笑顔になりたいなら福祉ネイリスト!「SUNNY NAIL」石川さんの決断
茨城県古河市のネイルサロン「SUNNY NAIL(サニー ネイル)」を営む石川由佳さんは、2021年から福祉ネイリストとして活動を開始。新型コロナウイルスの影響により訪問先が大きく制限されている状況のなかでも、一人ひとりのお客さまに向き合い、ネイルの力で「笑顔、癒し、元気」を届けています。そんな石川さんが福祉ネイリストという道を選んだきっかけは、大好きなお祖母さまが患った認知症だったそうです。
今回お話を伺ったのは…
石川由佳さん
2008年、大手ハウスメーカーに入社し、2013年に職場の同僚と結婚。2015年、息子が生まれたことを契機に、自宅でも働ける仕事をしたいと考え、2019年に退職。ネイリストの資格を取得し、自宅を利用した個人サロン「SUNNY NAIL」をオープン。祖母の認知症をきっかけに埼玉県深谷市のネイルスクール「Honey nail bee」で福祉ネイリストの資格を取得。地域イベントなどを通じて多くの方に笑顔と癒やしを届けている。
Instagram(福祉ネイル):@sunny_nail.fukushi
Instagram(ネイルケア):@sunny_nail.care
気持ちが明るくなるような色使いとデザインで元気を届けたい!
――さっそく、福祉ネイリストを目指した理由から教えてください。
きっかけは祖母の認知症です。それまで勤めていたハウスメーカーを辞めてネイルの勉強をはじめたころの出来事でした。突然、真夜中に食事をするなどの初期症状が出はじめて……。当初は叔母が介護をしていたのですが、想像以上に進行が早く、やむを得ず福祉施設のお世話になることになりました。
「自分に何かできないだろうか」と思い悩んでいたちょうどその時、ネイルスクールの先生から「これから福祉ネイルの認定校になるよ」というご案内をいただいて「これだ! ぜひ勉強したい!」と受講を決意したんです。
――スクールでは、どういったことを学ばれたのでしょうか?
ご高齢者の特徴や認知症について、老人ホームや障がい者施設で施術を行う際の接し方など座学が基本です。その他、アロマや色の持つ力についても学びました。祖母のこともあり、とくに認知症に関する分野はとても勉強になりました。私の場合はネイリスト検定2級を取得済みだったため、比較的短い期間で講習は修了。実技の方も福祉に特化したネイルアートやハンドマッサージなどを学びました。
――やはり一的般なネイルの施術とは異なるのですね。
あくまで一例ではありますが、福祉ネイルは大きくて、分かりやすいデザインが基本です。高齢者の場合、同じ体勢で長時間じっとしていることが難しいので、スピーディな施術も重要になります。トータルで20分以内に施術時間を抑えることを求められますが、アートのテーマは自由です。利用者さまとの会話の中でお好きなものや、ふるさとのゆかりのあるものをアートにするなど、気持ちがパッと明るくなるような色使いとデザインを心がけています!
――確かにInstagramで石川さんが投稿されているネイルは、どれも楽しくなるようなデザインばかりでした。ちなみに、卒業試験はどうでしたか?
ありがとうございます。試験はおかげさまで一発合格でした。実地研修で施術させていただいたのは、91歳のおばあちゃん。「こんなことしてもらえて、本当にいいご時世だね」と目に涙を浮かべながらとても喜んでいただけて、あらためて福祉ネイリストを目指して良かったと実感できました!
コロナ禍でも福祉ネイルの魅力をイベントで発信して大人気に!
――福祉ネイリストを目指す際に最も大変だったことはなんですか?
