介護福祉士の受験資格と国家試験の概要を解説|介護福祉士の仕事内容&勤務先とは?
介護福祉士は国家資格であり、取得のためには国家試験に合格することが条件となっています。しかし、誰でも受験できるわけではなく、要件を満たす人だけが受験資格を得られるのが特徴です。
今回は介護福祉士の仕事をするうえで知っておきたいであろう国家試験や仕事内容、勤務先などをくわしく解説します。
介護福祉士国家試験の受験資格とは? 4つのルートを解説!
介護福祉士国家試験の受験資格には、どういったルートがあるのでしょうか。ここでは、4つのルートについてくわしく解説していきます。
1. 養成施設ルート|履修期間2年以上
養成施設ルートは、介護福祉士の養成施設において必要な知識と技術をおさめて卒業するコースです。
・2年制の専門学校や短大などの養成施設を卒業する
・福祉系の大学で単位習得したあと、1年間の養成施設を卒業する
・社会福祉士養成施設を卒業したあと、1年間の養成施設を卒業する
・保育士養成施設を卒業したあと、1年間の養成施設を卒業する
上記の養成施設を卒業したあとに、国家試験を受験するコースとなっています。
卒業年度によって資格取得(登録)までのルートがわかれる
「社会福祉士及び介護福祉士法」が改正され、2017年度より養成施設ルートが国家資格の受験資格となりました。養成施設を2026年度末までに卒業すれば、その後5年間は国家試験を受けずに介護福祉士になることができます。
この期間の間に国家試験に合格する、もしくは卒業してから5年間続けて介護の仕事に就いていれば、5年経ったあとも登録が抹消されるようなことはありません。なお、2027年度以降に養成施設を卒業する予定の方にはこのルートは適用されないため、国家試験に合格する必要があります。
2. 実務経験+実務者研修ルート|実務経験3年以上
実務経験ルートとは、3年以上の実務経験に加えて、養成施設における「実務者研修」を修了するコースです。
実務経験に加えて、「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引研修」の受講を修了している場合にも受験することができます。
その期間としては、以下の基準を満たさなければなりません。
・試験を実施した年度の3月31日までに、実務経験の対象となる施設(事業)もしくは職種にて、3年以上(1,095日以上)の従業期間、また540日以上の従業日数が必要
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実務経験の範囲とは?
実務経験は、大きくわけて5つの分野と事業を対象としています。「児童分野」「障害者分野」「高齢者分野」「その他の分野」「介護等の便宜を提供する事業」の5つです。
これらの施設または事業にて、「介護等の業務に従事したと認められる職種」に該当していれば、受験資格を取得することができます。
3. 福祉系高校ルート|履修期間3年以上
福祉系高校で定められた科目・単位を取得し、卒業することで受験資格を取得できるコースです。「2009年度以降入学者」「特例高校など」「2008年度以前入学者」とで、必要な要項が異なります。
2009年度以降入学者
学校教育法における高等学校または中等教育学校において、2009年度以降に入学した方は、9教科53単位の「新カリキュラム」を受けることとなっています。
新カリキュラムを修了して卒業された方(卒業見込みの方を含む)の場合は、実技試験が免除されているため、介護技術講習の受講は不要です。
特例高校など
特例高校に2009年度以降に入学し、必要な単位数を取得して卒業した場合は、卒業後に9カ月以上の実務経験が必要です。その後、介護技術講習を受講すれば、国家試験での実技試験が免除されます。未受講の場合は国家試験で実技試験があります。
また、実務経験は従事期間9カ月(273日)以上、かつ従事日数135日以上を両方満たさなければなりません。
2008年度以前入学者
学校教育法における高等学校において、2008年度以前に入学した方の場合、次のどちらか条件を満たす必要があります。
・専攻科や別科を除いた高等学校で、旧カリキュラムの単位数を修了して卒業された方・大学へ飛び入学する
・高等学校の専攻科(修業年限2年以上)において旧カリキュラムを修了して卒業する
その後、介護技術講習を受講すれば、国家試験での実技試験が免除されます。未受講の場合は、国家試験で実技試験を受けなければなりません。
4. 経済連携協定(EPA)ルート
こちらのルートは、経済連携協定にもとづいて来日した外国国籍の方が、受入れ先施設での資格の取得を目的とした研修を受けながら、就労を目指すというコースです。
