訪問美容師になるには?仕事内容や働き方・開業に必要なものを紹介
訪問美容師は、自宅や施設に出向いて美容サービスを提供する仕事です。高齢者や病気・障害が原因で美容室に行けない方々対して、カットやカラー・パーマなどをおこないます。
需要が高まる背景には、高齢化社会の進展があり、とくに介護福祉サービスの充実とともに訪問美容師の仕事が重要視されています。
本記事では、訪問美容師として働くために必要な資格や開業準備・働き方について詳しく解説します。これから訪問美容師を目指したいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
訪問美容師とは?

訪問美容師とは、おもにどのような仕事をするのでしょうか。ここでは訪問美容師や訪問理容師について、訪問をする施設や需要が増えている理由などを詳しく解説していきます。
訪問美容については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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美容室へ来られないお客様へカットなどのサービスを提供する|自宅・施設への訪問
事情があって美容室へ来られないお客様の家や施設へお伺いするのが訪問美容師・訪問理容師です。妊娠や出産、病気や傷害などがあって、美容室に来ることのできないお客様は少なくありません。
なかには、高齢のため出歩くことのできない方もいらっしゃるでしょう。そのようなお客様の自宅や病院などの施設にお伺いして、カットなどの美容サービスをするのが訪問美容師の仕事です。
訪問美容師の需要が高まっている背景とは?|介護福祉サービスの充実
これからの日本は、高齢化が進んでいくと言われています。内閣府の発表によると日本の65歳以上の人口は増加していて、2070年には38.7%以上に達し、国民の約2.6人に1人が65歳以上になるそうです。さらに約3.9人に1人が75歳以上になるといわれています。
そのため、日本に超高齢化社会が到来すると予想されています。
引用元
内閣府:1 高齢化の現状と将来像|令和6年版高齢社会白書(全体版)
介護福祉サービスの充実
社会の高齢化に伴い介護や福祉に関する仕事の需要は高まっており、介護福祉サービスも充実してきています。高齢で出歩くのが困難でもおしゃれを楽しみたいというお客様も増えていて、訪問美容師や訪問理容師の仕事の需要も高まっているのです。
訪問美容師の仕事とサロンワークの違いとは?

前項では、訪問美容師がどのような仕事をしているのかについてご紹介しました。訪問美容師は、美容室へ足を運ぶことが難しい方のご自宅や施設などを訪れ、カットやカラー・パーマといった美容施術を提供します。
ここからは、訪問美容師という働き方が、いわゆるサロンワークとどのように違うのか、その特徴や違いについて詳しく見ていきましょう。
サロンワークとはどこが違うの?
訪問美容師の施術内容はサロンワークとほぼ同じで、カットやカラー・パーマなど、基本的なメニューは共通です。
ただし、訪問美容では高齢者や介護が必要な方が多いため、体調や体勢に配慮し、短時間で丁寧に施術をおこなう必要があります。シャンプー台がない場所でも対応できるよう、移動式の機材を使ったり、限られたスペースでも使いやすい道具を選ぶ工夫も求められます。
さらに衛生管理も徹底し、消毒や使い捨て用品を使用するなど感染症対策にも細心の注意を払いましょう。
施術の流れを紹介
訪問美容の施術は、お客様のもとへ出向くところから始まり、施術後の片付けまでが一連の流れです。
訪問先ではまずご挨拶をし、体調やご希望を丁寧にカウンセリング。その日の状況に合わせた施術プランを柔軟に組み立てます。
その後、椅子や道具をセッティングし、安全で清潔な環境を整えます。施術中は時間や姿勢への配慮をしながら丁寧に進め、会話も交えつつ快適な時間を提供しましょう。
施術後は道具を片付け、元通りにしてからご挨拶をして終了です。
訪問美容師になるには?

