自分が経験した悩みはサロン経営の最大の武器。独自化こそが生き残る術【プロビアンコ オーナー 白崎順子さん】#2

プライベートエステサロン「プロビアンコ」のオーナー 白崎順子さんは、他にスクール運営と美容メーカーの代理店業もこなすトリプルフェイスの持ち主。多忙を極める毎日ですが、「お金儲け」の考えはそこにはなく、エステという職業を誰よりも愛する気持ちのみ。エステ業界の闇に向き合うとともに、開業を目指すエステティシャンたちを導く存在として、日々奮闘中です。

後編では、サロン開業で大事な「独自化」の話、商品選びの重要性、エステ業界での働き方についてアドバイスをいただきました。

教えてくれたのは

「株式会社ピュアラボーテ」代表、「プロビアンコ」オーナー 白崎順子さん

顔面神経麻痺に悩まされ、美容師をやむなく断念。症状の改善目的で受けたエステに感銘を受け、エステティシャンの道に進む。2011年に「プロビアンコ」を開業。中医学「陰陽5行説」をベースにした独自メソッドが話題を呼び、1年にして予約ができない人気サロンへ。現在は、後進育成のためのスクール運営と美容代理店業を同時にこなす。

Instagram:@probianco.0510

YouTube:じゅんぴー先生のエステティック研究所

等身大の自分の悩みをビジネスにする方が上手くいく

白崎さんはメンタルのカウンセリングも大事にしています。「内臓と感情は共鳴していますからね。うちではメンタルのチェックシートも用意しているんです」(白崎さん)

――オープン1年にして予約が満員。その秘訣は何ですか?

差別化ではなく、独自化すること

差別化とは「どこよりも安い」「どこよりも上手い」みたいに誰かと比べることですよね。そうではなく、いかにオリジナリティを打ち出していくかにこだわることが大事なんです

――独自化と差別化は似ているようで違うんですね。エステサロンの開業も戦国時代ですが、生き残るために必要なこととは?

自分の経験や悩みを起点にすること。自分と似た人をペルソナにすれば、感情を含めて相手の役に立てることが多いんです

例えば、「ニキビに長年悩み、克服したオーナーが営むニキビケア専門店」とか。同じ悩みを抱えたオーナーなら理解してくれるはずだ!と行きたくなりますよね。要するに、お店を開くのであればそこにストーリーを持たせなきゃダメということです。

SNSでも同じことが言えて、ビフォーアフターの写真を載せるだけではヒットしません。長年ニキビに苦しんでき場合、ニキビ顔を人に見られるときの気持ち、メイクの仕方、どんな絶望感を味わうのかなど、経験してきたからこそ言えることを打ち出した方が良い。それが「個を出すこと」なんです

――では、売れないエステティシャンと売れるエステティシャンの違いはどこにあると思いますか?

お客様目線になれているかどうかです。生徒さんの中には「自分が過ごしやすいからこういう空間にしたい」「子どもがいるから11〜14時までしか働かない。その分単価を高くする」という人もいます。よっぽどキャリアを積んでいる人なら別ですが、自己都合で働く場合はおそらく上手くいきません。

うちのサロンでは、採用面接で「なぜエステの仕事を選んだのですか?」という質問に対し「手に職をつけたいから」と答える人は不採用にしています。そんな浅い理由では続かないので。でも実際は「資格がなくても手軽にはじめられるから」という志望理由はすごく多いですし、スクールに通わずに開業する人や、サロン勤めを経験せずに開業する人もざらにいます。

「なぜ自分はエステの仕事をしたいのか」という理由をきちんとブラッシュアップしてほしいんです。エステティシャンになって20年目、起業して11年目になる私だってまだまだ勉強中。一生学びを止めない覚悟があるのか?とみなさんに問いたいですね。

商材選びにこだわることは、お客様との信頼関係につながる

スクールの様子。「生半可な気持ちでエステの仕事をしてほしくない」と熱く語ってくださいました

――サロンを経営するにあたり、他に気をつけておくべきことはありますか?

