産休で悔し泣きした日々。「ママだから」で諦める必要のない職場づくりを【JUNES HARAJUKU 齋藤晴夏さん】#2

トレンドを程よく取り入れたナチュラルスタイルを得意とする「JUNES HARAJUKU」の齋藤晴夏さん。男性客ばかりの理容業界で「女性だから」という偏見に負けず、カットモデルとの絆を深めて地道に指名を増やしてきました。そんな齋藤さんは現在小学1年生の子を育てるママ。産休に入った当時、売り上げ意識やお客様への想いが誰よりも強かった分、とても悔しい想いをしたと振り返ります。

後編では、齋藤さんが目指すバーバー像、出産・子育てにおいて苦労したこと、ママさんが働きやすい職場環境についてお話しいただきます。

日本のバーバーをクリーンな雰囲気にしたい

「シェービングのオーダー率は原宿店は1〜2割。30〜40代の来店が多い三軒茶屋店はもっと高いですね。学生が多い早稲田店では、二枚刃でゴリゴリ剃るシェービングよりも産毛剃りの方が人気です」と齋藤さん。エリアによってシェービングの打ち出し方は違うのだそう

――齋藤さんはどんなスタイルを目指していたのですか?
当時、すごく流行っていた束感やレイヤーを取り入れることも多かったです。あと、女性のヘアスタイルから落とし込むこともありました。例えば、アイロンやコテを使ったヘアスタイル。今ほどアイロンを使う男性ってあまりいなかったので、「この部分はアイロンを使うと良いですよ」と提案したりしていました。

20代の頃は奇抜なスタイル=クリエイトと捉えていました。けれど、最近は先進的であったり、バランスであったり、一目で「私のスタイル」とわかるヘアスタイルをつくることがクリエイトだと思っています

――今、理容室にどんなヘアスタイルが求められているのでしょうか?
今は「バーバー」という言葉が流行っていて、刈り上げスタイルを求める人は多いです。けれど、JUNESは「バーバー」というカテゴリではなく、メンズオンリーのヘアサロンとしてやっているので、パーマやナチュラルなスタイルも推していきたいですね。

――「バーバー=刈り上げ」というイメージをやはり持ってしまいますが、齋藤さんが目指すバーバー像とは?
「バーバー」というとアメリカやヨーロッパのようにゴリゴリなイメージや、強い男性のイメージを持たれがちですが、私が目指したいのはそこじゃない。もっと幅広いヘアスタイルを提案したいし、もっと柔らかい雰囲気のバーバーを全国に広めていきたいですね。

産休に入るときの悔しさと不安は今でも忘れられない

――齋藤さんは6歳の息子さんがいらっしゃるそうですね。出産・子育てにおいてどんなところで苦労しましたか?
産休を取ったときに、おそらく一番泣きましたね。子どもができたことはとても嬉しかったけど、現場を離れなくてはいけないのが苦しくて苦しくて…。3月に出産を控えていたため2月に産休を取得する予定でしたが、切迫早産になり、前倒して12月に産休に入ることになったんです。お客様をきちんとスタッフに引き継ぐこともできず、その悔しさで泣きました。

言い方は悪いですが、今まで頑張って関係を積み上げてきたお客様を誰かに取られるという不安もありました。そのときの気持ちは今でも忘れることはできません。

――復帰されたのはいつ頃ですか?
完全復帰は子どもが1歳になったときです。本当はもっと早く現場に戻りたかったのですが、早生まれだったので保育園がなかなか決まらなかったんです。私はそこでも負けず嫌いが発動しちゃって(笑)。子どもが8ヶ月後になったときくらいから、土日の3時間だけ一時保育に預け、サロンワークに出ていました

お客様と離れる期間をなるべく開けたくないので、二人目ができたときは産後すぐに復帰したいですね。子どもを産んでからの6年間で新しく積み重ねた関係もあるので、それがまたなくなってしまうとなると精神的なダメージはさらに大きいと思うので(笑)。

