店長に求められるのは、スタッフの気持ちを受け止める「母」の心【マニキュアハウス 舞浜イクスピアリ店 相馬杏菜さん】#2
新人時代をどう乗り越えてきたのかを伺うこの企画。前編に続いてマニキュアハウス 舞浜イクスピアリ店で店長を務める相馬杏菜さんにお話しをお届けします。
前編では、美容師になりたくて美容専門学校に進学したもののネイリストという職業に興味を持ち、美容師かネイリストかどちらに進むかを悩んだ末にアトリエはるかでネイリストデビューをしたことをご紹介しました。
後編では、アレルギーを発症してネイリスト生命の危機にさらされたこと、キャリアアップに伴って仕事が増えストレス過多になったこと、入社3年目で店長の座を射止めたことについてインタビューしました。
お話しを伺ったのは…
マニキュアハウス 舞浜イクスピアリ店
店長 相馬杏菜さん
仙台の美容専門学校を卒業後、2020年4月アトリエはるかに入社。研修を経て2021年に日本橋店でフロント担当、2022年には東京八重洲店で商品担当を受け持つ。2022年に同店の副店長に抜擢され、2023年7月にはマニキュアハウス 舞浜イクスピアリ店の店長に就任する。
ネイリストの宿命!? 入社1年目にアレルギーを発症
――お客さまに施術できる入客テストに合格してから、キャリアアップは順調でしたか?
実は1年ほど経ってからアレルギーを発症してしまいました。原因はネイルのジェルなんです。仕事をする以上、触れないことはないので…。おそらく人一倍、悪化しやすかったのだと思います。施術しているうちに呼吸が苦しくなって、ホコリと一緒にジェルの粉が顔や首につくと湿疹にも悩まされました。特に直接触れる手が酷かったですね。指先から手のひらまで皮が全部剥がれてしまったんですよ。あまりに辛くて、もう辞めるしかないと思いました。
――そこで踏みとどまったのはなぜですか?
もうかなり予約が入っていたので、ここで私が休んだり辞めたりしたら、店長が私のお客さまを担当したり、応援を手配したりしなければいけません。そんな迷惑をかけられないと思って、「絶対に店に行かなくちゃ!」と思っていました。
――すごい! でも辛かったでしょう。どうやって解決したんですか?
ジェルの粉が舞うと鼻が詰まって、涙も出てくるので足元に集塵機を置いてもらいました。肌に密着する手袋も試しましたが、ジェルを削るときに手袋を巻き込んじゃうんですね。手袋を着けたり外したりするのも不便だったので、すぐ止めました(笑)。
――今は症状は治まっているんですか?
いちばん酷いときから1年くらいしてから、だんだんと治まってきました。身体が慣れてきたのかもしれません(笑)。ただ、連続勤務が続くと発症しちゃうんですよね。発症したときは薬を塗って、対処療法をしています。
私は花粉症でもないし、アレルギーで悩んだことがなかったので本当にビックリしました。
キャリアアップするなかで仕事量が増えてキャパオーバーに
――アレルギーがひと段落過ぎてからのキャリア形成は順調でしたか?
ネイリストの仕事だけではなく、商品管理などの業務や後輩たちの育成、サロンの移動などが重なって、私の中でキャパオーバーになってしまったことがありました。
誰かに相談したりグチを言えない性格なので、一人で抱え込んでしまったんですね。やらなくてはいけない仕事が次々にやってきて、「あれをしなきゃ」「これもしなくちゃ」って気ばかり焦っていました。「私がこんなに忙しいのに、どうして誰も気づいてくれないの?」って、分かってもらえないストレスもあったと思います。
――どうやって乗り越えたんですか?
定期的に本部の方と面談する機会があるんですが、そのときに「忙しそうだけど、大丈夫?大変だよね」って言ってくださったんです。「私が大変な想いをしていることを分かってくれている人がいるんだ!」と分かった途端、す~っと気持ちがラクになって、それまでのモヤモヤが一気に晴れました。「大変なんだというのを周りに知ってほしい」というのが自分の中にあったんでしょうね(笑)。
――その本部の方とは、よくお話をしていたんですか?
