【美容師のカット技術】EMMA GINZA NAOMIさん流 バックシルエットまで映える『大人可愛い丸みボブ』#1
その時代のトレンド要素を取り入れながら、常に進化しているボブスタイル。ここ数年のショート流行りから、短めのレングスは定番になっているようです。そんな中、「頭の形をキレイに見せるカット」を追求し続けているのがEMMA GINZAのNAOMIさん。
今回は、某有名サロンから独立し、今年1月に新店をオープンさせたNAOMIさんにインタビュー。前編では、長年の経験から培ってきた技術について、そして、そこから見えてきた今の女性たちが求めるスタイルとは……など、興味深い内容をたっぷりとお届けします。
「見てトライする」意識が技術を上達させる
−−これまで第一線を走り続けるNAOMIさんですが、美容師としてのスタートは大阪からとお聞きしました。
そうなんです。私は兵庫県出身で、美容学校は大阪でした。そこは夜学だったので、学校へは夜行って、昼間は美容室で見習いアシスタントのような形で働いていました。今はそういう働き方はないのかもしれませんが、学生として学校で勉強しつつサロンの現場にも立てる、そういう環境で修行することができました。最初は右も左も分からない状況でもう大〜変! でも今思い返せばすごく良い形で学べたのかもしれません。お店でお客様を迎えて施術していく流れだったり、接客の雰囲気だったり、そういうのを間近で感じながら学校にも通えたのですから。
−−東京に進出したきっかけは?
大阪の専門学校を卒業して、アシスタントで働いていた美容室に就職したんですね。で、そのサロンでスタイリストデビューしてしばらくそこに勤めていたのですが、ある時、ヘアの業界誌に載っているスタイルを見て「すごいな、何て洗練されているんだろう!」って、自分の中に衝撃が走った瞬間があって。当時、ひと通りのことはできるようになっていて、でもカットにはまだ迷いがあって……そういう時でもあったので、ここからもう少し自分でステップアップしなければという気持ちも強かったです。
ちょうど、カリスマ美容師ブームの頃。とにかく自分もその洗練されたカット技術を体験したいと思って、憧れの東京のサロンへ行ってカットしてもらいました。何度か通って、面接を受けたいとお願いして、三度目の面接で晴れて合格。24歳の時に、東京の地で新たなスタートを切りました。
−−若手時代に意識していたことは?
東京の美容室に入って、『熱量』の高い先輩方、同志がたくさんいて。すごく刺激されましたね。そういう中で、先輩の技術をとにかく「見て」いました。カットはもちろん、ブローとかそういう一つ一つのやり方もすべて。自分の目で見て、実際に取り入れる。もちろん勉強会で教わる機会はありましたが、私は日頃から見ることを意識していた。同じようにやろうとするんですけど、最初はあまりうまくいかないんです。でも何度かやっていると、ある時、あ! こうかも! という瞬間が来る。まるっきり同じにはならないけれど、自分のオリジナルとして習得できるんですよね。日常って同じことの繰り返しで、何となく過ぎてしまいがち。
今は何かと情報量も多いし、教えられることや言われることに一生懸命で、なかなか自分でトライする機会は少ないのかもしれない。ただ、好きなジャンルは積極的に突き詰めていけると思うんですよね。この何事にも見てトライするやり方、ぜひ意識してみることをおすすめします。
−−大手サロンで長年経験を積んできたNAOMIさんが感じる、今の美容師に必要なこととは?
昔と今、考え方も働く環境もだいぶ変わりましたよね。時代を問わず言えるのは、有名になっている人やお客様がたくさん付いている人は、何か一つをしっかり追求していることではないでしょうか。以前はひと通りの技術がきちんとできていないと合格にはならなかったけど、今は(極端な話)何かに特化できたらそれで成立する、そんな空気もありますよね。今はSNSが盛んでそこで集客する流れもあるから、しっかりブランディングすることがより大事になってくるのかも。技術をマスターすることはもちろん大事。でも全部が100点でなくとも、得意を突き詰めたら最高の武器になる。そうやってぐんと伸びて行った人をたくさん見てきました。
−−SNSで自己ブランディングする美容師さんも増えましたよね。
私も活用しています。昔から来ていだいているお客様もいますが、新サロンになって私のインスタを見て切りに来てくださる新規の方も増えてきました。自分の強み=打ち出したいテーマを明確にアピールしていけば、目に止まる機会も増えていくのかなと感じています。そして、初めて来ていただいた方には満足して帰ってもらいたいし、また来て欲しい。そのためには、自分の打ち出したいテーマは持ちつつも、その人の顔型だったり骨格、首の長さ、襟足の深い浅いとか、そういう一人一人の個性に合わせてより似合うスタイルを提案することが大事だと思っています。
−−自分の得意技術+αの提案ということでしょうか。
そうですね。お客様の希望というのはあると思うんですが、そのイメージを美容師に伝えるのは意外と難しいですよね。まったく同じようになりたいわけじゃなくて、この髪型の雰囲気が好きなんです、みたいなことはよくある。その辺をうまく見極めて、くみとって、スタイルに反映できるかどうか。自分の思うようなスタイルになれなかったのは私の伝え方が悪かったのかな……と、お客様に思わせてしまうのはすごく残念じゃないですか。お客様のせいではない。そこはむしろ、プロとしての力の発揮どころ。ここはもう少し切った方が可愛くなりますよ、とか、このくらいの長さにするとこういう雰囲気に見えますよ、とか、希望のスタイルに向かいながらも、より似合うようにアレンジして提案するように心がけています。
−−その方が結果、よいスタイルが生まれそうですよね。
最初の頃って、お客様の言う通りにしてあげなきゃ! という気持ちが強くて、もっと似合わせられるテクニックがあるのに出し切れずに終わってしまう。みんなテストをしっかり受かって技術はあるのに、もったいないなと感じてしまいます。今の若い世代だと、何となく遠慮して切らない美容師さんもいたり。きちんと説明して提案する、そしてお客様に理解いただけたら、どんどんやっていってOKだと思うんです。もうちょっと突っ込んでいいんだと思う。そうしたら、もうひとこえ仕上がりが高まっていくと思うし、お客様と信頼し合える良い関係性も築けるのではないでしょうか。
『頭の形がキレイに見える』は女性の永遠のテーマ
−−今回の、「うしろ姿までキレイに見える」というテーマを始めたきかっけは?