訪問美容師として働くには、まず美容師の国家資格を取得する必要があります。これはサロンワークと同様で、美容師免許がなければカットやカラーなどの施術はできません。
一方で、訪問美容師としての特別な資格は義務づけられていません。ただし、高齢者や介護が必要な方を対象にすることが多いため、福祉理美容や衛生管理に関する知識・技術を学んでおくと安心です。
また、施設とのやりとりや移動手段の確保など、訪問ならではの準備も欠かせません。
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訪問美容師におすすめの資格とは?
訪問美容師として働く際は、福祉や介護の知識やスキルが必要です。資格を取って肩書に加えると、お客様も安心して訪問美容を依頼できます。訪問美容師として活躍しようと考えている人に取得をおすすめしたい資格についてご紹介しましょう。
介護職員初任者研修
訪問美容師を目指すなら、介護の入門資格である「介護職員初任者研修」を受講するのがおすすめです。介護職員初任者研修は9科目130時間の講義と演習で、介護に必要な知識とスキルを取得できる講座です。認知症の人への対応も学べますので、店舗でも役立ちます。
介護職員初任者研修を修了して最後におこなわれる試験に合格すると、車いすから椅子への移乗や着替えや排せつの介助など、体に触れる「身体介護」をおこなえるようになります。
訪問美容師が髪を整えている際にお客様がトイレに行きたくなったり、終わった後に着替えが必要になったりしたときに、適切に対応できるようになるでしょう。
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介護職員初任者研修とは?働ける場所はどんな施設?|資格取得のメリットも紹介
福祉理美容師
認証NPO法人日本理美容福祉協会は、福祉理美容師の養成講座を開設しています。ヘアサロンまで出かけることが難しい高齢者や障がい者のための、出張理美容を提供する美容師と理容師に特化した講座です。
オンライン講座による自宅学習と、2日間の実技スクーリングで、必要な知識とスキルを獲得できます。
訪問美容師の働き方にはどんなものがある?

訪問美容師として働く方法は主に3つあり、それぞれに特徴があります。訪問美容を提供するサロンに就職する方法・フリーランスとして独立して活動する方法・自ら訪問美容を提供するサロンを開業する方法です。
自分のライフスタイルや目標に合わせて、どの働き方が最適かを選ぶことができます。それぞれの働き方について、詳しく見ていきましょう。
1. 訪問美容を提供しているサロンで働く
訪問美容を提供しているサロンに就職し、そのサロンの一員として訪問美容師として働く方法です。この場合、サロンが訪問先への派遣を管理してくれるため、スケジュール調整や仕事の割り振りはサロン側がおこないます。
安定した収入と福利厚生が得られるため、生活基盤が整いやすく、訪問美容の仕事に専念できるのが大きなメリットです。また、サロンでの指導や研修を通じて、訪問美容特有のスキルや知識を身につけることができるため、未経験の方にも始めやすい環境です。
2. フリーランスとして働く
フリーランスの訪問美容師として働く場合、自分で集客をおこない、訪問先を見つけて仕事をこなします。時間や働く場所を自由に選べる点が最大の魅力であり、柔軟な働き方が可能です。
ただし、集客活動や営業を自分でおこなう必要があるため、安定した収入を得るにはマーケティング力や自己管理能力が求められます。料金の設定も自分で決めることができ、自己責任で経営をおこなうため、自立した働き方を好む方に向いているでしょう。
3. 訪問美容を提供するサロンを開業する
訪問美容を提供するサロンを開業する方法は、起業家精神を持つ方に向いています。自分のビジョンや理念に基づいてサロンを立ち上げることができるため、自由度が高くやりがいがあります。
しかし、開業には経営に関する知識やスキルが必要です。資金調達やスタッフの採用、集客活動など、経営面での準備が重要です。
訪問美容を提供するサロンとしての強みを生かし、地域に密着したサービスや顧客のニーズに合わせたメニューを提供することで、競争力を高めることができるでしょう。
開業する前に知っておきたい基礎知識|衛生管理要領

