【SNS活用術】個人サロンにとってInstagramは集客ツールではなく、ファンを増やす手段 【ネイルの小部屋カタンコトン オーナー カオリさん】#1
路面電車のような趣のあるローカル路線・世田谷線が走る小さな街。レトロなアパートの一室で営んでいるネイルサロン「ネイルの小部屋カタンコトン」には、温かみのある手描きデザインに恋して、遠方からも多くの女性が足を運びます。
オーナーのカオリさんがネイルサロンを構えたのはおよそ7年前。ネイリスト経験ゼロからのスタートだったそうですが、Instagramにやみくもにネイル作品を投稿していた最初の頃は、フォロワー数が増えても来店にはつながらず…。「どんな人に届けたいか」を徹底的に考えて投稿スタイルを変えたところ、「ファン」の来店が増えたのだとか。
前編では、同じ価値観を持つお客様に届ける「想いをのせる」投稿について教えていただきます。個人サロンとして大切なのは「客の数」よりも、世界観に共感してくれる「ファンの数」なのだそう。
教えてくれたのは…
「ネイルの小部屋カタンコトン」
オーナー カオリさん
CAから転身後、世田谷の街にプライベートネイルサロンを構え、ネイリスト人生をスタート。ほっこりと温かみのあるデザインと世界観で、年代問わず「可愛らしい」雰囲気を持った女性が日々訪れる。Instagramにはネイル作品だけでなく、花やスイーツ、カフェといった、一人の女性の暮らしを垣間見れるような投稿テクニックも特徴的。
Instagram:@katankotonnail
サロン経験ゼロ、お客様ゼロからのInstagram集客
――オープン7年目とのことですが、当初からInstagramを活用していたのですか?
最初はブログでした。集客にお金はかけないと決めていたので、オープン1ヶ月前の準備期間にブログを開設して記事をたくさん書いていたんです。けれど、周りを見渡したらほとんどの人がInstagramをやっていたので、「私もした方が良いのかな…?」という感じではじめました(笑)。Instagramはオープン3ヶ月後くらいからですね。
――最初はどんな投稿をしていたのですか?
見様見真似ではじめたので、最初の頃は何を載せたら良いのかわからず、とりあえず何でもかんでも投稿していました(笑)。サロン経験ゼロ、お客様ゼロからはじめたので、投稿するデザインやネタのストックがなく、とにかく作品を一日に3つくらい載せていましたね。自分のネイルは他にないデザインだとちょっぴり自信を持っていたので、作品を知ってさえもらえれば好きになってくれるはずだと思っていたんです。けれど、そんなに甘くはなかったですね…。Instagramを見て来てくれた方はほとんどいなかったです。
一方、ブログではサロンの想いや私生活とかを細かく書いていたこともあって、当時の来店はほとんどがブログからでした。
想いを届ける投稿に変えて、ファンを獲得
――Instagramからの集客は結構苦戦されたようですね。
フォロワーが100人までいけば、きっとお店は繁盛するはずだと信じていたのですが、実際は100人集まってもそこから来店につながるわけでもなく…(笑)。そこで、増やすべきは「ファン」なのかなと思ったんです。そのためにInstagram上でサロンのコンセプトや自分の想いを言葉にして伝えてみることにしました。
――「想いをのせる」という投稿スタイルに変えてから、客足に変化はありましたか?
ありました。同じ頃、キュレーションサイトでこの店を取り上げてもらったこともあり、フォロワー数が一日に100人ずつのペースで増え出して、「Instagramを見てきました」というお客様が徐々に増えたんです。お店が軌道に乗り出したのはオープンして半年後くらいですね。
――客層も変わりましたか?
ここに来る前、隣の街で路面店としてやっていたんです。当時のお客様は、店先の看板を見て「ここにネイルサロンがあったんだ」という感じで来店するため、このお店がどんなデザインでやっているのかまでわかっていない方が多かったんです。今のアパートの一室に移ってからは、どんなデザインをやっているのかをよく知った上で来店してくださる方ばかりで…!「思っていた通りのお店だった」「ずっと来たいと思っていた」と言っていただくことが多いですね。しっかりこのお店のファンになってくださっているんだなと実感しています。
自分の好きなものを載せていたこともあって、気の合うお客様が集まってきてくれたという感じですね。そんなお客様に囲まれて、私としてもお仕事しやすいです。
「いつか来てくれたら…」の想いが実り、松山のファンから5年越しの予約
――カオリさんのように、「広告にお金をかけたくない」という個人サロンも多いと思います。
集客のためのInstagramと考えるのではなく、「ファンをつくるため」の手段として考えてみてください。私は「いつかうちに来てくれたら良いなぁ」と思いながら日々投稿していますが、そういう気持ちでやっているとInstagramも楽しいです。SNSを通じてファンをつくると、お仕事をしていてとても楽しくなりますよ。
先日、松山に住むお客様からご予約のお問合せがあったのですが、メールに「Instagramを見てずっと来たいと思っていたんですが、東京に行くチャンスがあったので予約しました!」と書いてあって、5年前くらいに投稿したネイルデザインが添付してあったんです。「このデザインにしたくてずっと保存していました」って。それを見て、ちゃんと私の発信が届いていたんだ! と嬉しかったですね。
最初は見てくれる人がいなくても、地道にコツコツと続けてみてください。そして反応を逐一チェックすること。どんな投稿でいいね! がついたり、フォロワーが増えたのかを考えて、次に活かす。これを繰り返していけばおのずと伸びていくと思いますよ。
――新規顧客数より、ファンを増やす。個人サロンが目指したい一つのスタイルですね。
そうですね。初めの頃は毎月通ってほしいという気持ちがあったのですが、今ではこのお店のデザインが好きなお客様がいてくれて、その方の必要なときに私のネイルが役立てられればそれで良いと思っています。毎月じゃなくても、数年に一度で良い。特別なときに元気を届けられるネイルサロン。これが今、私が目指す姿です。
ファンをつくるための投稿テクニック
1. 自分のデザインをどんな人に届けたいのか、相手を見据えて発信する
2. 作品写真だけでなく、サロンやデザイン、お客様への「想い」を言葉で投稿する
3.「いつか来てくれたら良い」と気長に構えて、地道にコツコツ続ける
カオリさんが集客において前提にしているのが、ファンを増やすこと。新規顧客数を増やすためではなく、サロンの世界観に共感してもらうための投稿で「カオリさんのネイルじゃないと嫌」というファンの獲得に成功したようです。後編では、「ほっこり可愛らしい」世界観が伝わる投稿テクニックをご紹介。
▽後編はこちら▽
【SNS活用術】事務職、週1で花を買う女性。世界観を伝えるにはターゲット設定を具体的に 【ネイルの小部屋カタンコトン オーナー カオリさん】#2>>
取材/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/柴田大地(fort)