東京のサロンで働くようになって、その当時から立体的なカットができる先輩がいたんですよね。その時代は、骨格に合わせたカットという概念がまだ世の中的にはそんなに浸透してなかった頃なので、すごい技術だなと思っていました。その先輩が、「正面からよりも、うしろから褒められると嬉しいよね」というようなことを言って、私の中ですごくインパクトに残ったんです。確かに、人って前から見ると顔の印象もあるし、メイクもするし、スタイリングで雰囲気だって変わる。いろんな要素で全体印象が決まるわけです。けれど、うしろ姿ってもう髪しかないから、キレイなシルエットや質感だったり、立体的に見せることが勝負。うしろ姿が素敵=相当洗練されているんだ、と。そこを追求してみたいなと強く感じで、極めていこうと思いました。
−−なかなか難しそうなテーマ。どのように習得していったのでしょう?
私、最初は自分が何が得意なのか分からなかったんです。何で売っていけばいいのか。それで、その「うしろ姿」のテーマは自分としてはぐっと来たけど、すでに取り入れている先輩がいた。そしたら自分はマネになっちゃうけれど、とりあえずやってみよう! と思って始めてみたんです。でもいざやってみたら、同じにはならなかった。やはりその人その人で目線も切り方も違うから、結果、自分のオリジナルになっていったんですよね。
−−作っていただいたスタイルも頭の丸みがキレイに出て、まさに『うしろ姿映え』でした。
ありがとうございます。うしろ姿のテーマを長年意識してきましたが、どの時代にも通用するものだと感じています。切りっ放しのスタイルが流行ったり、レイヤーが流行ったり、トレンドは形を変えながらぐるぐると回っている。けれど、頭の形がキレイに見えることって流行りとは基本的に関係なくて、いつでもそうありたいこと。このカットの特徴は、骨格に合わせてなじむような丸み感を出すのが肝なのですが、ただ丸みがあるだけじゃやはりつまらない。束感とか前髪がシースルーとか、要所要所でその時代のエッセンスを入れていくことで、トレンドの半歩先を行くようなスタイルを目指しています。
NAOMIさんが提案する『大人可愛い丸みボブ』
ウェイトをやや低めに設定した、自然な丸みを感じるボブスタイル。骨格に合わせた肌なじみの良いカットに仕上げることで、頭の形をキレイに見せてくれる。
NAOMIさん流『大人可愛い丸みボブ』のいいところ
1.頭の形がキレイに見え、うしろ姿まで美人に!
2.バランスの良い小顔に見える
3.女性らしい柔らかさや透け感でお洒落見え
先輩の言葉からの気づきで、「うしろ姿」というテーマを追求してきたNAOMIさん。自分の得意分野を持ちながらも+αの提案力で仕上がりを洗練させていけるのは、これまで積み上げてきた技術と努力の賜物と言えます。そんなうしろ姿まで素敵なスタイルの作り方について、後編で詳しく教えていただきます。
▽後編はこちら▽
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取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:米玉利朋子
ヘア&メイク:NAOMI(EMMA GINZA)
モデル:大橋沙季
教えてくれたのはこの人!
EMMA GINZA オーナー NAOMIさん
Instagram:@emma___naomi
兵庫県出身。美容師としての出発点は大阪。以降、東京へ拠点を移し、有名サロン2店舗を経て、2020年1月に自身のサロン「EMMA GINZA」をオープン。顔周りの似合わせ、骨格に合わせた小顔ヘアを得意とし、特にバックシルエットにこだわったスタイルを追求している。積み上げられた技術と美容へのストイックな姿勢で、その人の持つ女性らしさを最大限に活かすヘアを提案。NAOMIさんのカットを求めて長年に渡りリピートするお客様多数。美容業界からの信頼も厚い。