少子高齢化に伴い、訪問美容師の需要は高まっています。しかし訪問美容師として仕事をするためには、いくつかのルールがあるのです。ここでは、訪問美容師として仕事をする前に知っておきたいことについて解説します。
引用元
厚生労働省:出張理容・出張美容に関する衛生管理要領について
理美容サービスは「理美容所のみ」が原則
美容師や理容師は、届出をしている美容所や理容所以外で理美容サービスを提供してはいけないということが原則です。理由は、ほかの場所では衛生面での基準が保てないことにあり、このことは美容師法や理容師法にも明記されています。
ただし、事情があって美容所や理容所に来ることのできない方や婚礼などの儀式に参列する方などに対する例外についても記載されています。
訪問サービスはニーズに応えた形
上述したように、高齢化に伴い訪問美容師による理美容の訪問サービスの需要は高まっています。そのニーズに応えた形で、厚生労働省によって訪問理容・訪問美容に関する衛生管理の枠組みが通知されました。
訪問サービスの対象は限られている
理美容の訪問サービスが認められているとはいえ、誰にでも訪問サービスができるわけではありません。ここでは、理美容の訪問サービスをすることができる対象について解説していきましょう。
引用元
厚生労働省:生食衛発0324第1号 平成28年3月24日 都道府県 各 政 令 市 衛生主管部(局)長
東京都保健医療局:出張理容・出張美容について|環境保健衛生課からのお知らせ
1. 高齢や病気などの要介護状態で来店が難しい場合
高齢や病気などで要介護状態にあって出歩くことができず、美容室や理容室に来店するのが難しいお客様に対しては、訪問サービスをおこなうことができます。老人介護施設などへの訪問もできますが、その施設や保健所で可能かどうかの確認をするようにしてください。
また要介護状態の方の家族に対しても、ほかの家族の援助などが受けられない場合などに訪問サービスをおこなうことができます。これは保健所によって対応が違いますので、可能かどうかの確認をしましょう。
2. 育児や介護で来店が難しい場合
要介護状態の方の家族に対しても訪問サービスをおこなうことができることがありますが、これは介護だけでなく育児に関しても同様です。育児が大変で来店が難く、ほかの家族の援助などが受けられない場合は訪問サービスをおこなうことができます。
この場合も保健所によって対応が違うことがあるので、可能かどうかの確認をしてください。
3. 山間部などで理美容室がない場合
山間部や離島などでは、居住している地域に理容室や美容室がないこともあるでしょう。この場合は、訪問サービスが認められています。
4. 結婚式などイベント用のヘアメイク
結婚式などのイベント用のヘアメイクに関しては、そのイベントの直前にのみ訪問サービスが可能です。結婚式の2週間程度前におこなわれるリハーサルやフォトウェディングのときの訪問サービスに関しては、厚生労働省としては許可していません。
5. 役者の控室
舞台に出演する役者やテレビ出演するタレントなどに対しては、出演の直前に控室でおこなう理美容サービスが認められています。
自治体によっては届け出が必要なことも
出張美容師による訪問サービスは、自治体によっては届出が必要です。届け出に関しては、それぞれの保健所に確認するようにしてください。
開業に必要なものと費用の目安を紹介

訪問美容師の開業を決めたら、届け出だけでなく開業資金の準備も必要です。店舗を構えなくてよいので、美容室やヘアサロンを開業するときの費用と比べると、少なくてすむでしょう。しかし、器具や広告などの費用は自分で負担しなければなりません。
ここでは、訪問美容師として開業するための準備と、必要な費用について紹介します。
1. 必要な器具の取得費用
訪問美容師として開業する場合は、施術で使うハサミやドライヤー・ロッド・カップ・ハケ・タオルなどの用具と、カラー剤やパーマ液などの施術材料が必要です。また、訪問美容ではこれらを安全に衛生的に持ち運ぶためのバックやワゴン・移動のための自動車も必要です。
また、美容室やヘアサロンを開業する場合、あるいは訪問美容師として開業する場合の、いずれにおいても、器具の洗浄・消毒設備を保健所へ届け出なければなりません。そのため、洗浄や消毒などの衛生器具の購入費用もかかります。
自動車を除く、必要な器具などにかかる費用目安は次のとおりです。

2. 資格の取得費用
訪問美容師として働く際には、美容師免許が必須です。そのほかに、「介護職員初任者研修」か「福祉美容師」の資格を取得することをおすすめします。
介護職員初任者研修は、講座を開催している実施主体によって費用が異なります。費用目安は3万円~10万円です。駅の近くなど通いやすい場所で開催される講座は、費用が高い傾向にあります。
福祉美容師養成講座はオンライン講座が中心でスクーリングは2日だけ通えばよいので手軽です。スクーリングも多くの県で開催されていますので、交通費もそれほどかかりません。受講費用は27,000円です。
3. 広告・宣伝費用
店舗を持たない訪問美容師は、活動を知ってもらうために宣伝が必要です。名刺やチラシを作成し、それらをポスティングしたり、介護福祉施設に持参して営業したりする方法があります。
名刺やチラシの作成費用目安は、約1~2万円です。自分でポスティングするのであればチラシ印刷代だけですみますが、ポスティングまで依頼すると10万円以上の出費になるかもしれません。
一方、ネット上でPRする方法も効果的です。SNSだけでなく、ホームページがあると信用を高めやすくなります。
ホームページ開設を自分でやった場合の費用目安は、ドメイン取得料とサーバー契約料を合わせて約1~5万円です。プロにホームページ制作を頼んだ場合は、10万円以上かかることがあります。
開業資金に不安がある場合は?
開業資金に不安がある場合には、融資や助成金・補助金を利用するのも手です。たとえば、日本政策金融公庫の国民生活事業では、新規で事業を立ち上げる個人事業主に対して最大7,200万円までの融資を実施しています。
また各自治体には、中小企業や小規模事業者の資金調達サポートのための独自の融資や助成金・補助金がありますので、一度調べてみることをおすすめします。
訪問容師におすすめの集客方法とは?