私が勉強をはじめたときには、すでにコロナ禍だったこともあり、老人ホームや障がい者施設には訪問できなくなっていたことです。電話などで何件も問い合わせてみたのですが、やはり全ての施設が感染症対策のため、外部から人を入れることは難しいとのことでした。
――たしかに親族であっても面会が難しいとニュースで報道されていました。
実は祖母とも3年近く会えていないんです。福祉ネイルの勉強をはじめた頃には、すでに面会は禁止されていました。福祉ネイリストとしてなら訪問できないか、施設の担当者に相談したのですが、それも難しく……。
――いずれ感染者数が落ち着いたら、これまで磨いてきた技術をお祖母さまにも披露できそうですよね。
はい! それまではコツコツとできることを積み重ねていきたいと思っています。現在の活動はイベントでの出張ネイルが中心です。「境町おうちマルシェ」やスペースU古河さんの「クラフトマルシェ」など、地域の作家さんが集まってワークショップなどを行うイベントに参加させていただいています。「福祉ネイルってなんだろう?」「ネイルって楽しい!」と多くの方に興味を持っていただくきっかけ作りが目的です。
――どのくらいお客さまが集まるのでしょうか?
ひとつのイベントで1日約20人くらいは施術をさせていただいています。お客さまは幼稚園生からおばあちゃんまで、本当に幅広い世代の方々です。娘さんとママを同時にネイルをするなど、いつも楽しく行っています。イベントではたくさんの方にお越しいただくので、アートはアートシールを活用し、乾かす時間も含めて施術時間は約20分くらい。「ネイルってこんなポジティブな効果があるんですよ」と、ネイルの効果や福祉ネイルのご説明をさせていただいています。
パートナーと力を合わせ、地元に福祉ネイルの魅力をアピール!
――福祉ネイリストって何人くらいいるのでしょう?
私が試験を受けたころは全国で1000人ほどの認定者がいらっしゃるというお話でした。現在は、1400名の卒業生がいます。同じエリアで親しくさせていただいているのはMarynail(マリーネイル)のKEIKOさんです。介護士でもあるKEIKOさんが、私のInstagramのアカウントを見て「一緒に活動しませんか?」と声をかけてくれました。実際にお話すると、とっても気さくで明るい方で「ぜひ一緒に活動したい!」と思ったんです。
出張の福祉ネイルはどうしてもいろいろな準備が必要だったり荷物も大荷物なので、パートナーがいると非常に心強いんです。KEIKOさんは介護士としても働いていて知識も経験も豊富。新型コロナウイルスの影響もあり、なかなか活動できていない状況でお会いして「古河市内で福祉ネイルを広めていきたいね!」という話で盛り上がりました。現在は「サニー♡マリー」というお互いのお店の名前を組み合わせたユニット名で活動しています。
――普段は介護施設で働き、休日は出張福祉ネイルをしているなんて、パートナーのKEIKOさんもバイタリティにあふれていますね。
はい、本当に尊敬しています。最近ではイベントに出店している作家の皆さんとも仲良くなってきました。自宅サロンで行なっている「最強のネイルケア」のお客さまとしてご来店いただいたり、お友達をご紹介していただいたり。イベントで施術させていただいた方が、そのまま自宅サロンのお客さまになることもあります。福祉ネイリストとして活動するなかでInstagramのフォロワーさんも増え、そこから出張イベントや自宅サロンにご来店してくださる方も増えました。
――なるほど、福祉ネイリストとしての活動が個人サロンの集客にもつながっているんですね。
コロナ禍ではありますが、それでも多くの方々とつながることができて、すごく成長させていただけたと思います。福祉ネイルは、施術する側も、施術される方も、最後はみんなが笑顔になれる素晴らしいお仕事です。会社員という組織に所属しなくなった分だけ、自分で考えて行動しないといけないので大変な部分もありますが、息子との時間も確保しながら楽しく働くことができています。これからも小さなお子さまからご高齢の方まで、たくさんの方にネイルを通じて、ウキウキ楽しい気持ちや、笑顔、癒し、元気をお届けしたいと思っています!
福祉ネイリストになって良かった3つのこと
お話をうかがったなかで石川由佳さんが福祉ネイリストになって良かったと感じている要素を抜粋しました!
1.家族との時間を確保しながら、自由に楽しく働くことができている
2.小さなお子さんからおばあちゃんまで幅広い世代のネイルを担当できる
3.ネイルを通じて笑顔、癒し、元気を届け、施術する側も一緒に笑顔になれる
多くの困難を乗り越えながらポジティブに福祉ネイルの活動を続けている石川さん。後編では、回想法やユマニチュードを取り入れたコミュニケーションなど、お客さまを笑顔にするための技術について伺います。後編もどうぞお楽しみに!