未経験でも訪問美容師になれる?業務内容や仕事の探し方も解説
美容師の働き方では、美容室に来店したお客様へ施術するのが一般的です。しかし、近年では、お客様のもとへ出向いて施術を行う「訪問美容師」という働き方に注目が集まっています。
訪問美容師はどのような方へ、どのような施術を行うのでしょうか。また、美容師なら未経験でもなれるのかも気になることでしょう。今回は、訪問美容師の仕事内容や求人探しの方法、メリット・注意点などについて詳しく解説します。
訪問美容師とは
訪問美容師とは、なんらかの理由で直接美容室へ来るのが難しい方を訪問して、カットなどの施術を行う美容師のことです。
近年では、高齢や病気などで外出が困難になった方に対する、訪問美容師のニーズが増加しています。この場合の主な訪問先は、お客様の自宅・介護施設・病院などです。ここでは、訪問美容師が施術を行う対象者や、行える施術の範囲などについて解説します。
訪問の対象となる方は?
美容師法第7条により、美容師が美容所以外の場所での施術を行うことは原則禁止です。ただし、美容師法施行令第4条で定める特別の事情に該当する場合は、例外を認めています。
実際に美容所以外での施術が認められている方や場面は、次の3パターンです。
1. 病気やケガなどの理由で美容所へ来られない方
2. 婚礼などの儀式に参列する方に対して儀式の直前に施術する場合
3. 上記以外に、都道府県が定める条例に該当する方
3の場合は対象者が地域によって異なるため、訪問先地域の条例をよく確認する必要があります。
訪問美容師の仕事内容
訪問美容師の仕事内容は、基本的にはサロンでの業務と同様です。ただし、施術を行う場所は、美容室のように設備が整っていないうえに、対象者の状態もさまざま。そのため、「できること」は美容室と同じではありません。
ここでは、訪問美容師の仕事内容・施術の流れ・一日のスケジュールを紹介します。
カットやパーマなどの施術
訪問美容師が行う施術は、美容室での施術内容と大きな違いはありません。たとえば、カット・パーマ・カラーリング、必要に応じて着物の着付けやヘアメイクなども行います。
とはいえ、訪問先は設備が不足していることが多いため、カットのみ対応するという訪問美容サービスも少なくありません。移動式のシャンプー台を用意すれば、シャンプー・パーマ・カラーリングなどの施術も行えるようになります。
また、お客様によっては美容室とは異なる注意を払わなければなりません。たとえば、お客様に負担をかけないように短時間で施術を行ったり、場合によっては、お客様の体調に応じて施術を途中で中止したりする必要もあります。
施術の流れを紹介
訪問美容師が予約を受けてから当日の施術後に退出するまでの、施術の流れを見てみましょう。
1.予約・ヒアリング
電話や予約フォームより予約を受け付けたら、本人や家族、施設の担当者などへヒアリングを実施。希望の施術内容や健康状態、配慮すべき点などを詳しく確認し、施術内容と施術日を決めていきます。
2.施術当日
当日施術先を訪問したら、施術するスペースを作り、道具を準備します。カウンセリング内容をもとに、当日の健康状態や配慮する点などを確認したうえで施術を行います。
施術中もお客様の体調などに注意を払い、適宜声をかけて確認しながら進めましょう。
3.後片づけと会計
施術が終わったら、カットした髪や道具などをすばやく片づけて掃除し、会計も行います。会計時には、支払っていただいたという証明のため、領収書を発行しましょう。
4.退出
道具などを持ってすみやかに退出します。退出前に、本人や家族、施設の担当者などと次回の予約について相談することもあります。
メンタルケアの役割も
訪問美容師による施術は、メンタルケアとしての役割もあります。病院・施設で長く過ごしている方や体が不自由な方は、なかなか思うように散髪やおしゃれができません。
訪問美容師が希望のヘアスタイルに整えると、施術を受けた方はスッキリした気分になれるため、リフレッシュや気分転換といった効果が期待できます。
そのため、訪問美容師はメンタルヘルスにも影響を与える可能性を考え、施術の仕方だけでなく、接客する際の言葉遣いなどにも注意が必要です。
一日のスケジュール例
訪問美容師の一日のスケジュールも、サロンワークと異なります。介護施設と個人宅へ訪問する日のスケジュールをご紹介しましょう。
美容師免許があれば未経験でも訪問美容師になれるの?
