ロンドンでアロマセラピストに。学生ビザ滞在中に自宅サロンで成功!【メアリーズ・ボーテ代表 西尾麻里さん】#1
プライベートアロマセラピーサロン「メアリーズ・ボーテ」代表の西尾麻里さんは数々の有名ホテルでサロン立ち上げに携わってこられた実力派セラピストです。その経歴も実に多彩。旅行会社勤務を経て、ロンドンでアロマセラピストとしての人生をスタートさせました。
前編では、アロマセラピーとの思いがけない出会い、アロマセラピストとして独立を果たしたロンドン時代、帰国後にホテルサロンに就職をしたお話を伺います。
NISHIO’S PROFILE
気軽にはじめたアロマが意外にも天職
――以前は会社勤めをされていたそうですね。
大学卒業後は旅行会社に勤めていました。ヨーロッパ旅行の企画などをやっていたのですが、かなりの激務で深夜の3時にタクシーで帰宅する毎日。企画の仕事は楽しかったのですが、10年後の自分の姿が想像できなくなってしまって。出世欲はなかったので、この激務がずっと続くのは辛いと思って退職したんです。
――退職後はどのような道を?
「企業勤めはもう嫌。もっと自由になりたい!」と、学生時代から抱いていた「海外に行きたい」という気持ちが再熱したんです(笑)。企画の仕事をしていた頃、外国人のクライアントと上手に英語でお喋りできなかったのが悔しくて、友達みたいに会話できるようになりたかったのも理由の一つです。
――それでロンドンに渡ったのですね。留学後まもなくアロマセラピーに出会ったのでしょうか?
いえ、アロマセラピーの道に進むのはもう少しあと(笑)。
ロンドンで何を勉強しようかと考えたときに、3つの候補が上がったんです。1つ目がOL時代に好きだったフラワーアレンジメントをやること。もともと自分の城を持ってお店を開くのに憧れていたんです(その気持ちが今につながっているんですけど)。2つ目が日本語学校の教師。そして3つ目が、仕方がないからもう一回旅行会社で働く。
結局、日本語教師を目指して学校に入学し、教育実習までやりました。
――日本語教師はやってみていかがでしたか?
100%水を得た魚のようにはいきませんでしたね。語学って思っていた以上に奥が深くて、何か違うなと思い、一年勉強して断念しました。
それでもっと本格的に英語を勉強することにしたんです。「英語で語学以外のことを学ばなければ上達しないよ」と言われたため、何を学ぼうかと色々探していたところ、本屋でたまたま手に取ったのがアロマの本だったんです。普段は読みやすい雑誌ばかりを選んで読んでいた私ですが、アロマの本は専門用語ばかりにも関わらず、不思議とスーッと頭に入ってきたんですよね。
――すごい! そこからアロマの道に進むわけですね。
日本にいた頃からアロマに興味があったので、ロンドンにアロマの本とラベンダーの精油を持って来ていたんです。だから「アロマでも良いかも! 気軽にはじめたことの方が案外天職だったりして…」と軽いノリではじめたのですが、本当にその通りで(笑)。その後アロマセラピーの学校に入り、勉強すればするほどのめり込んでいきました。
小さい頃からよく親や近所のおばちゃんにマッサージをしていたこともあり、手技は得意な方だったのですが、習いはじめたらますます上達しちゃって(笑)。卒業試験の実技で、「この子上手いわ!!」とベタ褒めされたのは嬉しかったですね。一方、まだ英語がままならないレベルだったのでペーパーテストの方はすごく苦戦しましたけど…。
「イタ気持ち良い」がロンドンで好評
――卒業後は現地のサロンに勤められたのですか?
そうなんです。イギリス人の知人に「私が行っているサロンでマッサージ師を募集しているから、受けてみれば?」と紹介されて、エステサロンでアロママッサージをやっていました。
でも、私が汗をかきながら施術をしているのに対して、エステ担当のスタッフが座りながら脱毛とかフェイシャルをやっているのを見て、「エステってラクそうだな」と思っちゃったんです(笑)。私もボディだけでなく、フェイシャルとかも習得すれば座りながら仕事ができるんじゃないかと。それでエステの学校に通い出し、2年間フルタイムでがっつり学びました。
――イギリスではマッサージの需要は高いのですか?
みんな好きだと思いますよ。でも、私がいた1997年頃は優しいマッサージが主流だったので、学生時代に強い指圧で練習していると「痛い」と言われることが多かったですね。けれど、お客様に施術してみると逆に新鮮だったみたいです。「これは何のマッサージ?」と聞かれて「アロマセラピーですよ」と答えると、「これはアロマセラピーじゃないわよ。だから西尾マッサージと名前をつけた方が良い」と言われていました。
――活動の場を日本に移したのはなぜですか?
マッサージだけで食べていけるようになったのは最後の2~3年でしたが、実は学生ビザでロンドンに滞在していたので、事業をはじめてはいけなかったんです(笑)。だから、独立後はプライベートでマッサージをしていたのですが、活動にも限度があるなと感じ、帰国することを決めました。
「ホテルサロンだから優秀」とは思っていません
――帰国後はどちらに就職を?
最初に就職したのは、新橋にある足つぼマッサージのお店でした。私の経歴を見たオーナーに「西尾さん、しっかり勉強してきたようだけど、本当にうちで良いの?」と聞かれましたが、就職の仕方も日本の事情もわからなかったので「全然良いです!」と即答。あまり長くはいませんでしたが、指圧や足つぼの技術を色々と教わることができました。
あるとき、友人が「英語が話せるセラピストを募集してるよ」と一流ホテルの電話番号を持って来てくれて。ホテルにマッサージサロンを立ち上げるということで、立ち上げスタッフとして採用され、アロマやフェイシャルをやっていました。
――ホテルサロン入社後、瞬く間に指名率1位に上り詰めたそうですが、どんな苦労をされたのでしょうか?
自分では「上り詰めてやる!」と野望を持ってやっていたわけではないんです(笑)。目の前のお客様に誠心誠意尽くしてきたから。日々の積み重ねがそのような結果につながったのだと思います。
――一流ホテルのサロンは優秀な方ばかりだったのではないでしょうか?
必ずしもそうとは限らないと、私は思うんです。一流ホテルだから上手い人しかいない、お手頃サロンだから下手な人しかいない、というわけではないんじゃないかと。
ホテルサロンは、リッチな雰囲気を味わいたくて訪れる人が多いと思います。「たまには贅沢して、ゴージャスなところでマッサージしてもらおう」という一見さんも多いです。それに、「肩凝りがひどくて…」「腰痛を治して」とわざわざ言う方はいません。
一方、個人サロンの場合は「日常のこれを何とかしてほしい」と人が押しかけるので、常に結果を求められます。加えて、施術者の人柄や接客力なども人気につながるので、オールマイティーさが求められるんです。むしろ個人サロンの方が厳しいのではないでしょうか。だから、ホテルサロンで働いている人が飛び抜けて優秀というわけではない、と私は思います。
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ロンドン時代、慣れない英語を話しながらバイトやアロマの勉強を掛け持ちするという中々ハードな生活を送っていたようですが、意外にも「キツくはなかった。楽しかった」とのこと。自身を「根は仕事人間」と認める西尾さんは、さらにアロマセラピストとして、活躍の場を広げていきます。後編は、介護施設での経験や独立にまつわるお話を伺います。
▽後編はこちら▽
大切なのはハート。誠実さと向上心こそがお客様満足度に比例する【メアリーズ・ボーテ代表 西尾麻里さん】#2>>
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/石原麻里絵(fort)