世界5カ国に展開するインターナショナルサロン！外国人に支持される『ASSORT TOKYO』の信頼獲得術
近年、日本を訪れる外国人観光客が増えるに伴い、さまざまな企業、観光施設がグローバルに対応できるよう取り組みを強化しています。美容業界では群を抜いて外国人対応に強いサロンがあります。それは、海外への店舗展開も行っている『ASSORT』。今回は1号店である『ASSORT TOKYO』にて、代表の小林Kenさんにお話を伺いました。
前編では、アメリカで生まれ育ち、現在は世界を股にかけて活躍する小林さんの慣習に捉われない独自の経営論についてお話を伺いました。
外国人から支持される秘訣
――――『ASSORT』では、外国人のお客さまを呼び込むために力を入れていることはありますか？
「オープン当初は外国人のお客さまにもお越しいただけるようSEO対策をしていました。その後は口コミやメディアの力もあって順調に増えていき、だんだんと日本人のお客さまより多くなったので最近はとくに何も手を打っていません（笑）。ニューヨークに2店舗、香港、アムステルダム、シドニーと海外でのサロン展開も行っているので、信頼を得やすいのかもしれませんね」
――――元々、海外でサロンをオープンすることが目標だったのですか？
「いいえ。現在の国内店舗で十分だとは思っていたんですが、新しい刺激を求めてニューヨークで海外1号店をオープンすることになりました。全店舗を見るために僕はいつも世界を飛び回っていますよ。『ASSORT』では名前の由来である『アソートメント』の意味通り『十人十色』をコンセプトにしていて、スタイリストそれぞれの個性を大切にしています。青文字系や赤文字系に強いといったサロンの方向性は設けず、各国から訪れるお客さまのご要望に合わせて柔軟に提案するように心掛けています。これが多くの外国人に支持を得ている理由かもしれません」
外国人に接客するための独自の教育
――――現在、海外のお客さまの来店比率はどれくらいでしょうか？
「ここ『ASSORT TOKYO』は6割程度、原宿店では8割ほどです。日本在住の外国人だけでなく、インバウンドの方も非常に多いです。日本人の感覚としては、旅行先で美容室に行くというのはあまり考えられないかもしれませんね。なぜ訪日観光客は日本で髪を切るのか…と考えた時、日本の文化に憧れを抱いていて、職人の繊細な技術に触れたいからカットをしていくのだと推測しています」
――――外国人のお客さまと接するうえで大切にしていることはありますか？
「まず、コミュニケーションが取れるよう、スタッフには英語を勉強してもらいます。サロンにいるだけで英語漬けの日々なので、自然と身に付きますよ。さらに営業前に英会話レッスンも行っていますし、先輩スタイリストについていればサロンワークで必要な単語も覚えられます。そして、英語と同じくらいに大事なのは、国ごとに異なるヘアスタイルの嗜好。クールなスタイリングとひと言で言っても、出身国によってお客さまがイメージするデザインは異なるのです。そういった文化圏の違いや好みの傾向を覚えないと最適な提案はできません」
――――多様な感性を受け入れて、スタイリストも柔軟に対応しなければいけませんね。
「はい。そしてもう1つ大切なのが、人種ごとに異なる髪質を把握すること。髪色だけでなく硬さやクセも違うので、髪質の特徴や扱い方など勉強すべきことはたくさんあります。うちのサロンはいろんな人種の方が訪れるので、お客さま1人ひとりと向き合いながら覚えていってもらいます。あと、海外の方はオーダー時に『あなたはどう思う？』とよく聞きます。だからスタイリストは技術やカルチャーなど多面的に理解したうえで提案できるようにならなければいけません」
――――小林さん指名のカット料金は『1時間2万円』に設定されていますが、なぜこのような価格設定に踏み切ったのでしょうか。
「海外によく行くので、日本以外の国の金額設定を知っているというのが理由の1つでした。香港では1万2〜3,000円が当たり前です。それに比べて東京は6,000円前後が平均で、地方都市もどんどん上がってきているのに、まったく価格変動がないことに違和感を感じていました。家賃が値上がりしているので、カット料金の値上げも当然のことだと僕は思うのです。また、社員のこれからの美容師人生を考えた時、年を重ねて体力が落ちてからでも働き続けてもらうためには、生産性を上げるしかありません。そう思い、社員に値上げを提案したのですがみんなが多少なり抵抗があったので、「それなら僕が先に上げて値上げの道を作っていこう」と動き出しました」
――――なるほど。価格を上げてみていかがでしたか？
「悪いことは何ひとつなく、むしろいいことばかりです。価格を上げることによってブランディング化され、既存のお客さまの紹介で富裕層の新規顧客が増えましたね。日本へ毎月仕事で訪れる海外の方が来日する度にカットにお越しになるなど、スペシャルな時間として楽しんでくれる方が多いです。そして、スタイリストによる価格の違いは、『金額で選ぶ』というお客さまにとって新しい選択肢ができました。『2万円までは出したくない』という方は当サロンの1万円のスタッフを紹介するので、客離れはとくに問題視していません」
――――他のスタッフの価格設定にも影響はありましたか？
「はい。スタッフも次第に値上げを始めましたし、業界でも価格を上げるきっかけとなったようです。価格アップは生産性とともに利益率を上げ、給料もアップするので、美容業界にとっていいことしかない！ 最初はみんな、自信がないので自分から価格改定をしたがりませんが、成功例を見れば続いていくものですよ。今回、僕が振り切って2万円に設定したのは社員へ道を示すため。大幅に上げようと思いながらも、いくらに設定するのが妥当かは少し考えました。僕のお客さまは、『どうやったら海外展開ができる？』『代表としての話を聞かせてほしい』と話を求めて訪れる方が多いので、アメリカの弁護士への相談料をイメージしながら決定しました」
外国人から支持されるための極意
『ASSORT TOKYO』が海外のお客さまから人気の秘訣は下記の3ポイントでした。
１.サロンの方向性を設けず、柔軟に提案する
２.外国人の髪質や文化を理解する
３.日本の慣習に捉われない価格設定
外国人のお客さまにも大満足のサービスを提供する『ASSORT TOKYO』。後編では、社員が働きやすくなるための環境づくりについて伺います。
▽後編はこちら▽
外国人からも支持されるインターナショナルなサロン！「ASSORT」の社員が幸せに働き続けるための経営術>>