訪問美容師になりたいと考えたときに、「今ある知識だけで働けるのか」と不安になるかもしれません。
実際のところ大変ではありますが、美容師免許さえあれば、訪問美容を行っている企業に就職するなどにより、未経験でも訪問美容師になることは可能です。まずはアシスタントから経験を積んでいきましょう。
介護の知識があると役立つ
訪問美容師は、介護の知識があると、介護や介助を必要とする方へ施術を行うときに役立ちます。お客様の症状と必要な介助・介護、施設の場合は施設の概要などを知っている訪問美容師であれば、お客様や施設が安心して施術を依頼しやすいでしょう。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修とは、2003年4月1日に介護保険法執行規則改正でホームヘルパー2級から変更された資格です。ホームヘルパー2級の時代は、カリキュラムをすべて修了して、施設での実習が終了すると取得できました。
しかし、介護職員初任者研修では施設での研修がなくなった代わりに、カリキュラム修了後の筆記テストに合格しなければなりません。これから迎える超高齢化社会に向けて、介護職において優秀な人材を多く育成することが目的です。
介護職員初任者研修の資格を取得すると、介護職の基本的なことを身に付けることができるため、訪問美容師を目指している方はぜひ取得しましょう。資格があれば美容師が介助しながら施術することができるので、施設側の負担も減って喜ばれます。
講習会などを受講するのもおすすめ
訪問美容師に必要な知識を学びたい場合は、訪問美容師に特化した講習会などを受講して知識を深めるのもよいでしょう。
たとえば、NPO全国介護理美容福祉協会の「福祉理美容師」養成コースは、介護・介助を必要とする方への訪問美容の知識と技術を学べる講座です。
福祉理美容師養成コースは、4日間全28時間の講義とスクーリングで行われます。訪問理美容の知識の基礎知識と、寝たきりのお客様への介助、整髪や洗髪、メイクやネイルなど実践的なスキルの習得が可能です。
講座を修了すると、修了証と福祉理美容士資格認定カードが発行されます。
引用元
NPO全国介護理美容福祉協会|「福祉理美容師」養成コース
自分に合った訪問美容の会社を探す
訪問美容師を派遣している企業に所属して働きたい場合は、まずは自分に合った会社を選びましょう。
将来的に独立するのを支援する制度がある・スキルアップするための研修が充実している・社員の福利厚生がしっかりとしている企業もあります。
働き方も多様化されていて、土日に休むことができ、フルタイムでの勤務や時短勤務も可能なところもあるので、ご自身の希望に合った企業を探すことが大切です。
志望先に採用されるには、美容師免許はもちろん、介護職員初任者研修などの介護職の資格を持っていると有利になりやすかったり、給与がアップしたりする可能性があります。
開業するなら経験を積んでから
ゆくゆく自分で訪問美容業を開業することは可能ですが、未経験で開業は厳しいです。訪問美容師として開業したいなら、経験を積んでから独立するのがベターでしょう。
なお、開業時には保健所への届け出が必要なほか、訪問施術に必要な道具や機械を買いそろえなければなりません。
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訪問美容師とは? 個人で開業する前に知っておきたい基礎知識|開業に必要なものと費用の目安
新卒の採用に意欲的な企業も!
