コロナ禍だからこそ新店舗オープン! 密を回避して売り上げをのばす戦略とは/Gigiグループ 間島勇大さん #2
コロナ禍により、これまでと同じ働き方が難しくなってきた美容業界。そんなwithコロナ時代を生き抜くために、他のサロンはどんな取り組みを行っているのか、そのプラス効果は?
前編に続き、ヘアサロン「Gigi」「Chill」のオーナー間島勇大さんにインタビュー。緊急事態宣言が出た2020年4月、サロン全体での休業を決めた間島さん。ECでの施術チケットの販売という独自の取り組みで休業中の売り上げを補填しつつ、SNSを強化することで営業再開後は休業前よりも売り上げアップを実現しました。
後編では、3店舗目「Chill」がコロナ禍でオープンした背景を深掘り。Gigiグループのコロナ対策に対する考え、今後の美容室の在り方についてお聞きしていきます。
お話を伺ったのは…
Gigiグループ
CEO 間島勇大さん
茨城県内のサロンを経て、都内有名店に入社。スタイリストデビューから2年後に独立し、表参道と代々木に「Gigi」、2020年9月「Chill」を渋谷にオープン。ヘアサロン以外にも不動産や内装、ウェディングヘアメイクなど、ライフワークスタイル企業として多方面で事業を展開。2021年7月、三軒茶屋にドライヘッドスパ専門店「お隣さんが寝かせてくれない」オープン。
Instagram:@majimayudai
予約枠を減らしつつ店舗を増やして座席を確保する方向に
―昨年4月の休業明け以降、働き方に変化はありましたか?
営業再開にともない除菌や検温、座席間にシートを張ったりという、基本的にみなさんが行っているようなことは取り入れました。やっぱり練習会やタッチアップ、モデル撮影などは当時難しかったですね。でも、そこまで大きく変わったという印象はありませんでした。Gigiは元々週休2日で有給も使えていたので、スタッフの休日の調整などもしていません。
―予約枠の調整などは?
休業前は、売り上げのあるスタッフは5枠ありましたが、かなり密になってしまうので4枠で統一しました。1カ月ずっと5枠稼働していることはあまりないので、売り上げには影響なく、逆に余裕ができて最終的には売り上げも伸びたので、1枠減らしたのはよかったですね。
結局、来店数も右肩上がりになったので、それなら予約調整で席を確保するのではなく、箱を用意しちゃった方が密は回避できるなと考えるようになりました。
―それで9月に「Chill」をオープンしたんですか?
そうですね。予約調整をすれば、どうしてもみんなの売り上げを下げることになるので、伸びるなら伸ばせるようにしていくのが僕の仕事だと考えました。
コロナ禍前から新店舗を出そうとは思っていたんですけど、コロナの流行で先がわからなかったので悩んでいたんです。数字を見ないと判断できないなと思って様子を見ていたところ、世の中が変わった7月8月でも売り上げは右肩上がりでした。
それに伴って席が足りない、デビューするスタイリストも控えている…という状況になってきて。さらにコロナ禍のおかげというか、よい物件も出てきたので、じゃあ新店舗を出しましょう、と。
9月、コロナ禍で新店舗をオープン。
密を回避しつつ売り上げもアップ
―「Chill」のオープンにあたって感染対策などはしましたか?
最初はシートなどもつけていました。でもエビデンスは定かではないんですが、シートがあることで空気の循環が悪くなるという話を聞いて…。「Chill」は広さもあって対面になる席もなく鏡と鏡の間に窓があるので、シートは外して空気の循環を良くし、窓を開けて換気をすることにしました。
シートがないと不安というお客様もいます。そういう場合はGigiの2店舗はシートを設置しているので、そちらを案内するようにしています。
―席を空けるために店舗を増やしてしまうという考えに驚きました。
そもそもアシスタントを雇うかたちで運営している以上、その子がスタイリストデビューしたら新しいアシスタントが必要になるし、辞めない限り人も売り上げも増え続けていくはずなんですよね。そうしたら、どうしても店舗が必要になる。
だから店舗展開については元々想定していたことです。コロナがあって店舗を増やすスピードを修正していった感じですね。
―そもそも人が辞めないことがすごいです。
Gigiはアシスタントでも基本給がしっかり出ますし、毎年昇給があり福利厚生も整っているので、美容師をやっていくのであれば辞めるメリットが少ないんじゃないかと思います。会社としてサロン以外の事業もいろいろ展開し、スタッフが年齢を重ねた後や出産などで働き方が変わった時に活躍できる場所も、7年かけて作ってきました。
正直、美容室の場合は店舗が増えることですぐに利益が出るかというと、そうでもないんです(笑)。でも今がちょうど変わるところかなと思うので、ここから店舗展開したらもっと会社としての利益も出てくるかなと感じています。
コロナ禍でも変わらずスタッフに還元し、お客様に感動を提供していく
―コロナ禍を経て、今後美容師に求められる働き方は、どうなると思いますか?
コロナ以前から美容師の働き方は多様化していましたよね。フリーランスや業務委託、時短…どれも正解だろうし、どれも大変だと思います。だから、こういう働き方がいいんじゃないか、というよりは、会社としてどうなりたいのか、自分たちがどうしていきたいのかというのが、すごく重要になると思うんです。
Gigiの理念は「お客様に感動を、その先の快適さを」。それをスタッフが、会社を通して実現できるか。世の中の当たり前だった座席間のシートを自分たちで調べて判断して外したように、お客様たちの快適さのために何ができるのかを考え続けられるといいなと思います。
僕個人としては、スタッフが目の前のお客様に集中できるように、会社としてスタッフにきちんと還元できる環境を整えること。うちの会社にいることで快適に働けること、「Gigiで働いてよかった」と思ってもらえる人生を作ることが僕の仕事です。
―ありがとうございました。最後に今後の展望や目標を教えてください。
会社の目標は、10年で200億企業になること。ライフワークスタイル企業として、日本一を目指したいと思っています。そのなかで、美容、ウェディング、不動産と内装…と、ライフワークにまつわる事業を展開しています。次は保育園と墓石を考えていたんですが、コロナ禍で保育園のリスクが高くなったので、今必要なものということでドライヘッドスパのお店を出しました。これを5年で全国展開していきたいと思っています。
コロナ禍だからと手を止めるのではなく、状況に合わせながら未来を見据えた取り組みをしていきたいです。
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ヘアサロンだけでなく、幅広い事業を展開しているGigiグループ。スタッフの未来まで考えた店舗展開の構想があったからこそ、コロナ禍という不測の事態にも柔軟に対応していけたのだと感じました。顧客だけでなくスタッフの人生にも寄りそう企業として、Gigiグループの今後の取り組みに注目です。
▽前編はこちら▽
技術チケット販売とSNS強化で休業明けから右肩上がりに!/Gigiグループ 間島勇大さん #1>>
取材・文:山本二季
撮影:米玉利朋子(G.P. FLAG)