現在、EPAにもとづく入国者は、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3国のみとなっており、さまざまな分野での協力や幅広い経済関係の強化を目的としています。
受験資格があるかわからない…
「自分の経歴や経験で受験資格があるのかどうか分からない」という方もいるでしょう。そんなときに便利な、受験資格をチェックできるページがあります。下記リンクにて確認してみてはいかがでしょうか。
第35回介護福祉士国家試験の概要を紹介
介護福祉士の受験資格やルートについてわかったところで、つづいては試験概要について確認しておきましょう。
【2022年】介護福祉士国家試験の概要を紹介|おすすめの勉強法とは
1. 試験日|筆記試験・実技試験
第35回の介護福祉士国家試験日の日程は、以下の予定となっています。
・筆記試験:2023年5月下旬
・実技試験:2023年3月上旬※実技は該当者のみ
現時点では予定のため、詳しい日程は公表されていません。
2. 試験地|筆記試験と実技試験で会場が変わる
筆記試験は全国にて実施。実技試験は東京と大阪のみでの実施となるため、実技試験の受験が必要な方は注意が必要です。
3. 試験内容|過去問はダウンロード可能
出題形式は5肢択一となっており、出題数は5領域13科目の範囲から全125問が出題されます。
1問1点の合計125点で、合格基準は総得点の60%程度に問題の難易度で補正した点数以上が基準です。
過去3年間の試験問題の内容と過去問は、以下のURLよりダウンロード可能となっていますので、チェックしてみるとよいでしょう。
4. 受験申込書の受付(提出)期間|8月上旬から
受験申込書の受付期間は、以下の期間を予定しています。
2022年8月上旬~9月下旬
※消印有効
受験手数料は1万8,380円となっています。
はじめて受験する方は、「受験の手引」を忘れずに取り寄せましょう。請求してから届くまでに数日かかるため、早めに取り寄せておく必要があります。なお、過去に受験歴がある方はインターネット申し込みが可能です。
5. 合格発表
2022年度に開催予定の第35回の試験について、現時点で詳細は未定ですが、第34回の合格発表は2022年3月25日(金)の14時におこなわれているので大体同じ頃だと予想されます。
合格率は72.3%と、超難関というほど低くはありません。しかし、一発合格を目指すためには、筆記試験対策など自分に合った勉強法で臨むようにしたいところです。
合格したら登録申請をしよう!
国家試験に合格しただけでは介護福祉士を名乗れず、合格後は登録申請をして介護士として登録しなければなりません。
試験合格通知書に同封される「登録の手引き」を参考にしながら申請書類を作成し、登録証が届くまで1カ月から1カ月半程度を見込んで申請しましょう。
介護職のキャリアパスとは? 介護福祉士の資格を取得するメリットを解説
キャリアパスは、「職員それぞれが目標ややりがいを持って働ける環境」を整える制度のことです。
導入により介護職だけでなく事業所側にとっても大きなメリットをもたらしますが、ここでは介護職側のメリットを中心にご紹介します。
介護職のキャリアパスとは|介護業界でステップアップを狙おう
介護職のキャリアパスは、介護の基礎知識を学ぶ「介護職員初任者研修」、資格取得には受講しておきたい「介護福祉士実務者研修」を経て介護福祉士になるルートのことをいいます。
また、民間資格にはなりますが、認定介護福祉士の認定を受け、高い専門性やスキルを証明することも可能です。
職場内でのステップアップやモチベーション向上につながるのはもちろんですが、キャリアパスは転職時にも役立ちます。
介護福祉士の資格を取得するメリットとは?
介護福祉士の資格取得による具体的なメリットとしては、一体どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、資格を取得するメリットをご紹介します。
1. 仕事の幅が広がる|介護系唯一の国家資格
介護関連のなかで唯一の国家資格です。そのため、資格を取得することで介護職以外の要件を満たすことがあり、事業所によっては管理職への道も開けるなど仕事の幅が大きく広がります。
さらに転職にも有利で、介護福祉士養成施設や福祉系高校の教員、初任者研修や実務者研修の講師になれる可能性も。また、高いコミュニケーションスキルを活かし、介護業界以外での活躍もじゅうぶん期待できます。
2. 収入UPにつながる|介護福祉士の給与はどれくらい?