商材選びですね。実態として、「今人気のタレントさんが愛用しているから」「流行っているから」という理由で商材を選ぶオーナーさんが8〜9割。その選び方はプロとしてダメですよね。「店販が売れなくて困ってます」という悩みもいただくけど、こだわって商材を選んでいないからでしょって

商品化に至るまでの背景、生産者の想い、成分のこだわりなど、なぜこの商材を選んだのかというストーリーも大事です。納得いくまで何社も見た方が良いし、可能ならば一度は生産者に会いに行くのがベスト。

ベースとして皮膚理論などのゆるぎない知識を勉強し、自分で商材を見極める目を持っておくべきです。メーカーさんは都合の良い話しかしませんから、言い方は悪いですが、騙されちゃうんですよ。

――商材選びもそれほど重要だったとは…!

お客様との信頼関係にもつながってきますからね。流行りのものばかり追いかけるサロンはお客様からしたら信用できないじゃないですか。

今、エステの商材選びがネットワークビジネス化している部分もあって。「これを売って、私たちと一緒に儲けましょう」みたいな。そこにお客様目線はありません。開業当初からそういうメーカーを選んでしまうとサロンのあり方が変わってしまうのかなと。

――闇を感じますね。

はい、その闇と戦っているんですよ(笑)。

スクールでも代理店業でも、今も現場に立っているからこそ自分の言葉が響く

白崎さんの著書

――現在はサロンオーナー、スクールの主宰、美容商材の代理店業という3つの顔を持っていますが、両立するのは大変ではありませんか?

バランスを取るのは今もまだ難しいですが、3つをやることの良さもあるんですよ。現役でサロンワークをこなしているからこそスクールで私の言葉が響くこともあるし、代理店業においても「現場で私が感じたことをダイレクトにお伝えします」というスタンスでやっていますからね。

――そもそも代理店業をはじめた理由というのは?

オーナーさんからしたら、定期的に会う代理店の担当者に一番の相談相手になってもらいたいじゃないですか。でも、ほとんどの代理店はサロンの現場経験がない人ばかりなので、それが難しい。

代理店がコンサル業というかサロンワークにもっと寄り添ってあげられたらサロン側も嬉しいはず。だから、自分がその存在になろうって。それが代理店業をはじめた理由です。

代理店業を通じて、サロン運営や集客などをオーナーさんたちにアドバイスしているわけですが、もし私がサロンに立たなくなったら「お前が言うな」になっちゃう。商品をお客様に販売するときの緊張感だとか、気持ちの面でも寄り添ってあげられるのは、私が今もサロンワークを続けているからなんです。

――では、代理店業やスクールに注力するためにサロンを畳むという選択肢はないですか?

全くないですね。

――白崎さんはエステ業界の働き方にも目を向けていらっしゃるようですね。

ここ2〜3年でエステ業界が結構変わってきていて、年齢を重ねたあとも働き続けられるようなキャリアステップを模索している人が多い印象です。

今思うのが、サロンを繁盛させるまでも大変だけど、繁盛させ続けることも大変だということ。プロビアンコを開業して最初の3年間はがむしゃらに働き、おかげさまで「予約が取れない人気サロン」と言われるようになりました。しかし一方で、自由がなく、サロンワークに縛られる毎日。この先もずっとこの働き方を続けるの?という疑問が生まれたとき、自分自身の働き方改革が必要だと思ったんです。

起業すると自分が働かなければお金が入ってこないので、休みを取ったり、次のステップに挑戦することにはリスクがあるんですよね。だから、オーナーさん自身の働き方改革も今後視野に入れ、彼女たちの足掛かりになれるようなことを何か自分ができないかと考えているところです。

――どれだけ稼げるかというより、どのように働けるかに重きをおく人も多いのでしょうか。

本当にそう思います。業界全体の働き方の改善や、長くこの仕事を楽しめる起業家を増やしていきたいなと思っています。

長く続くエステサロンとは?白崎さんが教える心構え3箇条

1.自分ならではの経験を活かし、独自化する

2.自己都合ではなく、お客様目線の経営をする

3.商材選びにも徹底的にこだわる

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)

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Salon Data

プロビアンコ
住所:愛知県名古屋市千種区橋本町1-2 SAKURA301号室
TEL:052-734-3213
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