ほとんど関わりがない方でした。身近にいると気づけない異変が、深く関わっていない方が気づきやすいのかもしれませんね。
当時の店長もすごくいい方で、私のことをすごく気遣ってくれていました。一緒に過ごす時間も長かったですね。先輩方のサポートで乗り越えられたんだと思います。
――誰かに認めてもらうことって大事なんですね。
あとは、自分で自分を褒めていました。「私ってやればできるじゃ~ん!」って(笑)。今でも「こんなことができちゃう私ってすごい!」って褒めることで、モチベーションを上げています。
目標が達成できたときは、自分で自分を思いっきり褒める
――相馬さんは入社2年目で副店長、3年目で店長になっています。すごい早さですよね。
同期の中では私がいちばんではないんですよ。私より先に店長になった人もいます。入社したての頃は、同期の中で「いちばん」を目指していましたが、その頃になると「みんなで技術を高めあって一緒に会社を盛り上げていこう!」っていう気持ちになっていました。だから同期が一足先に店長になったのを聞いて、うらやましい気持ちもありましたが、素直に「おめでとう!」って私も喜びました。
――副店長や店長になるには試験とか研修があるんですか?
まず内示があって、その後に社長面接があるんです。その面接にパスしないと副店長や店長にはなれません。
――内示の後に最終面接ですか。合格しない方はいるんですか?
過去にはあったようです。社長面接でどんなことを聞かれるのか、何をやってはいけないのか、あれこれ聞きまくりました(笑)。
――どんなことを聞かれたんですか?
緊張してよく覚えていないんですが(笑)、店舗の状況とか新卒で入ってきたスタッフたちのこと、あと「自分が作りたい店舗はどんな感じ?」とか、聞かれたような気がします。
――店長になるときも社長面接があったんですよね? そのときも同じ質問が?
副店長から店長になるまで半年くらいしか経っていなかったので、社長からは「最近、面接したよね」って、ちょっと軽い感じでした(笑)。ちょっと世間話っぽい感じの面接でした。2回目だったので私もそんなに緊張することなく、無事に終わりました。
――社長との話で印象に残ったことはありますか?
「若いスタッフに『尊敬する人は誰?』って聞くと、みんな『お母さん』って答えるんだよね」っていうお話しから、「今は友だちみたいな親子関係が増えているから、お母さんみたいな人に頼りたくなるんだよね。だから店長になる人はお母さんにならないといけないよ」と言われました。
――相馬さんはまだ20代ですよね。でもお母さん!?
ちょっと失敗しても許してくれて、ちょっと甘えたくなるような存在ですよね。何でも受け止めてくれるような。たとえ1歳しか違わないスタッフでも「お母さんみたい」って思ってもらえたらいいなと思っています。
――これからネイリストを目指している人にアドバイスをお願いします。
資格を持っているからといって、みんなが最初から上手にできるわけではありません。誰もが憧れるネイリストだって下積み時代があり、何度でも壁にぶち当たってきたはずです。それを乗り越えたからこそ、その方にしか見えない景色があると思います!どんなこともプラスにとらえて取り組みましょう。たまには休憩しながら、一緒に頑張りましょうね~!
相馬さん流! 壁を突き破るための3つのポイント
1.技術が自己流にならないよう、常に先輩の技や研修でチェックすること
2.一人で抱え込まず、大変なことや困ったことを周りに伝えること
3.目標が達成できたときは、自分で自分を思いっきり褒めること
突然、発症してしまったアレルギーにもめげず、キャパオーバーになっても逃げ出さなかった相馬さん。今後も技術者として働くことが夢で、「お客さまに最高のひとときを過ごしていただきたい」とのこと。このひたむきさがキャリアアップの原動力になっているのかもしれません。
撮影/倉部和彦