未経験の新卒美容師を訪問美容師として採用するのに、意欲をかたむけている企業もあります。訪問美容業界に新しい風を吹き込んだ『trip salon un.』の湯浅一也さんへのインタビューでは、このようなお話を聞くことができました。
- 「新卒でスタッフを採用したいですね。美容師としての技術を学び、同時に営業などを学び働けば、3、4年で優秀な訪問美容師になるはずです。」
引用元
湯浅 一也 interview#3:訪問美容師だからこそできるカット
未経験者が訪問美容師になるための求人の探し方
訪問美容師の働き方が理解できたところで、つづいて、未経験の方が訪問美容師の仕事を探すための2つの方法について解説します。
1. 就職・転職支援エージェントを利用する
就職・転職支援エージェントとは、仕事を探す方と募集元の橋渡しをしてくれる民間の人材紹介サービスです。
コーディネーターやアドバイザーに相談すると、職場の紹介や推薦・応募時のサポート・面接対策から、企業との交渉・日程の調整に至るまで幅広く支援してもらえます。
未公開求人情報を持っている・相談会などのイベントを開催しているエージェントもあり、多方面から手厚いサポートを受けられるでしょう。
2. 求人サイトで探す
求人サイトとは、さまざまな企業の募集情報を閲覧できるサイトです。検索条件を自分の希望に合わせて絞れる・手軽に使える・自分のペースで求職活動ができるというメリットがあります。
自分の力・ペースで仕事を探したい方や、希望条件などが定まっている方におすすめの方法です。
訪問美容師のメリットと注意点
今特定の美容室に所属している方のなかに、訪問美容師への転職を検討している方もいるかもしれません。しかし、訪問美容師にはリスクや注意点もあります。
ここでは、訪問美容師になるメリットと、知っておくべき注意点を解説しましょう。
10年間表参道の美容室で活躍を続けてきたあと訪問美容師に転職した、「trip salon un.」に所属されている清野美保さんのインタビューもご紹介します。
- 「訪問美容師を始めた大きな理由は2つあります。1つは、私の兄が病気で美容室に行けない期間があったことをきっかけに、訪問美容のサービスを見つけ興味が湧いたことです。もう1つは、結婚を契機にあらためて働き方を考えたときに、自分の生き方に合わせて働ける方法だと思ったからですね。
訪問美容は非常に社会的意義のあるお仕事です。働く条件も非常に良く、これからさらに大きなビジネスチャンスもあると感じています。」
引用元
訪問美容師に転職して良かった!「trip salon un.」清野美保さんの本音
訪問美容師になるメリット
訪問美容師のメリットとして、固定店舗のように営業時間に拘束されることがなく、ライフスタイルに合わせやすいことが挙げられます。予約を調整すれば、育児などとの両立も可能です。
また、特定の店舗を持たなくてもはじめられるため、独立開業する際に初期費用やランニングコストを抑えられます。
さらに、訪問美容師は、高齢者や体の不自由な方など、美容室へ行きたくても行けない方の悩みを解消できる仕事です。そのため、訪問美容師は一種の社会貢献活動ともいえます。利用者からの感謝などが、大きなやりがいにも。
今後、さらに高齢化が進めば訪問美容師の需要も増えていくと予想されているので、将来性にも期待できるでしょう。
訪問美容師になる前に知っておきたい注意点
訪問美容師の注意点は、美容室にはない事故やリスクが生じることがある点です。たとえば、持病の影響で皮膚が弱いお客様は、ハサミなどが少し皮膚に触れただけで負けたり傷ついたりすることがあります。
また、認知症などのお客様は、会話が成立しにくかったり、施術中に動き出したりすることも。この場合も、ケガをさせてしまうおそれがあります。そのため、施術中はつねに細心の注意が必要です。
さらに、訪問美容師は、訪問先へ仕事道具を持参する必要があります。とくにパーマやカラーを行う場合は多くの薬剤を持っていかなければならず、荷物運びに苦労するかもしれません。
未経験でも成長できる訪問美容師として働こう!
訪問美容師は、超高齢化社会を迎える今後にますます需要が増えてくると予想される職業です。
美容と介護のふたつの専門的な知識が必要なため、特に未経験の方にとって大変な仕事ではあります。しかし、体が不自由で美容室に行けないお客様を施術するととても喜ばれて感謝され、やりがいにも繋がります。
美容師としてさらにステップアップしたい方・経験はなくても訪問美容師に興味がある方は、ぜひ挑戦してみましょう。
なお、未経験で訪問美容師になりたい方は、ぜひ美容業界専門の求人サイト「リジョブ」をご利用ください。豊富な求人情報のなかから、自分の希望する条件を設定して検索できます。