顔を覚えてもらうために2ヶ月に1度、長崎から東京のサロンへ「QUQU」平山華蓮さん
渋谷にある美容室「QUQU」。その人だけに似合う唯一無二の施術がしてもらえると、人気を博すサロンです。そんな「QUQU」で働き始めて5年目になるのが、スタイリストの平山華蓮さん。
元々はパティシエ志望でしたが、事情があり断念。製菓の次に興味のあった美容師を目指すことになり、美容専門学校に通い始めました。東京のサロンでの就職を目指していた平山さんは、顔を覚えてもらうために、2ヶ月に1度、長崎から東京に通って施術を受けていたそうです。
そんな行動派の平山さんがデビューをするまでの、新人時代のお話を伺いました。
今回、お話を伺ったのは…
「QUQU」スタイリスト
平山華蓮さん
入社5年目。長崎県出身でブラックヘアが目印。パンクロックカルチャーと料理が好き。反骨精神をモットーに、エッジの効いたデザインとファッションでアーティストやミュージシャンからも支持を集めている。
パティシエ志望から美容の道へ
――平山さんはもともとパティシエ志望だったそうですね。
はい。ですが、家庭の事情で製菓の道に進むことが難しくなってしまいました。そこで、次に興味のあるファッション関連の道に進むことを決めました。
自宅から通えるという進学の条件を満たしつつ、ファッションに関連した美容専門学校に進学。2年間通学し、国家資格を取得して美容師になりました。
――美容師を目指すにあたって、何をモチベーションにしていましたか?
「東京や大阪などの都会に出て働いてみたい」という気持ちが大きかったですね。私が学生の頃はコロナが流行する前だったので、原宿などの街におしゃれな人がたくさんいたんです。「ファッションなどの文化が盛り上がっている場所に身をおいてみたい」という思いから、都会の美容室での就職を志しました。
美容師になるからには、一流になって名を上げたいという気持ちもあり、有名店での就職を目指しました。
代表・浦さんの唯一無二のスタイルに憧れて、就職を志望
――平山さんはどのようにして、サロンの代表の浦さんを知ったのですか?
美容専門学校の先生から「東京でがんばっている卒業生がいるから会ってみては?」と紹介してもらい、東京のサロン「otope」に行ってみることにしたんです。そこで代表を務めていたのが、現QUQU代表の浦でした。
――都会には有名店がたくさんありますが、そのなかでもなぜ浦さんが手掛けるサロンに就職することにしたのですか。
浦をはじめとした美容師さんたちが、素敵なサロンのなかでオリジナルなカラーを打ち出して働いている姿がすごくかっこよく見えたんです。その唯一無二のスタイルに憧れて、志望サロンを1本に絞って就活をしました。
――有名店への就職活動は大変だったのではないでしょうか。
そうですね。自分自身のアピール方法には特に苦心しました。まずは顔を覚えてもらいたいと思い、2ヶ月に1回は長崎から東京の「otope」に通い、現代表の浦に施術をしてもらっていました。1回の往復で8万円ほどかかり学生にはとても厳しい出費だったので、バイトをめちゃくちゃがんばっていましたね。
――他にも就職のために取り組んでいたことはありますか。
自分の影響力を上げたり、顔を売ったりしたいという思いから、雑誌やweb媒体、SNSなどのスナップ企画に取り上げてもらえるように会場に足を運んだり、ファッション関連のイベントに顔を出したりしていました。
当時住んでいた長崎から、スナップを撮ってもらうために福岡まで行くこともありました。その甲斐あって『HR』や『FRUiTS』などに掲載してもらったこともあります。
――平山さんのトレードマークといえばブラックヘア。平山さんのスタイルに惹かれて来店される方も多いと思うのですが、学生時代からスタイルを確立していたのですか?
学生時代は、自分自身も派手なカラーの髪をするのが好きでした。今のトレードマークであるブラックヘアを始めたのは社会人になってからです。
QUQUはブリーチをしてヘアカラーを楽しむお客様が多いのですが、一部に少しブラックの要素を入れるスタイルを提案することもありますね。
デビュー直後の失敗から学び、丁寧なカウンセリングを意識
――入社した後は、どんなステップで技術を習得していきましたか?
入社する数週間前に上京し、シャンプー講習を受けるところからスタートしました。またブリーチをされるお客さまも非常に多いので、ブリーチのリタッチも早々に習得しました。
それから、ブリーチ、カラー、パーマなどのモデル施術を実施し、カットの練習に入ります。その後は1時間以内に2名のお客さまを接客する、実践型の「サロンワーク試験」を受け、最後はヘアショーのようにクリエイティブなスタイルを披露する「クリエイティブ試験」を受けます。それらに合格できたら、晴れてデビューできるというシステムです。
――技術習得をするうえで、どんなところに苦労されましたか?
私は不器用なタイプなので、カット技術の習得、とくにレイヤーには苦労しました。毎日始業の1時間前にはサロンに来て、朝練を積み重ねて技術を習得しました。
――平山さんは入社してからどれくらいでデビューが決まったんですか?
入社して4年でデビューすることになりました。昨年の7月デビューなので、スタイリスト歴としてはちょうど1年くらいになりますね。
――デビューしてから課題に感じたことはありますか?
お客様へのカウンセリングですね。デビューして間もなくのころ、お客様と私の間で施術内容への認識の行き違いが生まれてしまったことがありました。ご納得いただける仕上がりにできなかったため厳しい口コミをいただいてしまい、とても反省しました。
――その課題を解決するために、どんな工夫をされましたか?
お客様が想像しているスタイルと私が想像しているスタイルに行き違いが生まれないように、画像を見ながら、丁寧に認識のすり合わせを行うようにしました。複数枚の画像を見せながら、例えば「画像のスタイルだと少し短すぎますか?」などと確認をするようにしています。
カラーについても認識の相違が生まれやすいので、お客様にカラーの画像を見せて、「このヘアカラーは赤っぽい黒に見えますか?青っぽい黒に見えますか?」などと聞くようにしています。色の見え方は人それぞれなので確認をして、お客様に見えている色に近い仕上がりになるように心がけています。
先輩がこの方法で色の確認をしている様子を見て、いいなと思ってマネさせてもらいました。
平山華蓮さんが大切にした新人時代の3つの心構え
1. 自分の夢を叶えるために、そのときできることに全力で取り組む
2. 自分の好きなものを理解し、美容師としてのスタイルを確立する
3. 失敗から学び、同じ過ちを繰り返さないように工夫をする
後編では、スタイリストになった平山さんがどんなことを考えてお仕事をしてきたかを詳しく伺います。「新人時代は自分のことで精一杯でした」と話す平山さんですが、最近は後輩指導をする機会も増えてきたそう。徐々に美容師としての視野を広げる必要性を感じていると言います。後編もお楽しみに!