介護福祉士の資格取得は、収入アップに直結します。2020年度におこなわれた介護従事者処遇状況等調査によれば、無資格者では月給27万5,920円という結果が出ていました。
それに対し、介護福祉士の資格保持者は月給32万9,250円と、約5万円も上回っているのがわかります。
どんな仕事をするの? 介護福祉士の仕事内容とは
介護福祉士は介護のプロフェッショナルとして、また介護スタッフのリーダー的存在として、さまざまな仕事をおこなっています。
ここでは、具体的な仕事内容としてはどのようなものがあるのかを確認しておきましょう。
1. 身体介助|食事や入浴・排せつの介助
介護職本来の仕事として真っ先に挙げられるのが、要介護者の体に直接触れる身体介護でしょう。
日常生活を送るのが困難な利用者に対し、食事や排せつの介助、入浴のサポートといった必要な支援をおこないます。
2. 生活援助|家事や買い物代行など
身体介護とならぶ介護福祉士の役割は、生活援助です。とくにひとり暮らしの高齢者は、炊事洗濯といった家事や買い物をするのが困難な場合もあるため、訪問介護のサービスを通じ充実した日常生活をサポートします。
身体介護に付随する支援にも見られがちですが、利用者の暮らしを支える仕事としては生活援助も重要な役割です。
3. 家族への助言・相談業務
利用者の体調や利用状況について家族と情報共有することも、介護福祉士の大切な仕事です。
その際介護に関する相談に対応したり、在宅介護や介護用品の選択をアドバイスしたりと、家族も交えた質の高い介護をサポートしています。
4. 社会活動支援|人間関係構築をサポート
利用者の社会活動を支援するものもあります。要介護状態で外出が困難になった利用者が地域から孤立しないよう、地域住民との人間関係構築やイベントへの参加をサポートするなどです。
間接的な支援になりますが、利用者のQOLを維持・向上させるためには欠かせない仕事といえるでしょう。
5. 介護スタッフの指導・管理
介護福祉士は現場のリーダーとして、スタッフのタスク管理や教育指導といったマネジメント業務にも携わります。
必要に応じ、ほかの職種との連携もとることで、より適切な介護をおこなうことも可能です。
どんなところで働くの? 介護福祉士のおもな勤務先を紹介
国家資格である介護福祉士は、介護のプロフェッショナルとしてさまざまな職場で活躍が期待されています。
介護の仕事というと高齢者対象のサービスを連想しがちですが、高齢者福祉や介護分野以外にも専門性の高さが役立つ職場は多く、幅広い勤務先で働くことが可能です。
1. 高齢者福祉施設|特別養護老人ホーム・デイサービスなど
介護福祉士の勤務先として真っ先に挙げられるのが、高齢者福祉施設や介護サービス事業所といった高齢者の介護にあたる職場です。入所施設の場合は昼夜を問わず入所者の状況をみまもり、緊急時にはすぐ対応にあたることで症状悪化を防ぐサポートをおこないます。
利用者を見守る点は居宅介護サービスにも共通しますが、入所施設より要介護度が低い利用者が多いため、仕事の範囲はより広くなるでしょう。
2. 障害者福祉施設|身体障害者施設・放課後デイサービスなど
障がい者サービスをおこなう事業所も介護福祉士の知見が活かされる勤務先のひとつで、身体に障がいを抱える人の介護では貴重な存在となります。
放課後等デイサービスや就労支援事業所といった通所系のサービスでも身体介護を要する利用者がいますが、とくに入所施設で担う役割は高齢者施設以上に重要です。
3. 医療施設|急性期病院・療養型病院など
少々意外かもしれませんが、介護福祉士が活躍できる勤務先としては、緊急時の対応にあたる急性期病院や長期的な視点で医療をおこなう療養型病院などの医療施設も挙げられます。
身体的な不自由を抱える患者の介護は、医療職である看護師より介護職である介護福祉士に一日の長があるからです。
病院で働く介護福祉士の仕事内容を紹介! 施設とはどう違うの?|病院からの需要は高い?
受験資格を満たして国家試験を受験しよう!
介護福祉士は国が認めた資格として、取得することでさまざまなメリットが得られます。資格を取得するためには年1回の国家試験に合格することが条件ですが、そもそも受験するには一定の要件を満たさなければなりません。
専門性やスキルの証明にもなる介護福祉士資格は、スケジュールの確認も含め、万全の試験対策をしたうえで国家試験に臨むようにしましょう。
引用元サイト
厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果
社会福祉振興・試験センター 介護福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)