難しい局面になったときこそ「質」を高める。それが経営を長く続ける秘訣【レイ・ビューティースタジオ主宰 田中玲子さん】#2

「ゴッドハンド」、「カリスマエステティシャン」の異名をもつ田中玲子さん。日本で初めてサロンケアにタラソテラピーを導入するなど、常に新しいことに取り組む姿勢はテレビや雑誌に取り上げられ、美意識の高い人たちから高い評価を獲得しています。

前編では美容業界に進むきっかけとなった美容コンサルタントの仕事から、サロンを設立するまでのお話を伺いました。後編では、エステティシャンを目指す人、独立を目指す人に向けたアドバイスをご紹介します。

長く続けていれば困難な局面も。そんなときこそ「質」にこだわるべき

田中さんの人柄に惹かれて通うお客様がほとんど。とは言え、コロナ禍はサロンの経営に影を落としたとか。

――コロナの影響を受けて、経営が苦しくなっているサロンが増えています。

コロナの前は東日本大震災がありましたよね。長く経営を続けていれば、予想もしないような事件や災害が起こります。そんなときはお客様の数が減ることもあるでしょう。でもね。そういうときだからこそ、サービスや技術の質を落としてはダメ。お客様は敏感です。「ここはもうダメだな」って、分かってしまうんです

しんどいときこそ、サービスも技術の質も上げなくちゃ。いっそう丁寧に接客すれば、お客様にしっかり伝わります

逆に業績が右肩上がりで、事業の拡張をしよう…と思っているときも同様です。売上や利益のために、質を落とすなんてもってのほか。最初はうまくいったとしても、必ず失敗します。

――困っているときほど「質」を上げる。なかなかできることではありませんね。

利益が出るか出ないかギリギリの状態で接客すると、そのゆとりのなさがお客様に伝わってしまうんですよね。ギリギリのラインが100なら、プラス20%くらいの利益が出るくらいの売上を目指せばいい。余力を作っておくと、接客にもゆとりが持てます。

私が40年以上、サロンの経営を続けられているのは「質」の高さを維持し続けているからだと思います。

――「質」の高さ以外に、サロン経営を長く続ける秘訣はありますか?

流行や時代の流れの変化を敏感にキャッチすることでしょうか。タラソテラピーをいち早くサロンケアに取り入れられたのも、乳酸菌生成エキスを化粧品に取り入れられたのも、時代の流れをキャッチできたから。今でこそ自分自身の常在菌を育てる「菌活」が広く知られていますが、私がこのエキスのことを知ったのはずっと前の話。いいものを見極める目も必要ですね。

だからといって、流行に乗っかればいい…というわけではありません。ベースには変わらない技術力やサロンの個性があって、そのときそのときの流行を取り入れればいい。振り回されたらダメです

――長く続けてこられて、ピンチになったことはありますか?

どこのサロンでも同じ悩みを抱えていると思いますが、スタッフを確保できなかったときですね。結婚や妊娠、親の介護などで、ベテランのスタッフが3人まとめていなくなってしまったときは、本当に困りました。

女性はライフイベントに振り回されるんですよね。雇用を安定させるのは本当に難しい問題です。私たちの仕事は、資金がなくても「おうちサロン」を開設すれば、簡単に独立できてしまうんです。ちょっと技術をマスターすると辞めてしまう、というケースは数えきれません。

――ベテランスタッフが辞めてしまったときは、どうやって乗り切ったんですか?

それより前に、やはり結婚や子育てのために辞めてしまったスタッフに応援を頼みました。今でも困ったときは、ここから巣立っていったスタッフに声をかけて頼っているんですよ。

――逆にサロンを続けてきて、よかったことは何ですか?

普通の生活を送っていたら絶対に出会えない、いろんなジャンルの方に会えたことは私の財産になっています。仕事の関係者であったり、お客様であったり、サロンを通じてたくさんの方と出会えました。

面白いのは、たくさんの方々に出会ったなかで関係が長く続いているのは、私と考え方や価値観が似ている方なんですよね。それがまた面白い

だから「一緒にこんな企画をやろう!」とか、「こんな面白いものを見つけた」とか、次の動きにつながっていくんですよね

――このサロンには、人が集まってくるイメージがあります。

どんな有名な方でも、おだてたり特別扱いをしたりしません。仕事としてできる限りのことをしています。ガマンや無理は一切なし。ただ、できること、やるべきことをとことんやるだけ。そんな私の気持ちを分かってくださる方が残っているのでしょうね。

原動力は好奇心。次のターゲットは世界!?

田中さんが考案した美点マッサージを一般の方にも分かりやすく紹介している著書やDVDの数々。

――コロナ禍で直接レッスンを受けられない生徒に向けてオンライン講座を開催したり、意欲的ですよね。

必要だと思ったら、何でもやります。不安は一切ありませんね。私は「今までやったことがない」ことをやりたいのです(笑)。きっと好奇心が旺盛なのでしょうね。

――今、考えていらっしゃる目標を教えてください。

私が考えているテーマは「美点が世界を救う」。私が考案したこのメソッドを、世界に広めるのが目標です。今はコロナで渡航できませんが、中国やベトナムでの講習会を再開したいですね。

――エステティシャンを目指している人にアドバイスをお願いします。

エステティシャンは、お客様がもともと持っている美と健康を引き出すのが仕事です。お客様に生きる希望を与える仕事とも言えます。誇りを持って臨んで欲しいですね。でも、憧れだけで仕事はできません。アドバイス力や技術力をしっかり身につけてください。

――さらに独立を考えている方にアドバイスをお願いします。

集客に必要なのはサロンの立地、技術、化粧品です。それに加えて個性もある程度はあった方がいい。次の来客につなげるには、人間力がものを言います。その人自身に魅力がなければ、顧客につながりません

私の経験から言うと、「類は友を呼ぶ」ようにご自身と似た感性、似た考えの方がお客様として残ります。言葉は悪いですが、薄っぺらい人ならそれなりの集客しか望めません。技術力はもちろん人間力など、あらゆるものを磨き続ける努力を怠らないことですね。

エステティックサロンは、ヘアサロンとは違って欠かせないものではありません。魅力のないサロンはどんどん淘汰されていきます。常に時代の先を読んで、「これから先、何が必要なのか」を考える経営が必要だと思います

田中さんの成功の秘訣

1.困ったときこそサービスや技術力の「質」を上げる

2.人との出会いを大切にして財産に変える

3.常に時代の先を読み、求められるものを先取りする

お話を伺ったのは…

レイ・ビューティースタジオ主宰
田中玲子さん

1979年に東京・下北沢にエステティックサロンを設立。日本で初めてサロンケアにタラソテラピーを導入して話題に。1982年には東洋医学の経絡と西洋医学のリンパドレナージュを融合したオリジナルメソッド「美点マッサージ」を確立する。今なお現役エステティシャンを貫き、延べ21万人もの人たちを癒やし続けている。

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Salon Data

レイ・ビューティースタジオ
住所:東京都世田谷区北沢2-22-12 レフアビル 2F
電話:0120-015-141
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