【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.1/SNS活用でお客様との関係構築&売り上げもキープ/JENO 若奈さん #1
コロナ禍での働き方は、「時短で高パフォーマンス」がキーワード。そんなwithコロナ時代を生き抜くために、どんな取り組みを行っているのか、そのプラス効果とは?
今回取材したのは、apishグループの美容室「JENO」で副店長を務める若奈さん。表参道で人気店でも、春先にはノーゲストの日もあったという厳しい現実を受け止めて−−。ヘアサロンのあり方や働き方の変化について、リアルな声をお聞きしました。
お話を伺ったのは…
JENO 副店長 若奈さん
代表の堀江昌樹氏のアシスタントとして、一般誌・業界誌・ヘアショー・セミナー等の現場で数多くの経験を積む。現在は副店長として、後輩の指導も行いながらサロンワークを盛り上げる売れっ子スタイリストに。明るく親しみやすい性格、それでいて頼りになる技術力を持ち合わせていることから、男女問わず幅広いお客様から支持を得ている。
効率重視の勤務システム/週1休み、ZOOM会議で接触人数削減
——コロナ禍で、サロンの勤務体制は変わりましたか?
5月、6月くらいまでは、スタッフはなるべく最小限にし、予約の数に合わせて出勤人数を調整していましたが、少し経ってお客様が戻ってくるようになってからは、お店の公休が変わりました。それまでの火曜定休+週2回は月火が休みというのを、火曜定休だけにしてお店の稼働率を上げています。お客様が来やすいようにと、あとその分スタッフの休みが分けられるので、人数的にもぎゅうぎゅうにならずバランスは取りやすいです。
JENOにはママ美容師も在籍しているのですが、これを機に8:30出勤に時間を早めました。朝からプレス業なども兼任でやりながら、後ろはだいたい16:30くらいまで。お子さんがいらっしゃるお客様は早い時間帯にカットに来たいという方も結構多くて(コロナでさらに増えたかもしれません)、ご希望がある場合は早朝から対応しています。
——テレワークを活用していますか?
店長会議やセミナー会議など、週1くらいで店舗に集まって顔を合わせてやっていたミーティング系は、すべてZOOMになりました。画面上のあの独特の雰囲気って、意見を言い合うようなことがなかなか難しかったりもするんですが、その分ひとつひとつの発言に重みも出ますよね。今、(同グループの)apishが国分寺や海老名だったり遠方にも店舗があるので、店長会議だとその日に都心まで来る移動時間や交通費がカットできているのも利点。これまでは会議のたびに午前中の予約を切っていたわけで、それがなくなったのは何気に大きい。
最近では、スタイリスト試験もZOOMを活用中です。コロナ前は、試験をする時に、他のスタッフたちもその周りに集まって見守りながら行っていましたが、人数が多くなってしまうのでそれをZOOMに。先輩スタイリスト2、3人は現場につき、試験の様子を撮影するカメラワーク担当もいます。カメラワークはアシスタントではなく、技術があるスタイリストが担当することで、撮るべき角度やポイントを外さずに画面でもしっかり伝えることができています。
集客のコツ/SNSをさらに強化! LINE@導入で伝えたい情報はリアルタイムで
——顧客とのコミュニケーションで工夫した点はありますか?
それまで来ていただいてたお客様を離さないように、という意味ではSNSは欠かせない存在ですね。今までSNSを頑張ってやっていた人、お客様とつながるツールをちゃんと持っていた人はコロナ禍でも強かったように感じます。スタッフの中では、LINE@を活用していた人も。登録してもらっているお客様みんなに配信できるシステムなので、例えば具体的な出勤日や時間だったり、こんな感染予防始めましたとか、お知らせしたいことをリアルタイムで簡単にお伝えできるのがメリット。相手からのメッセージでやりとりもできるから、そういうのも上手く活用してできるだけお客様が来やすい環境作りに取り組んでいます。
——若奈さんはインスタも積極的に更新していますが、反応としてはどうですか?