美容室やヘアサロンのような店舗を構えない訪問美容師は、集客活動をおこなわないと開業したこと自体を知ってもらえません。訪問美容師が効果的に集客するためには、どのような方法が適しているのでしょうか。
集客のターゲットの絞り方やPR方法、ターゲット層特有の配慮しなければならないことなど、訪問美容師におすすめの集客方法についてご紹介します。
1. 介護福祉施設を訪問・あいさつ回り
訪問美容師のターゲットは、美容室やヘアサロンへの来店が困難な方です。介護福祉施設には、髪を整えてもらいたいけれど移動が難しいという方が大勢います。また、相談員やケアマネジャーも同様です。
ただし、介護福祉施設への初回訪問では、いきなり営業するのは控えましょう。まずは、人柄や技術力などを知ってもらい、信頼を得ることが大切です。
2. SNSやホームページの運用
「美容室へは行けないが髪を整えたい」と思った本人、あるいは依頼された家族が、インターネットで訪問美容師を検索する場合もあります。
利用しようと考える人や家族は、まとまった情報があると安心できますので、ホームページかブログを開設して、対応できる施術やエリア、料金や連絡先を明記しておきましょう。
SNSで訪問美容事業専門のアカウントを取得し、施術の様子や利用者の感想などを投稿するのもおすすめです。
訪問美容を提供しているサロンを探すならリジョブがおすすめ!

訪問美容師としての仕事を見つけるなら、美容業界に特化した求人サイト「リジョブ」がおすすめ。リジョブは、豊富な条件からサロンを検索できるため、自分にぴったりのサロンを見つけやすいです。
勤務地や給与・勤務形態など、細かい条件を設定して検索できるので、ライフスタイルに合った仕事を探すことができます。また、リジョブでは訪問美容を提供するサロンの求人も多数掲載されており、訪問美容師としてのキャリアをスタートさせるには最適なプラットフォームです。
訪問美容師はこれからますます必要とされるお仕事!

近年、「自宅や施設で髪を整えてほしい」というニーズが高まり、美容師の間で訪問美容師という働き方が注目されるようになりました。
原則として美容師や理容師は、届出をしている美容所や理容所においてのみ、理美容サービスをおこなうことになっています。その中で、特別な事情により、直接サロンに行けない方のために、訪問も認められるようになりました。
しかし埼玉県や茨城県、大阪府など、自治体によっては届け出が必要なケースがあります。届け出については、保健所などに確認するようにしてください。
訪問美容師は店舗を構えなくてよいので、美容室やヘアサロンを開業するほど開業費用はかかりませんが、集客のための活動に力を入れる必要があります。
チラシを作成して介護福祉施設などにあいさつ回りをしたり、ホームページやSNSを使って広く情報を発信したりして、認知度を高めましょう。
訪問美容師は、これからの高齢化社会でますます必要とされる仕事となっていくことが見込まれます。スキルの高い訪問美容師を目指すなら、福祉理美容師の資格を取得することがおすすめです。
訪問美容師の求人を探すなら、求人サイト「リジョブ」がおすすめ。訪問美容に特化したサロンの求人情報を豊富に掲載しており、条件を細かく設定して検索できるので、自分の希望にぴったりの求人を見つけやすくなっています。
多くの方が自分に合った職場を見つけており、利用者の転職満足度も高く※、安心してキャリアをスタートできる環境が整っています。
多様な選択肢から、自分に合ったサロンを探して、訪問美容師としての第一歩を踏み出してみましょう。
※リジョブ経由で採用された1,242名を対象に 実施した満足度自社調査より (実施期間:2023年2月8日〜2023年3月8日)

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