕組みにしているんです。自分をかなり追い込んで(笑)。最初の1年はなかなか難しかったですけど、今年から少しずつ結果が出てきました。
――タイムパフォーマンスの高い働き方は、今まさに求められているものですよね。
なので、スタッフの技術練習も営業時間内にすべて行なっています。サロンのフロアがふたつに分かれているので、営業中に奥のスペースでアシスタントが練習して、手のあいているスタイリストがついて教えるという風に。接客の方でアシスタントが足りない場合は、ジュニアスタイリストがスタイリストをサポートすることもあり、臨機応変にやっています。
日頃から、何でも他人事にせず自分事と考えましょうということを伝えていますが、みんな嫌な顔ひとつせずちゃんと実践してくれています。本当に素敵な人たちが集まってくれたなぁと思うんです。
――素敵な人材を集められた理由は何だと思いますか。
僕に足りないものを持っている人たちがオープニングメンバーとして入ってくれたのが大きかったと思います。僕は至らないところが多いと自覚しているんですが、例えば「あの一言は余計だった…」と思う場面でもそれを汲み取ってくれるし、いろいろ先回りして動いてくれるし、人間力が高いんですよ。そのおかげで、その下の若い子たちも安心してついて来てくれるのかなと。
「似合わせ診断」に基づいた小顔カットで差別化
――メニューや施作で、ElEn.ならではの特徴があれば教えてください。
「似合わせ診断」がとても大きな特徴です。これは「顔型診断」と「顔タイプ診断」を組み合わせたもので、5種類の顔型と9種類の顔タイプに照らし合わせて、あなたにはこういう髪型が似合いますよとご提案するもの。最初のカウンセリング時に活用しています。
――タブレットでイラストや図解を見ながら診断してもらえるんですね。おもしろいし、わかりやすそう!
顔の黄金比率を基準にして、どこをどうカットすれば似合うか、小顔に見えるか、なりたいイメージに近づけるかをご説明します。専用の電子カルテにお客様の顔写真を入れて、そこに描き込みながら解説するのでわかりやすいですし、仕上がりイメージを想像しやすいと思います。
――「顔型」はよく耳にしますが、「顔タイプ」でさらに深掘りしているというか、似合わせレベルをより高めているんですね。
こういった施作をすべてのお客様に対してちゃんとやるには、気力も体力も必要。ひとりひとりのスタイリストがしっかり頑張っているからこそ、お店としてのブランド力になっていると思います。
あとは、トリートメントなどの商品開発やカラー剤のアンバサダーをさせていただいているので、最新の施術をいち早くできたり、さまざまなよい商材を組み合わせた独自の施術ができるというのも、お客様に喜ばれる特徴のひとつです。
美容師は魅力的な仕事であり、自分の趣味とも言えるもの
――美容師という職業の醍醐味は何だと思いますか。
自分の努力が結果として見えやすいところです。センスももちろん大事ですが、頑張った時間とそこに割いた体力がちゃんと反映される職業だなと思いますね。若いスタッフたちを見ていても、すごく努力している子はやはり遅かれ早かれ結果として現れてきます。
それと、お客様から直接「ありがとう」と言われる仕事というのも、大きな魅力。僕が携わったスタッフがお客様に喜ばれているのを見るとすごく嬉しいですし、その場にいるみんなでそれを感じながら働けるというのも幸せだなと思います。
――本当に素敵なお仕事ですね。奥村さんにとって、「働くこと」とは何ですか。
ひとことで言うと、趣味!
僕の好きなことって何だろうと考えたら、やっぱり美容師という仕事だし、そこに関わる人たち。だから、大好きで楽しいという意味で、趣味です。
――今後の夢や目標はありますか。
根本的な目標は、ElEn.に携わるスタッフが幸せになること、ここで働いてよかったと思えるようにすることです。
近い目標としては、今年度か来年度の早めに2店舗目をつくること。今はスタイリストが5人なのですが、アシスタントの子たちも頑張っているのでデビューさせてあげたいですし、そうなるとお店のキャパがだいぶ厳しいので。
ただ、こちらの店が黒字でも新店舗が赤字だとダメですし、それで僕がストレスを抱えてスタッフに嫌な接し方をしてしまったらどうしようなんて考えてしまうので(笑)、そういうマイナス要素がない状態で出せたらいいですよね。
――最後の質問ですが、夢や目標を実現させるための秘訣は何ですか。
まず一番重要なのは、自分の周りにいる人たちを大事にすること。お店のスタッフもお客様も、自分に関わる人をとにかく大事に。
そして、周りの人にとって必要とされる存在になること。これはスタッフにも言っていることです。「なくてはならない存在になることで、必然的に周りの人はあなたを助けてくれるし、裏切らないし、よいことが巡ってくる。周りの人にあなたが必要とされるような行動を常に意識してください」と話しています。
あとは、やりたいことや叶えたいことを口に出す。口に出すと行動に移すし、潜在意識も刺激されるし、助けてくれる人が現れます。
夢を叶えるための奥村さん流3大ポイント
1.自分に関わる人たちを大事にする
2.必要とされる存在になるための行動を意識する
3.叶えたいことは口に出す
撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子
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