個人的にヘアアレンジが好きで、自粛期間中からアレンジ動画を頻繁にあげてきました。今でも続けています。それはコンテンツの配信としてもそうなんですが、お客様に思い出してもらえるようにという意味合いもあって。すぐにお店に来れなくても、覚えてもらえてるかどうか、気軽にコミュニケーションを取れるような環境があるかどうかで、いざ来店しようとなった時のスムーズさが全然違うと思うんですよ。そこがゼロだと、たまに送ったDMやハガキを見たところで果たして来てもらえるのか……その辺はやはりSNSの継続が強いと思います。
インスタをきっかけに新規で来てくださる方もいますし、動画で使ったスタイリング剤の問い合わせがあったり、温かいメッセージをいただいて自分自身の励みになったりもしています。
自粛期間中には、SNSが得意な若手の子たちが講習をしたことも。画像の加工のコツや動画の編集、ハッシュタグをどう工夫するか……などなど、めちゃくちゃ勉強になりました。今でもその講習は続いていて、勉強&実践を続けています。
時短接客のコツ/完全予約制の徹底&施術間のロスタイムを減らして時短に
——接客面で時短を意識しているポイントはありますか?
カットやカラーなどの施術時間そのものを短くするのはやはり難しいんですよね。コロナを機に見直したのは、「お客様を待たせない」ことの徹底。それが結果、時短になるかなとも思います。以前は、入り口近くの待ち合いスペースでシャンプーを待ってもらう時間も、少し混んでいたら10分15分とかかってしまう時がありました。「(ひどい話なんですが)待つのも仕方ない」という空気感がどこかにあって、それをお店側もお客様側にも慣れさせてしまったのかもしれません。
予約しているのに予約時間から始まれない、そこをまずなくすために、予約の取り方や人数の調整も曖昧にならないよう確実に。以前は週末に予約が集中しがちでしたが、今は平日でも大丈夫ですと言ってくださるお客様も増えています。希望の日時が難しかったら無理して詰めず、前後のあいている日時を提案する、余裕を持ったご案内ができるように心掛けています。
あとは、施術の間の待ち時間も同じことですね。とにかくお客様をじっと待たせる時間を少なく。そういうちょこちょこと積み重なっていたロスタイムを、できるだけカットできるように意識しています。
売り上げはどう変化した?/大きなアップダウンを経て秋冬は徐々に安定
——コロナ禍で売り上げの変動が大きかったと思います。
3月から減ってきて、4月にはがこーーーーんと落ちましたね。緊急事態宣言が出て、1週間ほどサロンはお休みになりました。5月のGW開けまではノーゲストという日もありましたね。5月後半ぐらいからまた徐々に外に出られるようになって、そこからみんなが一気に髪を切りに来た! という感じで6月の売り上げはかなり上がりました。例年であれば、夏は帰省や旅行する人が多いので美容室も混む傾向なのですが、今年はみんながどこへも行けない感じだったので、お店もかなり静かな夏に。秋冬にかけては戻りつつあり、安定していくといいなと思っています。
——店販の動きはどうでしたか?
店販はかなり伸びましたね。みなさんが家で過ごす時間が増えたことと、サロンでトリートメントやヘッドスパをしていたのを一部カットして自宅ケアを推奨した点がポイントだと思います。シャンプーなどのケアアイテムだけでなく、ストレートアイロンとかツール系も前より動きがあります。なかなかお店に来れないので、SNSでこういうのが欲しい、何を使ったらいいのか? という質問も結構あって、そこから商品をご案内することも。店舗、ECサイトからの購入、お店から通販でお届けしたり、お客様の需要に合わせてしっかり対応できるようにしています。
リアルで会えなくても、お客様との関係性をキープすることや、最新情報をお伝えする、商品のご案内&購入誘導……。「働き方改革の分かれ目はSNS」と言ってもいいくらい、コロナ禍ではSNSがより重要なツールに。
後編では、そんな若奈さんの1日のタイムケジュールや、今後の動向などについてお伺いします。
▽後編はこちら▽
【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.1/サロンでの技術+αの展開がこれからの定番に/JENO 若奈さん #2>>
取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:mika