数字に振り回されず、自分の道を追求することを楽しむ。ネイリスト 森谷哲朗さんの認知度アップ法
都内にプライベートサロンを構える森谷哲朗さん。前編では、誰にも真似できない独自性の高いデザインで人気となり、経営を安定させてきたことについて伺いました。
後編では、インスタグラムのフォロワーが3万人を超える森谷さんに、どのように認知度アップをしてきたかをお聞きします。「SNS運用と呼べるようなものは何もしていないんです」と森谷さん。その裏側にあったのは、フォロワーの数は気にせず、自分のスタイルを貫き、それを楽しむ姿勢でした。
今回お話を伺ったのは、森谷哲朗さん。
森谷哲朗さん
都内プライベートネイルサロンオーナー。ジェルネイルブランド「SHINYGEL」ディレクター。建築系の大学を中退後、美容の道に進みたいと考えるようになり、メイクスクール、ネイルスクールを経て、ネイリストへ。都内のネイルサロンで店長まで経験したあと独立し、2013年都内にプライベートネイルサロンをオープン。伝統工芸などの素材を使った唯一無二のデザインで話題になり、日本のみならず台湾や中国などでもセミナーを重ねる。
Instagram:@tetsubozu
集客の第一歩は異業種交流会への参加。1つひとつの縁を大切に
————最初は顧客ゼロの状態だったそうですが、自分らしいデザインを確立する以外にも、集客のためにやられていたことがあれば教えてください。
今のサロンの物件を管理している不動産会社の方に紹介していただいて、最初は異業種交流会に参加するようにしていました。その会が主催している朝活や夜の飲み会にもよく出席して、手当たり次第に名刺を配り、顔を売っていましたね。その朝活の一環で、自分が講師として、ビジネスマンに向けた男性の身だしなみ講座をやったこともあります。ここで広げたご縁から、実際にお客さまとして来ていただいたり、お客さまを紹介していただいたりしました。
————SNSは活用しなかったのですか?
インスタグラムを一応やっていましたけど、そこまでフォロワーもいなかったので、SNSでの集客はできていませんでした。まずは強みを作ること、それがないとSNSでの集客は難しいと思っていたんです。最初の1年は異業種交流会での人脈づくり、自分らしい強みのあるデザインづくりを並行してやっていましたね。
SNS運用の流行は追わず、自分が楽しいと思える投稿を
————そこからどうやってフォロワーを増やしていったんでしょうか?
一気に1万フォロワーを超えたのは、セミナーに登壇するようになってからです。きっかけとなったのは、前編でもお話したabyssというネイルデザインを、ネイル業界のディーラーさんや、そこで働かれているネイリストさんがシェアしてくださったからですが、その時点ではSNSにそこまで大きな動きはありませんでした。その後セミナー講師として登壇するようになってからフォロワーがどんどん増えたので、セミナーの力が大きかったと思います。
セミナーで自分が教えたデザインをネイリストさんが作ってインスタでタグ付けしてくれると、コメントを返したり、相互フォローなどもよくしていました。その流れもあって、今でもフォロワーの多くがネイリストさんなんです。
————森谷さんのインスタグラムの投稿は、手の全体を写したものではなく、アートの一部に寄って撮影しているものが多いですが、それはなぜですか?
自分のアートの強い部分、見せたい部分を強調して撮るようにしていますね。でもこれも、フォロワーを増やすためにそうしているってわけではないんですよ。むしろ、インスタ投稿の最近の流行は、10本の指がきれいに見えるほうが反応はいいと思っています。あとは「モテネイル」みたいな文字が入っているコラージュ的な投稿だったり、動画になっていたりとか。そういう投稿のほうが目を引きやすいし、フォロワーを増やせるんじゃないかと思うんです。自分は逆の方向に動いている気がしています(笑)。
————なぜ、逆の方向に?(笑)
正直に言ってしまうと、フォロワーを増やそうというふうに今はあまり思っていないんです。確かに新規のお客さまはインスタから来てくださることが多いですが、今はあまりフォロワーの数字は気にしていないですね。3万人フォロワーがいたとしても、「いいね」がつくのは多くて400くらい。アクティビティを確認しても、そこまで動きはないので、フォロワーを追うより自分がいいと思うものを投稿していこうと。そのほうが楽しいというのもあります。
自分の性格的にも、あまのじゃくってわけではないんですけど、周りがやっているから自分もやろう! とは思えないタイプなんですよね…。ガツガツできないというか。自分のだめな部分だと思っているんですけどね(笑)。
工芸職人応援クラファンで1044%を達成! コアなファンを増やすきっかけに
————緊急事態宣言中に、「ネイリストが考える工芸職人応援プロジェクト」というクラウドファンディングに、発起人の1人として参加されたそうですが、どのような経緯で?
このクラファンの発起人で、伝統工芸をパーツに使った伝統工芸ネイルの発案者である「ネイルサロン藍rish」の山田愛理先生から声をかけていただいたからです。愛理先生とは昔から知り合いで、自分のネイルにもよく本物の漆や螺鈿、七宝焼などの伝統工芸のパーツを使っていました。愛理先生からコロナ禍で職人さんたちが甚大な被害を受けていると聞き、自分にできることがあればと参加させていただいたんです。内容としては、ネイリストの方向けに伝統工芸ネイルのパーツを支援していただく形になっています。目標金額が50万円だったのですが、結果的には500万円を超える支援が集まりました。これには驚きましたし、とてもうれしかったです。
————クラファンが終わったあとの変化はいかがですか?
純粋に自分を応援してくださる、コアなファンが増えたと思います。
このクラファンのリターンの1つとして、伝統工芸ネイルシークレットアカウントにファンを招待しているんです。4名いる伝統工芸ネイリストメンバーが月に4回ライブ配信をしているのですが、定期的に集まってもらうので、交流も生まれやすいんですよ。数の面では、インスタのフォロワーのほうが圧倒的に多いですが、シークレットアカウントのメンバーはコメントで盛り上がってくれたり、すごく身近に感じる存在で、力をもらっています。
今はコロナ禍で難しいですが、落ち着いたら伝統工芸ネイリストメンバーと展示会をしたり、シークレットアカウントのメンバーとも直接お会いして交流したいなと考えています。
認知度をアップさせる3つの掟
森谷さんが考える認知度アップの掟をお聞きすると、以下の3つでした。
1. 最初は地道に、認知度を足で稼いでいく
2. 流行にのるより、自分が楽しいと思えるSNS投稿を続ける
3. 数を増やすよりも、自分のことを応援してくれる人を大切にする
その穏やかな話しぶりとは対照的に、自分の世界を強くもっている森谷さん。伝統工芸ネイルシークレットアカウントは、入会金を一度払えば、毎月インスタライブに参加できるそうなので、日本が誇る伝統工芸ネイルに興味がある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
▽後編はこちら▽
奥行き感のある独自のデザインを確立し、人気店へ成長! ネイリスト 森谷哲朗さんの経営術>>