――勤務時間もやはり短くなりましたか?
今は夕方までの勤務にさせていただいています。JUNESは夜までの営業を売りにしているので、20時あたりまで働きたいのが本音ですけどね。いかに短い時間の中で自分の存在価値を生み出すかが課題です。

働きやすい環境を整えてもらっているので、子どもが熱を出したときはリモートワークにしたり、日曜に子どもを連れて出勤したりと自分なりに考えて働いているつもりです。

――お子さんが小学校に上がったことで働き方もまた少し変わりましたか?
そうですね。保育園では延長保育がありましたが、小学校ではそれがないため、働く時間は1時間ほど短くなりました。

それに、小学生になると子どもの心も成長するので、学校で嫌なことがあったとか、宿題をやらなきゃとか、そういうことへの寄り添い方も変わってきます。子どもの心をケアする時間はきちんとつくりたいですからね。親としても、学校行事や保護者同士の付き合いがガラッと変わりますし。だから、私たちにとって小学1年生は新しいスタートなんです。

本当、全国のお母さんたちを尊敬しますね。自分もそんな風に育ててもらったんだと思うと、自分の母には頭が上がらないです。感謝しかありません。

――子育てとサロンワークを両立するための秘訣ってありますか?
辛いときは上司に弱音を吐くこと。JUNESは子持ちのスタッフが多く、相談にのってくれる人が多いので頼りきっています。実は夫も理容師でJUNESで働いているので、仕事の大変さをお互いに理解しているし、尊重し合えていることも大きいです。

あと、サロンワークと子育てをあまり分けないこと。サロンワークも子育ても自分にとってはライフスタイルの一部ですからね。何より、自分が楽しめていることが一番です

「ママ」と「ママじゃない」の境界をなくし、仲間として受けれられる職場に

「後輩の女の子の悩み相談を受けながらネイルをしてあげていた時期も。若いうちはお金も時間もないので、自分のお洒落に気をつかっていられないじゃないですか。可愛くなって、悩みもすっきりするなら嬉しいかなって。これは女の先輩の特権ですね」と齋藤さん。

――ママさんが働きやすい職場環境にするために、ご自身の経験を踏まえて改善していきたいことはありますか?
まずは売り上げ面ですね。産休明けにお客様が戻ってこないことも多く、売り上げもなくすわけですから、私はそれが不安で怖くて仕方なかったです。実現できるかどうかは別として、例えば他のスタイリストにお客様を引き継いだとしても、売り上げの何%かは産休中のママさんに入れるようにするとか。ママさんが安心して現場に帰って来られる仕組みづくりはまだまだ必要だと思います。

就業時間においては、子どもが小さいうちは遅くまで勤務ができないので、その分朝方のシフトにするなど、もう少し融通が効く余地はあると思っています。

できることならサービス業に特化した保育園を私がつくりたいくらい。一般企業では土日休みが普通ですが、私たちサービス業にとっては普通じゃないですからね。

――確かに、サービス業にはサービス業の働き方がありますからね。職場や人によってもベストな働き方は違ってきますよね。

「ママさんだから」「ママさんじゃないから」という境界をなくすことが一番大切なことかもしれません。一緒に成長し、同じ場所で過ごす仲間として考えることができたら、きっとお互いが働きやすい環境になるんじゃないかと思います。子どもだって十人十色。そのときの子どもの年齢や環境に合わせて働く環境を整えることも必要かなと

――最後に、これまでの理容師人生で大切にしてきたことは何でしょうか?
「有言実行」です。夢は口に出して言うこと。今ここで働けているのも、原宿で働きたいという気持ちをきちんと伝えたからです。これからは地元の宮城にJUNESを持って帰りたいと思っているので、社内ではそれを宣言しています。

齋藤さんの成功の秘訣

1 お客様が何でも言えるようなフランクな関係性を築く

2 ママになっても一人で抱え込まず、職場や家族に甘えることも大切

3 やりたいことや夢は口に出して語る

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取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄

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Salon Data

JUNES HARAJUKU
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-11 パークアクシスSHOP1
TEL:03-5474-6363

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